第2話 再会
勇者パーティーから追放され、宮廷魔術師の身分も剥奪されてから三日後。
フェイは働く宛を探して街を歩いていたが、結局どこも見つからず、街中のベンチに腰を下ろして人の流れを眺めていた。
(……結局、届かなかった)
宮廷魔術師として勇者パーティーに所属し、苦楽を共にしてきた仲間たち。
その彼らから「無能」の烙印を押された現実は、思っていた以上に胸に重くのしかかっていた。
「勇者パーティーを追い出された上、宮廷魔術師の身分まで剥奪……か」
自嘲気味に呟く。
「多分、それも『聖堂』が決めた事だろうな……」
ダストル王国には、二つの大きな勢力が存在する。
国の経済と治安を管理する『王家』。
そして、支援と信仰を一手に担う『聖堂』。
この二つの派閥が均衡を保つことで、王国は発展してきた。
特に『聖堂』は『勇者』を世界を救う希望として神格化し、いずれ訪れる『魔王』との決戦に備えて、訓練や装備の強化に余念がない。
――その過程で、不要と判断された者は、容赦なく切り捨てられる。
「……とは言っても、一体どうしたら……」
行き場のない思考が、同じ場所をぐるぐると回る。
「あれ? ねぇキミ、フェイだよね?」
不意に、明るい声がかかった。
顔を上げると、鮮やかな赤髪に黄色の瞳をしたツインテールの少女が立っていた。
「……もしかして、メイ?」
少し間を置いて、フェイがそう口にする。
「やっぱり! 久しぶりだね! 魔術学園を卒業して以来かなぁ」
メイ・サルバドール。
『魔術師の神童』と呼ばれた天才魔術師であり、フェイの魔術学園時代の親友だ。
学園時代、互いに切磋琢磨しながら魔術を学び、卒業時の成績は――
首席がメイ、次席がフェイ。
誰もが認める才能の持ち主だった。
「確かに。こうして会うのも、あの日以来だな」
フェイは、ほんの少しだけ口元を緩める。
「ところでフェイ、こんな所で何してるの?
宮廷魔術師になった後、勇者パーティーに入ったって聞いてたけど……」
「…………」
その言葉に、フェイは一瞬、言葉を失った。
「フェイ?」
心配そうな視線が向けられる。
「……実は」
フェイは、これまでの経緯を簡潔に話した。
「辞めた!? 勇者パーティーを!?」
メイは思わず声を上げた。
「ああ。少し事情があってな。
……気にしてないと言えば、嘘になるけど」
一拍置き、視線を逸らす。
「もう終わった事だ。いつまでも引きずっても仕方ない」
「しかも、宮廷魔術師の身分まで剥奪されるなんて……!
一体『聖堂』は何を考えてるの!? フェイほどの魔術師を手放すなんて!」
メイは納得がいかない様子で拳を握る。
「ちょっと、メイ。落ち着いて」
フェイが慌てて制止する。
「あ……ごめんごめん。
『聖堂』の悪口を言うのは、家に泥を塗るようなものなのに……つい感情的になっちゃって」
舌を出し、両手を合わせて謝るメイ。
(……随分会ってなかったけど)
(あの頃の、優しくて元気なメイのままだな)
フェイは、胸の奥が少しだけ軽くなるのを感じていた。
「ねぇフェイ。フェイって、今フリー?」
唐突に、メイがそう切り出す。
「え? ……ああ、今のところは、そうかな」
「だったら、付いてきて!」
「え?」
「いい当てがあるんだ。フェイに、ぴったりのね!」
そう言うなり、メイはフェイの手首を掴み、半ば強引に歩き出した。
――この再会が、偶然でありながらも、
彼の運命を大きく動かす一歩になることを、
この時のフェイはまだ知らなかった。




