元悪役令嬢は隣の芝生が青く見えない
新連載を始めました!
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──あっ、ここって前世でやり込んだ乙女ゲームの世界だわ。
私がそのことを理解したのは、七歳の時。
王太子の誕生日パーティーに出席した時のことだった。
まるで頭に雷でも落ちたかのような痛みが走り、私は全てを思い出した。
(うっそ……。まさかこれ、転生ってやつ?)
前世、私は日本生まれ日本育ちの、至って平凡な女子高生だった。
しかし、二学期の期末テストの最中、一夜漬けばかりしていた私は寝不足が祟り、駅の階段から落ちて呆気なく死んでしまったのだ。両親に合わせる顔がないわ。いや、もう会えないけれど。
(死んだ人間が別の世界に転生するっていう内容の小説はいくつも読んでたから、この状況を受け入れるのは比較的簡単だけどさ。……なんでセレナ・ウィズリーなんだろ……)
艶かな赤色の長い髪に、エメラルドグリーンの瞳。
私ことセレナ・ウィズリーは、乙女ゲームの中で悪役令嬢と呼ばれている存在だった。
ゲームの舞台は貴族や特殊な力を持った平民が通う王立学園。
そこで攻略キャラたちにことごとく愛される平民ヒロインのリリアナちゃんに嫉妬した公爵令嬢のセレナは、彼女に度を超えた嫌がらせをしたとして断罪されるのだ。
国外追放やら修道院に入るやら、かなり過激なものまである。
(あ、でも、中には悪役令嬢が一切断罪されないルートもあったはず! それも複数!)
ゲームをプレイしていた時は、運営に対して攻略キャラたちのスチルをもっと増やしてほしいとか、フルボイスにしてほしいとかばかり思っていたけれど、今ほど運営に感謝したことはない。
ありがとう、悪役令嬢に比較的救いがある作品を作ってくれた運営チーム。もしもまたゲームをプレイする世界に転生できたら、絶対に★五でレビューしておくよ!むしろしてなくてごめんなさい。
「さて、そうと決まれば断罪回避よね! 頑張るぞー! おー!」
「セ、セレナちゃんどうしたの?」
「なにか変なものでも食べたのか!? セレナ」
「な、なんでもないですわ、お母様、お父様! おほほほほ!」
とりあえず両親には心配はかけないように頑張ろう。私はこの日、強くそう決意した。
◇◇◇
──その決意から、早十三年。
学園を卒業し、二十歳になった私は現在、王宮が主催するパーティーに来ていた。
(いやーそれにしても、こんなに簡単に断罪が回避できるとは思わなかった)
乙女ゲームの強制力により、攻略キャラである王太子の婚約者に選ばれてしまったり、攻略キャラやヒロインのリリアナちゃんに近付くつもりはなくても何故か関わってしまい、濡れ衣を着せられて断罪されてしまったりするかも! と不安になっていたのだけれど、蓋を開けてみればそんなことはなかった。
ゲームの主要人物たちとは過度に関わることなく、断罪の『だ』の字もない学園生活だった。やはり運営には感謝しかない。
「セレナ」
「ヴェルド!」
友である夫人たちと一旦別れ、一人会場の端にいた私のもとにやってきたのは、夫のヴェルド・レーダンだ。
ヴェルドとの出会いは学生時代。学園に通う三年の間、偶然にもずっと同じクラスで、席が隣になることも多かった。
人混みに紛れてしまえば全く目立たないブラウン色の髪の毛に、同じ色の瞳を持つ彼は、攻略対象に比べるとかなり地味だ。それに、男爵家の次男坊ということもあって、貴族令嬢からは見向きもされていなかった。
けれど、騎士を目指して日々努力に励む姿や、誠実な性格、優しいところに、私はとても惹かれた。
いつしか互いに思い合うようになり、ヴェルドからの告白で私たちは恋人同士になった。
卒業してすぐ、お父様にヴェルドと結婚をしたいと言った時は「もっと良い縁談があるぞ!?」と心配されたが、大きな反対はされなかった。
