イニーフィネファンタジア、五世界幻想譚の世界観及び、世界統一化現象(時代)
イニーフィネファンタジア、五世界幻想譚の世界観及び、世界統一化現象(時代)
世界統一化現象とは
ネオポリスの特務官No.702(ナッツ)談
「かつて、この惑星の空と大陸と海洋は、イニーフィネ人という人種が興した統一国家により統治され、その国―――イニーフィネ帝国は繁栄を誇っていました。『イニーフィネ』というのは彼らの言葉で『限りなく完全』を意味し、自身のアニムスを駆使してその名の通り、『超能力』『氣』『魔法』を行使し、さらにそれらを駆動源にした『機械』をも操ることができたのです。彼らは全てのことを成すことができたため、次第に惑星イニーフィネに対する感謝や慈愛も忘れ、人々は驕ったように振る舞うようになりました」
彼女は喋り続けることに対して疲れる様子はなかった。彼女の唇は止まることなく、言葉を紡ぎ続けるのだ―――
「しかし、突如、惑星イニーフィネの大気圏内において、主星の光とは別の、靄のように薄く漂う白い光に覆われるという天変地異に襲われました。一時的に全ての異能が使えなくなり、こんにちでも、彼らはそれを『災厄の日々』とよんでいます。後世では、それは惑星イニーフィネが、複数の異世界惑星と一時的に次元が繋がったことにより、発生した現象と解釈されています。」
「一つの世界だったこの惑星イニーフィネに四つの、それぞれ違う惑星からの移住者達が、次元を超えて空間ごと来訪してきたことにより、惑星イニーフィネは、五つの『異世界』を内包する惑星となりました」
「惑星イニーフィネに転移してきた四つの異世界集団を、先住のイニーフィネ人は、超能力に特化した『エアリス人』、氣の行使に特化した『オルビス人』、詠唱魔法を行使する『魔法王国イルシオンの民』、そして機械に長けた『ドールズ』と呼びました」
「ついでに言いますと、エアリスは日之国、ドールズはネオポリスと自称しています。オルビスは、未だ統一政体がありませんので、各々が自分達の言葉で自分達の世界を呼称しているようです」
「彼ら四つの外惑星からの移住者達は、先住者であるイニーフィネ人の領域を奪いつつ、お互いに協力と闘争もはじめました」
「その争いは激化の一途をたどり、惑星イニーフィネは、後に『世界統一化現象』と呼ばれることになる戦乱と激動の時代を迎えます」
「しかし、やがて『世界統一化現象』は、収束しはじめ、こんにちの比較的安定したこの新しい五つの世界を内包するイニーフィネとなったのです」
「『イデアル』という組織は、『世界統一化現象』の直後に、突如この五世界に現れた組織。その『イデアル』という組織が、直接手を下して『世界統一化現象』を終わらせたのか、それとも、その『イデアル』という組織を怖れた『イニーフィネ』『エアリス』『オルビス』『イルシオン』そして『ネオポリス』が、手を取り合ったことによって『世界統一化現象』が終息したのか、それは誰にも分かりません」
日之民の羽坂奈留談
「この惑星、イニーフィネに伝わる割と有名な創世神話だけど―――」
そうして彼女ナルは語り出したのだ。
「―――」
「―――むかしむかし、この惑星イニーフィネには自らをイニーフィネと名乗る人々が豊かではないが、幸せに細々と暮らしていました」
「彼らは自分達が住む、この母なる惑星に感謝し、彼女を大地母神として礼節を尽くして崇め、敬っていました」
「そこであるとき、母なるこの惑星イニーフィネは、女神の姿をとり、イニーフィネの人々の前に降臨したのです。彼女は、自身の惑星に住む正しき心を持った人々に叡智の力を授けました」
