2回目
セイジの目の前にカードを突き出す。
表には『星船操縦士技術士育成機関』 と書かれている白いカード。セイジが持っているものと同じなら裏には名前と管理番号が書かれているだろう。
「えぇ」
後ろに少し退けて答えると、スーツのポケットから同じものを見せる。
「やっぱり。この駅ったら、機関に行く人しか乗らないわよね。広い建物だからきっと土地の安いところに造ったのよ。だから周りに何も無くて関係者以外は誰も行かない」
女は得意げな調子で早口で言った。
「それからあそこは寮だから、若い子が行くってなったらおそらく一年目、それもなれない正装に“着られている”若い子ってなったらもう」
女は一人で頷き、他に誰もいないホームで八の字を描いて歩く。
「ねぇ」
そう言いながら女がセイジのネクタイを真っ直ぐにする。
「……あぁ、すいません」
セイジが言うと「人の事言えないかしら」と、首を回せるだけ回して自分の服装を確認している。
「星船操縦士技術士育成機関行き、まもなく到着します」
起伏の無い機械的なアナウンスが流れた。女がホームへ身を乗り出すような格好で電車が来る方向を眺める。
「危ないよ」
「大丈夫。ほとんど人がこないっていうのに、これもあるし」
電車のドアと同期して開く、透明な素材で作られた壁を指でなぞった。
「本当に、お上のお金の掛け方はわからないわ」
「そうだね」
二人は電車に乗り込むと間に一人分の間隔を空けて腰を降ろす。他の客は誰もいない。窓は無く、走っていてもほとんど振動を感じさせない車内。ホームと変わったのは立っているか座っているか位だった。




