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風の終わり  作者: 竹内すくね
一部
7/37

噴き出す君と吐き出すあなた



 トーマとレオはハイゴブリンとの戦いの後、試験官二人に連れられて突風同盟の本拠地に案内された。

『ギルドに籍を置く者の大半はここで寝泊りをする。お前たちの生活の中心は、今日からここになるんだ』

 そのような言葉をコビャクに掛けられたが、トーマたちの耳には入っていなかった。さっさと部屋に案内してくれ。風呂に入らせてくれ。と言うより何より早く眠らせてくれ。そんな事しか頭の中にはなく、彼らはぼんやりとした意識で説明を自ら聞き逃していたのである。



 街に着いてから初めての夜が終わり、初めての朝を迎えた。

「んん……」

 トーマは寝ぼけ眼を擦り、上半身を起こす。ここはどこだろうと思ったが、昨日起こった事を思い出して頭を抱えた。望んでいようが、いまいが。彼は今や突風同盟の一員となったのである。

 まず、部屋の中を見回してみた。突風同盟に所属する者に割り当てられる部屋らしいが、造りは粗末に見える。広さはそこそこあるのだが、壁は薄く、木製だった。窓からは陽光が降り注いでいるが、少し日当たりが悪いように感じる。置いてあるものは部屋の隅の机ぐらいのもので、トーマの持ってきていた荷物はベッドのすぐ近くの床に置かれていた。その全てを確認してからようやく安堵の息を吐く。

「僕、この街で生きてるんだ」

「……うーん」

 苦しそうな声が隣から聞こえた。誰だろうと思うまでもない。トーマの荷物と同じく、彼の荷物のプレートアーマーも近くに置かれていたからだ。そして驚愕する。荷物は、これだけなのかと。

「お、おはよう」

 トーマの隣のベッドで眠るのはレオ・バーンハイト。

 昨日、街で出会ったばかりのトーマを引っ張り回して、挙句ギルドの入団試験を無理矢理受けさせたわがままな少年である。

「ぐ、あ、朝か。うう、朝餉を持てい」

「嫌だよ」

 レオはどうやら寝起きが悪いらしい。トーマはベッドから起き上がり、ぎしぎしと軋む安っぽい音に安心した。

 そして、良く部屋を見ると、今自分がいる場所とは反対側にもベッドが二つあるのに気付く。どうやらこの部屋は四人で使っているらしい。起きるのが遅かった為か、同室の二人はどこかへ行っているのだと推測する。

「でも、挨拶の一つぐらいは欲しかったかも」

 トーマはすんすんと鼻を鳴らして、自分の衣服の匂いを嗅いだ。びっくりするぐらい臭い。頭を掻きながら、彼は袋の中から着替えを取り出した。



「何故起こさんのだ!?」

 目覚めたレオの第一声は実にうるさかった。

 トーマは耳の穴に指を入れて顔をしかめる。起きるまでは時間が掛かるが、起きてしまえばいつものレオだ。やかましい事この上ない。

「そしてどういう事だ。俺がこのような、家畜を住まわせるのと同じレベルの小屋で寝食をせねばならないだと? ふざけるな、俺はバーンハイトの長子、レオ・バーンハイトだぞ!」

「知ってるよ。あ、ご飯は食堂で食べるんだって。ここじゃないらしいよ、良かったね」

「良くないに決まっているだろう!」

 レオはベッドから立ち上がり、拳を固めて熱弁を振るう。しかしトーマはその全てを聞き流した。それよりも、改めてレオを見てみると、彼は実に恵まれているのだと思う。髪も肌も綺麗で、体付きも良い。鎧を脱いでもレオには何か気品と言うか、やんごとなき者の雰囲気がある。自分と同じ男で、自分と同じ世界の人間なのかどうか疑わしくなってくるものだ。

