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逢いにきたよ

作者: シキカン
掲載日:2026/06/09



カンカンカンカンー。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

大きなお腹をさすりながら登るアパートの階段も辛くなってきた。

「こんにちは。もうすぐ?」

お隣の奥さんが、私のお腹を見ながら尋ねる。

「はい。予定日は2週間後です。」

「そう。暑くなってきたから大変でしょう?身体、気をつけてね。」

「ありがとうございます。」

部屋に戻り、買い物したものを片付けようとする。

夫の帰宅はいつも遅い。

狭い部屋で独り、出産準備を進めていた。


気分転換と思い、少し散歩に出ることにした。

日傘に小型扇風機と暑さ対策は万全にしても、記録的熱波の青空の下を臨月の妊婦が歩くのはなかなかに辛い。

信号待ちをしていたら、急に目の前が回り始め、ヤバい!と思い、ビルの陰に移動し、座り込んだ。

「ハァ…ハァ…」

息も上がり、立ち上がることもできない。

道行く人もチラリとこちらを見るが、急いでいるのか声をかけてくれる人もいない。

体調も悪くなり、腹痛を感じ始め、不安に押しつぶされそうになったその時

「だいじょうぶ?」

と、幼い子の声が背後から聞こえた。

「えっ?」と振り返ると、そこには明るい髪色のクルクルヘアーの可愛らしい男の子がいた。

その子はニコッと微笑みながら、

「だいじょうぶ。だいじょうぶ。」

と私の背中を優しくさすりながら、ずっと声をかけ続けてくれた。

すると不思議なことに息も整い、痛みも和らいでいった。

「ありがとう」と振り返ると、そこには誰もいなかった。


「うぅ…。あぁー!!!」

「お母さん、頑張って!もう少しよ!」

「もうすぐ赤ちゃんに逢えるから!」

「あぁー!あぁーーー!!!」


オギャー。オギャー!オギャー!!

「お母さん、よく頑張ったね。元気な男の子よ。」

「ありがとう。ありがとう!」

夫は私の横で子供のように泣き、助産師さんはその姿にやや呆れながらも微笑ましく、生まれたばかりの我が子を、私の腕の中に渡してくれた。

泣き叫ぶ我が子を見て、私は息を呑んだ。

目に映るその子は、柔らかい髪がくるりと巻き、陽の光を含んだ明るい髪色をしていた。

私の目に涙が滲み

「あの時はありがとう」

と、我が子を抱き寄せた。

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