第1話 クビ
はじめまして。
本作を読んでいただき、ありがとうございます。
作者のSです。
この物語は、
勇者パーティーから追放された元宮廷魔術師が、
自分でも「ハズレ」だと思っていた固有スキルを武器に、
もう一度前に進んでいく物語です。
派手な才能や最初からの最強ではなく、
積み重ねてきた努力や、見落とされていた力が、
少しずつ評価されていく展開を描いています。
よろしければ、フェイの再出発を
最初の一歩から見届けていただけると嬉しいです。
「フェイ。貴方には今日で、このパーティーから抜けてもらうわ」
それは、魔王軍が関与していた《ゴーレム事件》を解決した、その直後のことだった。
宿屋で休息を取っていたフェイは、『勇者』であり幼馴染のテレサに呼び出され、その言葉を告げられた。
「え?」
意味が、すぐには理解できなかった。
「抜けるって・・・何を言ってるんだ?」
混乱するフェイを前に、同じ勇者パーティーの一員であり、『賢者』の職業を持つオルガが冷ややかに口を開く。
「文字通りの意味です。貴方は、このパーティーから外れる。それだけの話ですよ」
「ど、どういう事なんだ? 理由は何なんだ?」
問い詰めるフェイに、オルガは呆れたように息を吐いた。
「簡単な事です。貴方はもう、このパーティーの戦力にならないからです」
「戦力にならないって・・・・・・! 俺はこのパーティーの為に、魔術でサポートを――努力だって――」
「努力の話はしていません」
オルガは、フェイの言葉を遮る。
「勇者パーティーでは、役割が全てです。テレサさんは前線で剣を振るい、小生が攻撃魔術で援護する。シフォンさんは治癒魔術で支え、ユージンさんは盾となって敵の攻撃を受け止めてきました」
その言葉に合わせるように、『騎士』のユージンと『聖女』のシフォンが無言でフェイを見る。
「それに対して貴方はどうですか。宮廷魔術師でありながら、後方で強化や防護の魔術を、固有スキルで繰り返すだけ。貴方にしか出来ない“決定打”が、このパーティーには存在しなかった」
この世界では、十歳を迎えた者は、女神の神託によって『職業』と『固有スキル』を一つずつ授かる。
フェイが授かったのは『魔術師』と、『連発』――同じ魔術を連続で発動できるスキルだった。
十歳で『勇者』の職業を授かったテレサの隣に立つため、フェイは王都の魔術学園で学び、卒業後は宮廷魔術師となった。
そして、念願叶ってテレサ率いる勇者パーティーに加わってからも、彼は支えとなるべく、魔術の研究と研鑽を重ねてきた。
「・・・・・・確かに、オルガの言う通りだ。他のみんなと比べたら、俺の実力は三流かもしれない。でも、それでも俺は、みんなの役に立ちたくて――」
言い終える前に、ユージンが苛立ちを隠さず声を荒げた。
「分かってねぇな! 肩書きが宮廷魔術師だろうが、戦場で決定打を出せねぇなら意味はねぇんだよ!」
「・・・ユージンさんの言う通りです」
続けて、シフォンが静かに口を開く。
「今の戦況で、曖昧な役割のままでは、今後の任務に悪影響が出てしまいます。フェイさんにも、現実を理解していただかなければ困ります」
「そんな・・・・・・ユージンに、シフォンまで・・・・・・。なぁ、テレサ! お前は、それでいいのか!? 俺たちは今まで一緒にやってきた仲間じゃないか!」
必死の訴えにも、テレサは答えなかった。
視線を落とし、手を強く握りしめたまま、沈黙を貫く。
「これで理解できましたか?」
オルガは小さく息を吐き、淡々と告げる。
「これは『聖堂』の決定です。貴方には今後、勇者パーティーとの一切の関わりを禁じます」
そう言って、オルガはフェイの着ていた宮廷魔術師のローブを取り上げた。
「ご安心ください。既に貴方の代わりとなる宮廷魔術師は手配済みです。近いうちに、正式な面談も行われるでしょう」
その瞬間、フェイの中で、何かがはっきりと切れる音がした。
テレサのために。
パーティーのために。
積み重ねてきた努力も、研究も、その全てが――最初から評価されていなかったのだと、理解してしまった。
「・・・分かった。『聖堂』が決めた事なら、そうするよ」
それだけを告げ、フェイは部屋を後にした。
自分は所詮、勇者たちと肩を並べられる人間ではなかった。
その現実を胸に刻み込み、フェイは振り返ることなく宿を出る。
――この時点ではまだ、
彼の固有スキル『連発』が、
そもそも正しく評価された事すら一度もなかった事を、
本人を含め、誰一人として知らなかった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
第一話では、
主人公フェイがどんな立場に置かれ、
どんな思いを抱えているのかを中心に描いています。
この先、彼の固有スキル「連発」が
どのように評価され、どんな可能性を見せていくのか――
物語は少しずつ加速していきます。
少しでも気になるところがありましたら、
ぜひ続きも読んでいただけると励みになります。
感想や評価なども、とても嬉しいです。
次話もよろしくお願いします。