「何をじろじろと見ているのだ」

「あ、ごめん。それよりさ、この部屋は僕たちだけで使うんじゃないらしいよ」

 トーマは二つのベッドと、その近くに置いてある荷物を指差す。

「……なっ、まさか。まさかっ? そんな馬鹿な!? ただでさえ狭い部屋が余計狭くなるではないか!」

「そうかなあ? 結構広いと思うよ。僕の部屋より全然広い」

「農民の貴様はそう思うかもしれんがな。俺には耐え切れん」

「だったら出れば良いのに」

 何気ないトーマの呟きに反応し、レオは更に憤った。声を荒らげてベッドの上でぎゃあぎゃあと喚く。一頻り暴れるとすっきりしたのか、彼は座り込んでお腹を押さえた。

「腹が減った」

「そう言えば、昨日は何も食べずに寝ちゃったんだっけ。……お風呂、貸してくれるのかなあ」

「貸さんと言うのなら奪うまでよ。良し、農民、まずは腹ごしらえだ」

 そう言ったレオは着ていた白いシャツを脱ぎ捨てる。上半身裸の彼は部屋中を見回して、とぼけた顔で呟いた。

「おい農民、俺の着替えはどこにあるのだ?」



 君は本当に馬鹿なんだね。遠回しに遠回しを重ねたトーマがレオに掛けたのはそんな言葉だった。

 トーマたちは部屋を出て、建物の中を当て所なく歩き回る。その結果、どうやらここはギルドの人たちが使う、寮のような場所なのだと気付いた。彼らは階段の踊り場の窓から、ぼんやりと眼下を見下ろしている。中庭のような空間があり、そこでは数人の男女が噴水の周りで談笑しているのが見えた。

「似たような造りだな。まるでギナ遺跡と同じだ」

「こっちは地下じゃなくて地上だけどね。おまけに凄い、八階建てだよ? 街って本当に凄いんだね」

「む? それくらい普通ではないのか?」

 レオはつまらなさそうにトーマを見る。

「……どうせ僕は田舎者ですよーだ」

「貴様が田舎者なのは知っている。それよりも、貴様が言っていた食堂はどこにあるのだ?」

「一階じゃないのかな?」

「ならば何故俺たちはここにいる?」

「どうしてだろうね」

 トーマが笑ったので、レオは彼の頭を思い切り殴った。そして拳を押さえて悶絶する。

「き、貴様よくも、この石頭が……」

「僕は何もしてないよ!」

 レオは暫くの間怨嗟の声を漏らしていた。トーマは窓から顔を出して、寮とは反対側に位置する建物を見遣る。

 突風同盟はルートナインで最も大きいギルドだ。大人数を抱えている為、その本拠地も数あるギルドの中で一番大きい。そして街の中心部に位置している。現在トーマたちがいるのは突風同盟の南寮、五階だ。寮は中庭を中心にして屋根の赤い南寮、屋根の青い東寮、屋根の白い西寮と全部で三つあり、このギルドに属する者の生活の中心となっている。また、北側に位置する黒い屋根の建物は突風同盟の重要な人物や、優れた能力を持つ者、言わば幹部の人間の住居となっていた。

「あれ?」

「どうした農民」

 レオが窓に近付き、トーマの横から外に向かって顔を覗かせる。

「ほら、あっちの黒い建物から出てきた人。見覚えないかな」

「……見えんぞ。どれだ?」

「え、そう? とにかく、プリカさんじゃないかな、あの人」

 着替えのないレオとは違って当たり前なのだが、プリカ、らしき人物は昨日と違う服装で中庭を歩いていた。

「あ、そうだ。プリカさんに食堂の場所を聞こうよ」

「何? 駄目だ。バーンハイトは自らの手で道を切り開く。他者に力を借りるなど……」

「じゃあ僕が聞くよ」

 トーマは息を腹いっぱいに吸い込む。何をするつもりなのかとレオが問おうとした瞬間、

「プ・リ・カ・さあああああああああぁぁぁぁあああん!」

 大音声がレオの耳をつんざいた。彼は耳を押さえて踊り場にしゃがみ込む。

 中庭にいた全ての人間が突然響き渡った大声に驚き、視線をきょろきょろとさ迷わせて、こちらに向けたり、あちらに向けたりしていた。その中で、はっきりとした視線をトーマに向ける者が一人。