「すなわち『超能力』『氣の具現化』『魔法』『科学力』の四つの聖なる智慧と機構と、それら四つを駆動するための『アニムス』。神の如き叡智の力。『五つの叡智の力』を手に入れたイニーフィネの人々は、五つの叡智を組み合わせ、高度な文明を築き上げ、平和な国を興しました」
「彼らイニーフィネの人々は、女神から自身に与えられた『アニムス』を駆使して、『超能力』『氣』『魔法』を行使し、高度な『科学力』を用いてアニムスを駆動源にした機械をも操ることができました」
「彼らは全てのことを成すことができたため、次第に自分達の惑星イニーフィネに対する感謝や慈愛も忘れ、人々の心は堕落し、驕ったように振る舞うようになりました」
「そして、ついに彼らイニーフィネ帝国の人々は母星をも滅ぼすことが可能な七基の超兵器を創造しました」
「心を痛め、悲しんだ『彼女』はついに行動を起こしたのです。『彼女』は、四人の惑星達に助けを求め、それに応えた四人の『彼女』は、それぞれ自分の『子達』を養子に出したのです」
「その四人の『彼女』から送られた子達は、それぞれ、超能力に特化した『日之民』、氣の行使に特化した『月之民』、魔法を行使する『魔法王国イルシオンの民』、そして機械に長けた機人『ネオポリス』の『子達』です」
「『四人の子達』は、イニーフィネ帝国の驕り高ぶった人々から、土地を切り分け、それぞれの国を興したのです。それでこの惑星イニーフィネに五つの『世界』ができました。・・・ちゃんちゃん」
「アルス、私はこの神話がどこまで史実を含んだものかは知らない。たぶん、塚本も春歌もそう思ってる。でも、まだこの神話にはちゃんと続きがあるの」
「ここからの話はちゃんとした史実で、イニーフィネ帝国のイニーフィネ人を駆逐し、日之民はここ新天地で日之国を建国しようとした。でも、そうしようとしたのは日之民だけじゃなくて、月之民もイルシオン人も機人もそう」
「彼ら移住者は、イニーフィネ帝国と衝突しつつ、隣人同士になった彼ら同士でも互いに衝突と協力を始めたの」
「互いの勢力が統一国を建設しようとしたことを、『世界統一化現象』と呼び、惑星イニーフィネ全球規模で境界紛争が始まった」
「でも、時が経つにつれて、この『世界統一化現象』は終わり、今のこの新しい五つの世界を内包する惑星イニーフィネとなったの」
「世界統一化現象時代は、私達が生まれるよりもずっと昔のことで、だから今はもう―――ううん、日下で小競り合いは起こってたけど、日之国は存亡の危機じゃないよ?」
イニーフィネ人のアイナ=イニーフィナ談
「―――『皇国創建記「女神叙事文」』・・・『優しき彼女はこう言った「そうだ、あの正しき私の子らに、私の叡智を授けよう」と・・・。むかしむかし、この大地には、自らをイニーフィネと名乗る人々が豊かではありませんが、幸せに細々と暮らしていました。彼ら彼女らは自分達が住む、この母なる大地に感謝し、『彼女』を大地母神として礼節を尽くして崇め、奉っていました』。・・・なにを隠そう女神フィーネ様へのその祭事を司っていたのが、私達イニーフィネ家の先祖なんですけどね♪」
「『あるとき、空と大地が光り輝いた。母なる大地この惑星の大いなる女神。彼女は女神の姿をとり我らイニーフィネの民の前に降臨したのです』」
「『そこで大いなる女神は己が名を伝え、己の惑星に住む正しき心を持った我々に叡智の力を授けてくれました―――』」
「『―――叡智の力とは、すなわち『異能』『氣』『魔法』『科学力』の四つの聖なる智慧と機構とそれらの根源たる『アニムス』。『神の如き叡智の力』。大いなる女神よ、『五つの叡智の力』を授けられた我らは五つの叡智の力を組み合わせ、高度な文明を築き上げ、貴女のために我らは平和な国を興すのだ。女神よ、感謝する。我らは貴女から与えられた『アニムス』を駆使して、『異能』『氣』『魔法』を行使し、高度な『科学力』を組み合わせ電気とアニムスで駆る神機をも手に入れたのだ』しかし、でもですね、ケンタ―――」
