決まりの花色、荒れ狂う波
きらりん:今日は出ないけど…演劇用語から一つ!発声練習の時に聞こえる「長音」や「単音」って何のこと?
ここはとある高校の演劇部。全国大会に行った先輩たちはリバイバル公演のための練習で欠席する一方、一年生公演の練習は始まった。
彩子:おはようございます。15時25分です!
柴乃:コンポとCDを持ってきました。
彩子:ありがとう。結愛ちゃんももう着替え終わるみたいだし、脚本を読み合わせするよ!
結愛:はい!着替え終わりました!
彩子:おぉ!練習着じゃない!気合が入ってるね!
結愛:だって主役なんだもん!
彩子:…結愛ちゃんは主役じゃないよ?
結愛:でも、端役だとしても舞台に出ればみんな主役なの!
彩子:そうだよね!
陽菜:おはようございます!
杏子:すみません…遅れました!
麻依:今すぐ着替えてきます!
結愛:おはよ!今日も一緒に頑張ろう!
ちー:15時30分です!
彩子:じゃあ練習始めようか。おはようございます。ひかりちゃんと智美ちゃんはなんでいないのでしょうか?
結愛:わからないです…
柴乃:学校来てたよね…
モニカ:おはようございます!ほら、みんなサボろうとしたんでしょ?
ひかり:すみません!つい出来心で!
智美:本当にすみませんでした!
彩子:…じゃあ君たちが主人公をやろうか。
麻依:え…私じゃないのですか?
彩子:ふしまいちゃんは影が薄いのよ。結愛と陽菜にやらせようとしていたんだけど…今度他の作品で優遇するから。
智美:え…いくらなんでもそれは…
ひかり:本当に私たちでいいんですか?
彩子:構いませんよ。さぁ、読み合わせをしましょうか。
こうして脚本の読み合わせが行われることになった。すらすら読めてはいるが、彩子の見る目は昴のそれよりも厳しかった。
彩子:はい、智ちゃんとひかりちゃん、この舞台はそんな演技演技した声はいらないの。昴先輩はそんなこと言わないかもだけど、私は言うからね。
モニカ:…あんまりカリカリしてはダメよ。でも、演技っぽい声の出し方をする劇ではないよね。
智美:それってどういうことなんですか…?
ひかり:急に言われても…だって演劇部ってこういう感じじゃないの?
彩子:はぁ…
昴:今の言葉ねぇ…演劇って何なのかわかってないでしょ。ただ役を演じる、それでもいいんだけど…この劇は自分自身を演じるものなの。
彩子:昴先輩!
昴:ちょっと時間があったからのぞき見してたよ。智美ちゃんとひかりちゃんに主役をさせたんだ…どういう意味か分かるよね?
智美:罰ですか?
ひかり:恨みでもあるのかと…
昴:彩子、ちゃんと言おう。
彩子:…恨みでも罰でもないの。ただ遅刻した時に見えたものが、主役の二人にあってたんだ。だからこそ!そんな演劇らしい読み方じゃなくて!もっともっと自然に読んでほしかったの!
智美:はい…
ひかり:そうでしたか…
彩子:今日はあと一回読み合わせたらおしまい!さぁ、行くよ!
そして今度の読み合わせはうまくいった。帰り際、二人は前からのサボりを謝罪して、明日からの練習を真面目にやることを約束していた。
ひかり:まさか主人公になるなんて…
智美:一緒に頑張ろう!
柴乃:そういえばちょうおんとかたんおんって何?
結愛:しーちゃん、長音と単音ね。長く伸ばす発声方法と短く区切る発声方法だよ。