公爵令嬢という立場である私を、愛する男と添い遂げたいならば……と男爵家の次男であるヴェルドのもとに嫁ぐことを許してくれた両親の寛大さには心から感謝している。
「私のところに来て大丈夫なの? 王太子殿下の護衛があるんじゃ……」
学生時代から騎士を目指していたヴェルドは、卒業後無事その夢を叶えた。
しかも、騎士団に入団してから約半年で、真面目な性格と腕を見込まれ、王太子殿下の近衛騎士に任命されるに至ったのだ。更に、その後の働きも認められて、ヴェルドは伯爵の爵位まで賜った。私は今、レーダン伯爵夫人なのである。
「少しだけなら大丈夫だよ。王太子殿下にも許可をもらってきた」
「そう。それなら良いのだけれど。それで、何か急用でもあったの?」
「……いや、セレナが一人だったから……」
「えっ」
近衛騎士は王族の護衛に当たらなければいけないため、王近衛騎士を夫に持つ妻は、王宮主催のパーティーの時に身内と入場だけを済ませる。
そして、パーティーが始まると妻たちで集まり、会話に花を咲かせるのだ。
私が今一人なのは、夫人たちの挨拶周りの関係でそうなってしまっているだけ。これが長く続かないことは、ヴェルドも分かっているだろうに……。
「私が一人だったから、気にかけて来てくれたの?」
問いかけてはいるが、ヴェルドはとても優しいから、きっとそうなんだろうな。なんて、私は思っていたのだけれど。
「……違うよ。セレナは一人になるといつもよりお酒が進むから。悪酔いして、誰かに迷惑をかけちゃいけないと思って」
「! ……そう、だったの。悪かったわね、余計な心配をかけて。けれど、大丈夫よ。そんなに愚かじゃないわ」
まさかそんなことを言われるなんて思わなくて、しゅん……と心が沈む。
眉尻を下げる私に、ヴェルドは気まずそうな表情を一瞬見せて、すぐさま背を向けた。
「それなら良いんだ。それじゃあ、俺は行くから」
「ええ。お仕事頑張ってくださいね」
「…………」
みるみるうち小さくなっていくヴェルドの後ろ姿を見ながら、私の胸はチクリと痛んだ。
(聞こえてたはずなのに、返事もしてくれなかった……)
恋人になる前から、ヴェルドは常に優しかった。結婚してからだって、変わらず……どころか、毎日優しさが更新しているくらい彼は優しく、溢れんばかりの愛情を示してくれていたのに。
(ここ二週間くらい、やっぱりヴェルドが冷たい気がする……)
仕事で疲れていて余裕がないのか、それとも私がなにか気に触るようなことをしてしまったのか。
思い当たることを考えてみたものの、これと言った答えは出なかった。
(ヴェルド、一体どうしたんだろう……)
彼が立ち去った方向を眺めながら悩んでいると、わざとらしくヒールの音を立てた女性が近付いて来る。
その人物に気が付いた私は、小さく「うげっ」と呟いた。
「久しぶりね、セレナ様。あら? なんだかお顔が暗くてよ?」
「キャロライン様、ご無沙汰しております。ご心配ありがとうございます。けれど心配は無用ですわ」
ギンギラな金の髪の毛をこれでもかと巻き、挑発的な表情で現れたキャロライン様は、幼い頃から私を敵対視している。
私の家とキャロライン様の家が同じ公爵という地位にあること、年齢が同じであることから、昔から何かと突っかかってきては、チャンスがあればマウントを取ってくるような面倒な女なのだ。もはやキャロライン様こそ悪役令嬢にふさわしいと思う。
侯爵令息の夫を捕まえたキャロライン様は、当時男爵の爵位さえ継げないヴェルドと私が結婚した時、嘲笑混じりの祝いの言葉を並べたものだ。まじでこの女嫌いだと思った。ヴェルドが気にしてないようだから軽くいなしてブチギレるのはやめたけど。
ていうか、キャロライン様、あんた王太子殿下の妻の座を狙ってなかったっけ?