「―――『おぉ我らは極める、この神の如き五つの叡智を。我らはこの大地の、海の、空の―――星の隅から隅まで征き尽し、この神器『七基の超兵器』をもってこの惑星を制するのだ』、と」
「―――『おぉ我らは極める、この神の如き五つの叡智を。我らはこの大地の、海の、空の―――星の隅から隅まで征き尽し、この神器『七基の超兵器』をもってこの惑星を制するのだ』、と。そんなイニーフィネ帝国の絶頂期のことが、次の節六節から記されています・・・。しかし、そんな折突如、全世界を白い災害が襲うのですが―――」
「『おぉ、なんたることか!! なんたることがそこに起きたのだ!!』」
「『おぉ・・・それは白い悪夢―――、白い禍―――、我らの五つの叡智が白に塗り潰された日々―――、白い靄の中から突如現れた四種の異人達―――『災厄の日々』』」
「『七基の超兵器』の創造―――やはりそのことに・・・心を痛め悲しみ、お怒りになられたと伝わる『女神フィーネ様』は、ついに行動を起こしたのです」
「『女神フィーネ様』は、四人の仲間の惑星達に助けを求め、それに応えた『四柱の女神様』は、それぞれ自分の『子達』を養子に出したのです。その『四柱の女神様』から送られた子達は、それぞれ、超能力に特化した『日之民』、氣の行使に特化した『月之民』、魔法を行使する『魔法王国イルシオンの民』、そして機械に長けた機人『人形族』の『子達』です・・・、というのが、『女神叙事文』とは別の、『女神五世界頌詩』という節で語られています」
「『日之民』『月之民』『魔法王国イルシオンの民』『人形族』の『四種の異人達』彼ら移住者は、この星の先住者我々イニーフィネ帝国と衝突しつつも、隣人同士になった彼ら同士でも互いに衝突と協力を始めました。そうして、惑星イニーフィネ全土で境界紛争が始まるのです―――」
「私達先住者も含めて、五つの世界勢力が統一国家を建設しようとしたことを『世界統一化現象』とよんでいるのですが―――」
「長く続いた戦乱の世『世界統一化現象時代』ですが、偶然の産物か、はたまた意図的なものなのか―――五つの異世界の権衡者なるものを自称する『イデアル』の出現とほぼ同時期に、この『世界統一化現象』は終息するのです」
「はい。当時のイニーフィネ人は『災厄の日々』が訪れた『真相』を悟ったことで、己の過ちに気づき、女神フィーネ様への不敬を悔い改め、再び拝み祀りました。その証として四つの世界からの移住者達に土地を譲り割けることになります」
「そのときに、私達イニーフィネも含めて、他の四つ世界にも『イデアル』の介入が在ったのかどうか―――、今の私達皇家の人間ですらもう判りませんが、しかし、その後しばらくしてこの『世界統一化現象』と呼ばれた時代が終わったのは事実です」
「そして、『世界統一化現象』より以前の『イニーフィネ』は、『古き大イニーフィネ』と呼び、今の五つの異世界が共存する五世界のイニーフィネとは区別します」
「私達イニーフィネ人は、女神フィーネ様に五つの叡智を与えられた民と云われ、その意味は、『イニーフィネ』という言葉は『限りなく完全』を意味します」
「その根拠に私達イニーフィネ人は『アニムス』を根源にして『異能』、『氣』、『魔法』、『機械』の全ての異能種を行使できます・・・。ケンタ貴方は日之民―――」
「えぇ。貴方のその『選眼』という異能を目の当たりにした私は―――そうケンタ貴方が日之民であるということを確信しています」