誰にでも書ける殺人。あるいは異世界恋愛とミステリって案外相性よいのでは?
琥珀と申します。
「顔はいい」と言われがちなおとぼけ王太子アルフォンス君+銀髪デキ過ぎ公爵令嬢ジュスティーヌ+ピンク髪の野生の男爵令嬢ジュリエット(+金髪悪役令嬢カタリナ)の座組で、アホだったりシリアスだったりする異世界恋愛作品のシリーズを書いていたりします。あとはピンク髪の名ばかり男爵令嬢が呪われた皇弟殿下と恋に落ちる話とか。
昨年、公式企画「春の推理2022」に同シリーズの作品で参戦いたしましてご好評いただき(評価ブクマ感想レビューくださった皆様、ありがとうございます!)、調子こいて夏にもう一本書き(同上)、そしてまたまた今年も長編で参戦してみたのですが……(同上)
夏のホラー、冬の童話に比べると、参戦作品少ない……よね!
ま、秋の歴史も参戦作品少なかった記憶がありますがががが。
ミステリ自体は、エンタメのジャンルとしてそれなり以上に人気じゃないですか。
某身体は子供な探偵とか、じっちゃんの名にかける人とか鉄板ですし、ドラマで言えば毎シーズンなにかしら警察物はあるわけで。
人気なのに、なろうでは書く人が少ない。やっぱりミステリ=凄いトリック、というイメージがあると思うんですよね。
典型的には密室殺人事件。
あとまあ、ミステリ書ける人は公募に行くのかなという気もします。
トリックなり謎解きの新奇性が大事なジャンルなので、ガチ勢はネットで習作出すのは嫌がるんじゃないかな……知らんけど。
でも、なろう異世界恋愛の世界観で書いてみて思ったのが、めちゃくちゃミステリと相性がよい!のです。
なろう公式は推理ジャンルを「事件などを推理し、謎解きを行う過程を主体とした小説」と定義しているんですが、以下の3要件が必要だと思うんですね。
1)謎がある
※典型的には殺人など未解決犯罪ですが、北村薫など日常の謎系作家もたくさんいるので、暴力沙汰なんて書けない…という方でもOK!
2)唯一無二の正解がある
※中井英夫『虚無への供物』とか小栗虫太郎『黒死館殺人事件』とか、短編で何回どんでん返しできるかRTAした山田風太郎「厨子家の悪霊」とか、複数の推理が展開される作品もありますが、最終的には一つの解に収束しないといけません。ま、『黒死館』は別解が成立するとずっと思ってますが。
※オカルトオチ、ミステリオチの両輪で書いてる有名作品もありますが、アレはやっぱり例外だと思う
3)謎解きの前に、読者が推理できるだけ材料が出ている(=フェアである)
※後出しで証拠が出てくるのは、アウトです
と、考えると、ミステリを書くのはやっぱハードル高いなってなるのですが……
異世界恋愛世界観て、かなり書きやすいのです。
1)警察の介入を排除しやすい
現代日本が舞台でも、いわゆる「嵐の山荘」(人里離れた別荘などで完結)なら警察が介入できないですけれど、逆に言うと町中とか不特定多数が出入りする舞台だったら、警察のことを考えないといけないし、出すのならそれっぽく動かさないといけません。
となると、色々色々大変なことになるわけです。
んが、異世界恋愛世界観だと、普通に王族とか大貴族が中心なので、そもそも警察沙汰にしない展開で書くことができます。
その分、設定の自由度が上がります。
ぶっちゃけ楽!
じゃあ歴史物で行けばええやんけって言うと、歴史物でミステリってめちゃくちゃ難しくて、明治時代の日本とか19世紀のヨーロッパを舞台にすると、いつどの技術が一般的に用いられるようになったのかいちいち調べなあかんのです……
指紋の鑑定が捜査に使われるようになったのはいつだとか、ルミノール反応とかいつ発見されたんだろとかいちいちいちいちやらないといけない。
さらに、うっかり電信技術が普及していない時代とかにしてしまうと、事件の解決に必要な問い合わせも、早馬でやるしかないってこと??ってなってしまいます。
そのあたり、異世界恋愛世界観だと、魔法アリのことが多いので、適宜魔法で毒物を鑑定しました!とか魔法通信網的ななにかで問い合わせました!でOK。
要は、社会のあり方や技術レベルをいじれる幅が広い。
もちろん、「この世界では魔法で○○できますが△△はできません」等、登場人物のやりとりなどで適宜説明は挟むべきですが。
秋月忍先生の「魔眼の宮廷魔術師は眼鏡を外し、謎解きを嗜む」(https://ncode.syosetu.com/n0901hj/)が魔法による犯罪の捜査を丁寧に描いていらっしゃるので、ぜひ参考にしていただければと思います(ダイマ)。
2)人間関係がドロドロしがちなジャンルなので、そのまま誰かが誰かを殺し、謎を誰かが解けばもうミステリだ!!
