11回目
「等級の高い星ほど寿命が長い。それは環境や種としての差ではなくて薬の差。君達と三級四級の市民達が使っている薬は違う」
「私は薬なんて使ってないです」
シズクがスッと立ち上がると驚くわけでも怒るわけでもなく、普段どおりの様子で言う。「そうだな。薬は君達が今考えているような錠剤なんかで口にしているわけじゃない。とりあえず今は時間が無いのでまた別の機会だな」
手でシズクに座るように合図する。不服そうな様子をわずかに見せたがそれに従った。
「限りなく不老に近くなり、驚くほど長寿になったんだ。別の機械なんて一生から考えたらあっという間だ。……さて、残り時間が少ないから駆け足で話すぞ」
もう一度端末で時間を確認する。
「等級によるもう一つの大きな差。星船の操縦士になれるかどうかだ」
しばらく、ザンは何かを考えている素振りを見せて「例えばそうだな」と話し出す。
「星船を三艇積んだ武装の無い母艦と十や二十の大艦隊が戦ったとしよう。まぁ、今やそんな無謀な事はしないが万が一、したとしよう。そうなったら間違いなく星船三艇が全ての戦艦を沈める。分かるか? ある程度信用のできるものでなければ、とてもじゃないがこんな恐ろしいものを任せる事は出来ない。本来なら、ヘキ星のやんごとなき血筋は自分達だけで星船を独占したい。だがヘキ星も議会がそれなりに強い力を持っている。そして、どこの星にも権利だの平等だのを声高に叫ぶ輩がいるんだ。危険だと分かっていてもその特権を独占するべきでないと考えている」
早口で言い終えると、肩をすくめて苦笑している。
その様子から、ザン自身が『やんごとなき血筋』か、それらと同じ考えを持っているようだった。
「星船は誰でも乗れるようなものではない。もって生まれたものが大きな部分を占める。しかも、それが何かが特定しきれていない。ある程度、どういった能力が必要なのかはわかっているがそこから先が全く検討がつかない」
不満そうに左手で後頭部を掻き毟ると、白い髪が逆立つ。
「だから、それを補うために星船の操縦士を育てる時はかなり余裕を持った数を集める。そこから星船に似た環境を作って試し、ふるいに掛けていくんだ。結局のところ、星船も数が増えてくると適正のある者を、ヘキ星の特権階級からだけ選び出すなんて事は物理的に不可能になってしまう」
またザンが肩をすくめてため息をつく。
「今回も星全体から選定して君達を選出したが、星船の操縦士として必要な人数はたった四人だしな」