でも見向きもされず、侯爵令息となんとか結婚までこぎつけたんじゃなかったっけ?
「あらぁ。本当に大丈夫ですの? ご主人との関係が冷え切っているのを悩んでいるのではなくて?」
「……!」
「ふふっ、ごめんなさぁい? 偶然お二人の会話が聞こえてしまって。醜態を晒すのではないかと疑われて、無視までされるなんて、お可哀そうに……」
この女、わざと聞いてたな。それで敢えて話しかけてきたな。ほんと嫌いだわ……。
「うちはとても主人と仲が良いのよ? 最近、毎日ジュエリーやバッグのプレゼントをしてくれて、困ってしまうわ〜。それにね? 毎日欠かさずに愛の言葉を囁いてくれますの。ふふっ、愛されるって幸せですわよねぇ。あ、ごめんなさい〜。セレナ様はお辛いだろうに、こんなことを話してしまって」
「いいえ。それは良かったですわね。幸せそうでなによりです」
キャロライン様の明らかな夫婦仲良しマウントに対し、私はサラッと答える。嫉妬に歪んだ顔を見たかったんだろうけど、別にキャロライン様のことは羨ましくないんだもの。
最近のヴェルドの態度については疑問に思うが、過度に不安になることはない。何故なら私はヴェルドを信じているし、愛しているからだ。
キャロライン様は私の態度が気に入らないのか、頬をピクピクと引くつかせているけれど、知ったこっちゃないわと笑ってみせた。
「そ、そうだわ! ご主人のことでセレナ様にお伝えしたいことがありましたの」
「……? どうしてキャロライン様が私の夫のことを?」
「実は夫からセレナ様のご主人のとある話を聞いてしまって〜。これはお伝えしたほうが良いと思いましたの」
キャロライン様の夫も、ヴェルドと同じ近衛騎士だ。
ヴェルドからあまり良い話は聞かないけれど、一体彼は私の夫の何を知っているのだろう。
「最近、貴女のご主人、あの平民の女と会っているみたいですわよ?」
「……!」
「ふふっ。不倫じゃなくって? はぁ〜ん、お可哀そうに……!!」
ニヤつくキャロライン様の言葉に、私はハッと目を見開いた。
◇◇◇
同日の深夜。
私は屋敷に戻ってから湯浴みを済ませると夜着に着替え、ベッドに腰を下ろしてヴェルドの帰りを待った。
「え!? セレナまだ起きてたの!?」
寝ていると思ったのだろう。寝室の扉を開けて驚くヴェルドに、私はお帰りなさいと返す。
「た、ただいま。もしかして、俺を待ってたの……?」
「ええ、そうよ。少し話したいことがあって」
「こんな夜遅くに話ってことは、かなり大事な話なんだよね? 一体何が……って、いやいや、そうじゃない……! 俺は疲れているから、また話は明日にしよう」
発言を自ら訂正するヴェルドは、不安と焦りが混じり合ったような表情をしている。
二週間前から薄々思ってはいたけれど、なんだか無理をしているみたいだ。
(やっぱり。そういうことなのね)
キャロライン様の発言からとある予想をしていた私は確信を持ち、立ったままの彼に問いかけた。
「最近、リリアナさんのところに行ったんですって?」
「なっ、なんでセレナがそれを……!」
やはり、キャロライン様が言っていた、あの平民というのはリリアナさんのことだったらしい。
キャロライン様は、将来の伴侶として狙っていた王太子殿下がリリアナさんに好意を寄せていたものだから、リリアナさんのことを一方的に嫌っていて、未だにあの平民だなんて失礼な呼び方をしているのよね。
「……いや、今はどうしてセレナがそのことを知っているかはどうでもいい! 聞いてくれ! 確かに俺は一度だけリリアナさんのところに行ったけれど、不倫とかじゃないんだ! あの人に対して下心なんて一切なくて……!」
「不倫なんて欠片も疑ってないわよ。ヴェルドが不倫なんて器用な真似ができるとは思っていないし、貴方が私のことを愛してくれているのは私が一番良く分かってるわ。ただ──」