「あ、気付いてくれたみたいだよ」

 プリカは拳を震わせて、両手を上げて何やら叫んでいたが、何を言っているのかは聞き取れない。彼女はやがて脱兎の如き勢いでその場を逃げ出してしまう。

「ところで、どうしてしゃがんでるの?」

 レオは答えず、トーマの頭をもう一度殴った。



 南寮五階の踊り場まで全速力で駆けてきたらしいプリカは、肩で息をしながらトーマを睨んでいた。彼はと言えば、睨まれるような事をした覚えがないので首を傾げる始末である。

「おお、来たぞ」

「…………お、お前、わっ、私に恨みでもあるのか?」

「ええ? そんな、ないに決まってますよ!」

「……そ、そうか」

 プリカの服装は半袖のシャツに丈の短いズボンだった。昨日と似たような格好なのだが、戦闘から離れた彼女の雰囲気にはとげが感じられず、トーマの頬は自然と緩んでしまう。

「……何を見ている?」

「み、見てません」トーマは嘘を吐いた。

「で、お前ら。私を呼んだからにはそれなりの理由があるんだろうな?」

 勿論ですと、トーマは頷く。

「食堂の場所を教えてください」

「うむ、俺は腹が空いている。美味い飯を所望するぞ」

 プリカは呆れて物も言えないのか、壁に背を預けて溜め息を吐いた。

「……昨日説明しただろう」

「そうなのか? 俺は全く覚えておらんぞ!」

 何故か胸を張るレオ。

「どうしてこんなの推薦してしまったんだろう」なんて呟くプリカだったが、気を取り直してトーマたちに向き直る。

「……まあ、良い。いや、良いんだ。ちょうど良かった。私もお前たちを呼びに行くところだったからな」

「うむ、そうか。俺の従者になりたいとは良い心掛けだな」

 こいつやっぱり馬鹿だ、なんて冷たい視線を浴びせながらプリカは話を続けた。

「昨日に説明してやった事の補足が必要だろうと思ったのだが、その様子ではまた一から話さなければならんようだな」

「それよりも俺は腹が減った。早く食堂に案内しろ」

「あ、はは、出来れば僕もご飯を食べながらお話する方が良いかなあ、なんて」

「……仕方ない」

 プリカは階段を下りながら手招きする。

「付いておいで」

 元気良く返事したトーマと、やはり偉そうなレオが彼女の後ろをてくてくと付いていった。



 突風同盟の各寮の一階には食堂が設置されている。時間によればその寮に住む人間の殆どの食事を一度に賄う為、食堂は寮一階の半分程度の空間を使っていた。

 だだっ広い空間に敷き詰められた長い机と丸い椅子。白い壁と床が清潔感を保ったままでトーマたちを出迎える。食堂にはギルドの者が二十人程度おり、思い思いに食事をしていた。

「……そう言えば、ここで食べるのは久しぶりだな」

 プリカは感慨深そうに呟くのだが、トーマたちは彼女を無視してカウンターで注文を済ませている。

「プリカさーん、ここって、どこに座っても良いの?」

「構わん。席ぐらいでくだらん事を言うな農民。俺はここだ、真ん中が良い! ここに決めたぞ!」

「あ、じゃあ僕端っこで」

「貴様は俺の隣に座れ!」

 どうして食堂のシステムについてだけはきっちり覚えているのだろう。プリカの頭は話を始める前から痛くなってきた。

「……ちなみに言っとくと、料理が出来上がる前に席に着いてもしょうがないからな。ここには給仕なんていないんだから」

「何? では誰が俺の料理を運ぶのだ?」

「お前だよ」

 プリカはぞんざいな口調でレオを指差す。



 パンを口に加えながらで、出来上がった料理を自分の席まで運ぶと、トーマの頬は緩んでいた。緩み切っていた。湯気の立った熊肉のスープ、色とりどりの野菜が並んだサラダに果実のジュース。