凄い雑な言い方ですが……
現代ラブコメとかでも、もちろんミステリはできますけど、異世界恋愛って基本ドロドロしがちじゃないですか。
そんで、権力を濫用して投獄とか処刑とか、発生しがちじゃないですか。
刃傷沙汰へのハードルが低い感じがあると思うんですよね。
古典的?な、頭の悪い王子+頭の悪い男爵令嬢vs.デキ過ぎ婚約者とか。
一時期猖獗を極めた、いわゆるクソ妹とか。
クソ妹に取って代わった感のある「君を愛せない」系とか。
とりあえず、古典的な婚約破棄の場面でいってみましょうか。
公爵令嬢と婚約しているポンコツ王太子がピンク髪の男爵令嬢を寵愛。
ないがしろにし続けた公爵令嬢についに婚約破棄を突きつける……という場面の前後で、
A.王太子&男爵令嬢が毒殺されてしまう
←当然疑われる公爵令嬢。だが王太子の取り巻きの宰相の息子が眼鏡をくいーっとさせながら、なんか真犯人をあぶり出す。
B.直前に控室で男爵令嬢が撲殺されている
←当然疑われる公爵令嬢。だが彼女には鉄壁のアリバイがががが(この場合、アリバイ崩しでも別に犯人がいるのでもOKです)
C.公爵令嬢がいきなりぶっ倒れて亡くなってしまう
←実は直前に細い刃物でどっかを貫かれており、内出血によって死亡したとわかる。当然疑われる男爵令嬢。しかし凶器が見当たらず、なんでや…なんでや…ということに。だが王太子の取り巻きの宰相の息子が眼鏡をくいーっとさせながら、なんか真犯人をあぶり出す。
一部コピペでお送りしてしまいましたが、まぁまぁそういう展開に繋げやすくないですか?
これがクソ妹物だと、例によって例のごとくなアノ展開に、
・クソ妹が死体で発見
・ドアマット姉が死体で発見
・姉の元婚約者が死体で発見
・クソ父が死体で発見
・クソ義母が死体で発見
・ドアマット姉の唯一の味方の侍女とか執事が死体で発見
とかとか適宜のっければよいのです(真顔)。
ほら、なんとかなりそうじゃないですか!!!
ちなみに、三作書いただけの素人がコツ的なことを偉そうに言うのはアレですが、
・凄いトリックを考えようとすると詰むので、トリックにはこだわらない
※トリックは降ってくるものです……ほんと……そして降らなくてもミステリは書ける!!
・混乱した状況(=謎)を先にイメージし、どうしてそんな状況が生まれたのか設定をさかのぼって考え、第三者が解けるように手がかり(伏線)を埋め込んでいく
で、わりとなんとかなります。たぶん。
それにしても、ミステリは子供の頃からずっと好きでしたが、自分が書けると思ったことは一度もなかったんですよね。
なのに、去年、ふらっと異世界恋愛世界観でやってみたら一応できてしまったのです。
もしかしたら、異世界恋愛世界観はミステリが書きやすいのかも!? しかもミステリも異世界恋愛も好きな私としてはひゃっほい! でもそういう作品があんまりないぞー!(ファンタジー&ミステリ作品をよくお書きになっているコーチャー先生はどっちかというとハイファンだし…)ということで、こんなエッセイまで書いてしまいました。
もしお書きになりましたら、ぜひ「異世界恋愛ミステリ」とタグをつけていただけるとめっちゃ嬉しいです!
今のところ、私しか使ってないタグですががががが……と書いていたら、速攻タグつけていただいてありがとうございます!!(号泣)
※広告下に、「異世界恋愛ミステリ」での検索結果へのリンクを張らせていただきました!
いずれにしても、「春の推理2023」は5/11(木)まで。
間にGWありますし、今から構想を練っても十分間に合いますので、ぜひ!前向きに!ご検討いただけましたら幸いです!!!
ちなみにタイトルは山田風太郎『誰にもできる殺人』をもじらせていただきました!