──ヒロイン、リリアナ。
彼女は誰もが羨むような美貌や地位を持った王太子殿下に想いを寄せられていたが、その求婚を断った。
他の攻略者たちとくっつくこともなく、ゲームは友情エンドを迎えたことには、当時私も驚いたものだ。
では現在、リリアナさんが何をしているかというと……。
「どんな未来が占われたのか、知りたいの」
リリアナさんは、ヒロインならではの特殊な能力──未来視の力を持っている。
それを用いて占い師として生計を立てているのだ。平民の間でそこそこ人気らしい。
リリアナさんは複数の不確定な未来が見えるようで、それを占いに来た人に伝えているようだ。
占ってもらった者は、その中の最悪の未来にならないよう、気を付けたり、事前に準備したりできる。これがこの占いの強みである。
「最近の貴方のおかしな態度は、その占いの結果が関連していると考えたのだけれど……違う?」
「……いや、正解だよ。さすがセレナだな……。そこまで分かっていたんだね」
ヴェルドはそう言うと近付いてきて、私の隣に腰を下ろした。
「全部説明するから、聞いてくれる?」
「もちろん」
私はゴクリと唾を呑み込んでから、ヴェルドの話に耳を傾けた。
「約二週間前、セレナが言う通り俺はリリアナさんが働く占いの館に行って、彼女に未来を占ってもらった。俺と、セレナの未来を」
「一体どうして? リリアナさんに頼らなくちゃいけないくらい、私たち夫婦の未来が不安だったの……? 私が何かしたから……?」
「違う! セレナは悪くないんだ! これは完全に俺の問題で……っ」
ヴェルドは俯向いて髪の毛を搔き乱す。
それから数秒後、覚悟ができたのか、顔を上げると、意を決したような顔つきで私を見つめた。
「セレナのことが、好きすぎて怖かったから……!」
「…………ふへぇっ」
あまりの驚きに、変な声をあげしまった。失敬。
「出会ってから今日まで、毎日毎日、君に対する好きが増えていくんだ! 愛情がとどまることを知らないんだ!! だいっっっすき、なんだ!!」
「……あ、ありがとう。そ、それで?」
「これ以上俺がセレナを好きになったら、愛が歪んだ方向に行って君を監禁してしまうかもしれないだろう!? だから、このまま俺がセレナを好きになり続けても、君を不幸にするような未来が訪れないのか、知りたかったんだ……!」
「な、なるほど?」
いや、なるほどじゃないわ。私の旦那様、想像していたよりも愛が重かった。
「それで、占いの結果はどうだったの?」
「未来の一つに、俺がセレナを監禁してしまうものがあった……」
「えっ」
あるんかい! と前世のようにツッコんでしまうところだった。
私はツッコミを呑み込んで、ヴェルドの話に耳を傾けた。
「だから俺は、その未来にならないよう、セレナをこれ以上好きにならないようにしなきゃと思ったんだ……!」
「それで、この二週間は態度が違ったってこと?」
「……うん。セレナに冷たくしたりすれば、自分の中の君に対する感情が少しくらいは落ち着くかと思って……」
「一応聞くけれど、結果はどうだったの?」
私の質問に、ヴェルドは頭を抱えた。
「ぜんっぜん意味がなかった……! 悲しそうにするセレナを見たらどうしようもなく抱き締めたくなって、でも冷たくすると決めた手前抱き締められなくて……君への思いがどうしようもなく募ってしまったんだ……! だから、俺がやったことは無意味で……セレナを悲しませただけだった……。本当に、ごめん……」
「ヴェルド……」
私はそっと腕を伸ばして、ヴェルドの手にそっと重ねた。
そして、罪悪感に滲んだヴェルドに対して、ふわりと笑ってみせた。
「もう良いの。事情はちゃんと分かったし、こうしてちゃんと話してくれたもの」
「セレナ……優しすぎるよ……」
「そんなことないわよ。でも、私も監禁をされるのは嫌だから、ヴェルドの愛情が歪まないように私も気に掛けるわね。こういうことは一緒に考えましょう?」