「……栄養バランスは良いが、少し行儀が悪いな」

 トーマは急いでパンを飲み込み、ごめんなさいと頭を下げる。

「ああ……いや、すまないな。ついつい口を出してしまった。迷惑だろう?」

「ううん、そんな事ないです。プリカさんってお姉ちゃんみたいですね」

「……姉がいるのか?」

「あ。えーと、村に住んでたお姉さんです。血は繋がってないけど、良く遊んでもらってました。あと、色々教えてもらったり。ずっと前に村を出て街に行っちゃったんですけどね」

「そう言う事か」とプリカは呟き、小麦粉を練って茹でた麺を、フォークで器用に巻いて口に運んだ。表情こそ変えないが、彼女はこの料理が好きである。麺に絡まるミートソースが何とも言えないのだ。

「プリカさんも美人さんだし、街の人って綺麗な人が多いんですね」

 麺を吐いた。

「うおお!? 貴様何を考えているっ!?」

「……あ、いや、何でもない」

 プリカは平静を装って、テーブルに用意されている紙ナフキンを大量に掴んで口に押し当てる。

「何でもない訳あるか! まさか貴様、流行り病にでもかかっているのではないだろうな?」

「だ、大丈夫ですか? あ、僕、水持ってきます」

「……問題ない。少しむせただけだ」

「喉を痛めてるんですか?」

 美人やら綺麗などと言われて少し驚いただけだ、とは言わない。まさか年下の男の何気ない発言に照れるとは思わなかった。修行が足りないとプリカは自戒して、ゆっくりと呼吸を繰り返す。彼女が気を落ち着かせる為に何気なくレオの料理に目を遣ると、見事に肉料理ばかりであった。しかし、彼の行儀は異常に良い。ナイフとフォークを使い分け、ナフキンで口を拭く仕草にも慣れが見受けられた。

「野菜も食べたらどうだ?」

「野菜は嫌いだ。それより貴様は薬でも齧っているんだな」

「えと、あ、そうだ。プリカさん、そう言えば話ってなんですか?」

 不穏な空気を察したトーマが口を開く。

「……ああ、うちのギルドについて説明しようと思ってな。風呂と食堂は自由に使ってもらって良い。寮に門限はないが、お前らは新人なんだ。あまり調子に乗るなよ。特にお前だ」

