12回目
与えられた一人部屋で目覚める。
不気味さを覚える程に白で統一された中で体を起こすと、一瞬横になっているか立っているのか分からない。
「一年か五年か十年か。ここで暮らすんだよな」
恨めしそうに部屋を見回した。
「あとで白以外の布でも用意してもらおう」
壁を布で覆い隠せば少しはこの無機質さも変わるだろう。布はモウスに頼んで用意して貰えば良い。セイジは体を伸ばしてから部屋を出た。
「私があなた達の世話係のモウスよ。食事や洗濯なんかの身の回りの事は全部私がやるからね。あなた達はしっかりお仕事に励みなさいな。もしかしたらほんの短い間だけかもしれないし、そうじゃなければうんと長い事一緒にいるかもしれないけど、まぁよろしくね」
背が高く、線の細い女だった。顔立ちは良くもなく悪くもないが、快活な立ち振る舞いが良い印象を与える。特にザンの後という事でより強く、それを感じさせた。
「敷地外に出る事もできないんじゃ大変だろうからね。何か用意して欲しいものがあったら遠慮なく言って良いからね」
そう言うと振り返り端末を操作しだす。モウスの使う端末はザンのものより一回り大きく、色も幾つかのもので鮮やかに塗られていた。
「取りあえず、ここでの暮らすのに必要な事だけを教えておくからね」
モウスが壁に映し出された地図を指差しながらそこが何をするところなのかを丁寧に説明する。度々「ここは私の知らない所」や「権限がないから入れない所」と言って説明を飛ばしながら、指が大きな円を描くまで話し続ける。
「こんなところかしら。後は何かあったらその都度、私に聞いてくれれば教えるから」
モウスがそれだけ言うと部屋から出て行く。残された十人は話が終わったのかを判断できず、周囲の様子を伺おうと首をキョロキョロと動かす。
「お待たせ」
五分ほどすると両手に大きな箱を抱えて戻ってくる。後ろの方で誰かが安堵の声を漏らしていた。
引き戸を開けて体を間に挟む。足元に置いた箱を抱えて中に入り、慎重に用意されていた机に下ろす。
「それで、私に連絡するにこれを使ってね」
箱の中からさらに小さい箱を人数分取り出し、それぞれの前に置いていく。
「これがあなた達の使う端末。これがあれば一々たくさんのカードを持たなくて済むし、誰かに連絡をするにもずっと簡単よ。まぁ相手が出ればだけどね」