「……っ、セレナ……!」
ヴェルドの手が離れていったと思ったら、性急に抱き締められた。
こんなふうに抱き締められるのは二週間ぶりで、心がじんわりと温かくなる。
「……けれど、やっぱり少し寂しかったわ。貴方に冷たくされるのは、もうこりごり」
「ほ、本当にごめん……! セレナ好きだ……っ、大好きだ……っ」
「ええ。私も大好きよ、ヴェルド!」
私たちは同時に腕を力を弱めると、しばらく見つめ合う。
そして、ヴェルドの顔が近付いて来た瞬間、私の頭にはとある疑問がよぎった。
「ねぇヴェルド」
「えっ、今? ……ああ、うん、なんだい?」
「キャロライン様のご主人が、貴方がリリアナさんところに行っていたことを知っていたみたいなんだけど、どうして? あちらのご主人とそんなことを話すような仲だったの?」
「ううん。実は彼もリリアナさんのところに来ていたんだ。俺の前に占ってもらっていたけど」
「ああ、そういうこと」
おそらく、キャロライン様はリリアナさんが今、占い師として働いていることを知らなかったのだろう。
彼女は自分が着飾ったり、地位や自慢話くらいにしか興味がないから。
「それでさ、実は偶然、彼とリリアナさんの会話が聞こえてしまって」
「えっ、そうなの?」
「……うん。彼、キャロライン嬢にバレることなく、自分と不倫が続けられる未来はありますかって聞いていたよ」
「うわぁ、大体読めたわ……」
キャロライン様の夫は、大の女好きのクズ男であると騎士の中では有名だ。ヴェルドからその話を聞いたことがあったから、不倫していることにも大して驚かなかった。
ただ、彼はキャロラインの実家である公爵家との繋がりはとても大切に思っているようだ。そのため、不倫がバレて離縁しなければならない状況を避けたかったのだろう。
(多分、占った結果の中に不倫がバレる未来があったのね。だからキャロライン様の夫は、是が非でも不倫を隠さないといけないためどうしようかと考えた末、キャロライン様にプレゼントを贈ったり、愛の言葉を囁いたりした、と)
彼がキャロラインにヴェルドがリリアナさんのところに行っていたのを話したのもそのためだろう。
キャロライン様はリリアナさんが占い師であるとは知らず、更に昔から私のことを嫌っていた。ヴェルドが不倫をしているのかもという情報をキャロライン様にちらつかせたら、そりゃあ彼女は喜ぶでしょうよ。
下心を隠すために妻に優しくする。良い夫を演じようとする。意識を自身から他に向けさせる。
不倫夫の典型的な変化だ。
(この変化を良いものだと信じて疑わないキャロライン様は、意外と純情なのかもしれない。まあ、あまり同情はしないけれど)
私が考え込んでいると、ヴェルドが首を傾げた。
「セレナ、どうかした?」
「あっ、ごめんなさい。なんでもないの。私は良い旦那様を持って幸せだなぁって思っていただけよ」
「本当に!? 監禁してしまう未来が訪れないよう、これからも真っ直ぐにセレナを愛するよ!」
「それはそうしてほしいわ」
それから私たちは互いに口元を綻ばせ、どちらからともなく再び見つめ合う。
「セレナ、愛してる」
「私も愛してるわ」
そっと重なったヴェルドの少しかさついた唇が、この上なく愛おしかった。
その後、人伝にキャロライン様の夫の不倫がバレて、夫婦仲が泥沼化していると聞いたけれど、まあ、私には関係ないものね。
お読みくださりありがとうございました……!
面白かった! 旦那様のヤンデレバージョンも読みたい! と思っていただけたら、ブクマや↓の★を押して評価をいただけると嬉しいです(*´ω`*)♡作者が嬉しくて小躍りします٩(๑´3`๑)۶
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