「農民、調子に乗って食べ過ぎるなよ。腹を壊して寝込むなどバーンハイトの臣下としては酷く笑えん」

「僕はバーンハイトじゃないってば」

「お前に言ってるんだデカブツ。……突風同盟で活動する以上は、お前たちにも班に入ってもらう」

 プリカは水を一口飲んでから、麺に手を付けようかどうか迷って、やめた。

「班、ですか?」

「そうだ。うちはこれでも人数が多いんでな、ある程度の人数を纏めておきたいんだ。そこで、班だ。一つの班は主に班長が一人。四、五人の班員で構成している」

「くだらん。群れて動くなど俺の性には合わんし、俺は誰の指図も受けん。俺を命令出来るのは俺だけだ」

「嫌だって言うならギルドをやめてもらう。団体行動の出来ない人間は他のメンバーを危険に晒すからね」

 レオは低く唸り、ナイフを置いた。

「……それに、いつも班で行動しろとは言わない。有事の際に固まって動いて欲しいだけなんだよ。基本的には皆ばらばらだ。ほら、私だって今は一人で動いているだろう?」

「そういう事は早く言え。で、俺はどこの班になる? 勿論、この農民と同じ班だろうな?」

「えっ、嫌だよ。だって部屋まで一緒なんだし」

「貴様は黙って俺に仕えていれば良い」

 部屋が一緒。班も一緒では気の安らぐ時がない。トーマは淡い期待を込めてプリカを見つめる。

「……ああ、その、残念だけど」

 トーマはテーブルの上に突っ伏した。

「はっはっは! そうかそうか、俺と一緒で嬉しいか農民!」

 レオがトーマの肩をばんばん叩く。叩く叩く。

「他の班員とは挨拶したのか? 部屋は同じだった筈だけど」

「あ、それが、僕らが起きた時にはもう部屋にいなくて」

「……まあ、もうお昼を回っているからな。今晩顔を合わせれば済む話だろう」

 プリカはフォークをくるくると回して、天井を見上げた。

「お前らの班長についてだが」

「あ、もしかしてプリカさんが班長さんなんですか?」

 またもや期待のこもった瞳に見つめられてしまう。

「……ああ、いや、残念だけど。だけど、そっちの班長は多分、ギルドでも一番甘い。と言うか、お人好しと言うか」

「要領を得ない人物評だな。女、話す時はしっかりと考えて話すが良い」

 お前には言われたくない。プリカは目だけで訴えるが、レオはそんな視線などどこ吹く風で肉を平らげていた。

「まあ良い。明日になって会えば分かるだろう」

 それきりプリカは黙ってしまう。が、トーマには聞きたい事があったのだ。ちらちらと彼女の様子を窺っては、スープをちびちびと飲むのを繰り返す。

「……言いたい事があるなら言ってしまうのが良いぞ」

 プリカに見据え付けられたトーマは固まってしまうが、やがて、意を決して口を開いた。

「あの、僕たちは何をすれば良いんですか?」

「何、を?」

「突風同盟って何をやっているギルドなのか、その、分からないんです」

「……好きにやれば良い」

 トーマは目を丸くさせる。

「このギルドの人数は本当、もう嫌ってぐらいに揃っているからな。誰かを誘って好きな事をやれば良い。ダンジョンに潜り、モンスターを倒して腕を磨くのも良い。金を稼ぐ為に商売を始めても良い。基本的に私たちは、ただ、集まっただけなんだ。集まった奴がそれぞれ好きな事をやってるだけなのさ」

「料理を、作っても良いんですか?」

「……料理?」

「はい。料理を作って、その、お金を貯めて露店を開いたり! あと、頑張って自分のお店を持ったりしても良いんですか!?」

「ははっ、ああ、良いね、そういうの。その時は私も力になってやるよ」

 プリカは堪えきれずに噴き出し、それから、少しだけ罰の悪い表情を浮かべた。

「……あれ? とすると何か、本当はトーマ、突風同盟に入らなくても良かったのか? 料理やりたいなら、専門のギルドもあるしなあ……」

「む? おい農民、今更他のギルドに行きたいと抜かしてみろ。その時は、俺が剣を抜く時だぞ」

 レオがフォークを持ってトーマを睨む。

「……そいつが本当にやりたい事をやるべきで、行きたいところに行くべきだ。デカブツ、トーマの邪魔をするってんなら私が相手になるぞ」

 プリカがフォークを掴んで麺を啜る。

 トーマは少しだけ迷って、少しだけ考えた。確かに料理の専門ギルドに行くのが一番なのかもしれない。しかし、彼は何も金銭を得る為だけに街へ来たのではない。トーマはここで、もっと別の大事な何かも手に入れたかったのだ。

「僕は、ここで良いです。ここが良いんです」

「……本当に良いのか? 推薦したのは私だし、今から取り消してやっても」

「プリカさんもいるから、大丈夫です!」

「………………うっ」

「うおおっ!? 貴様さっきから何をふざけておるのだ!?」

 レオたちの喧騒をよそに、トーマはぼんやりとスープの表面を眺めた。こんな美味しそうな料理を、自分も作れるようになるのだろうか、と。

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