98 収穫祭と刀剣品評会
感想、誤字報告いつもありがとうございます。
(1537 秋 14歳)
秋には土佐国内のあちこちで祭が行われる。
土佐内にある寺社の領地のほとんどは寺社奉行が管理運営している。
寺社奉行が管理するようになってから米作りに向いていない土地では
他の作物が植えられるようになった。
稗や粟、小麦や蕎麦のような穀物だったり、綿花や大豆などの商品作物。
山々ではコウゾやミツマタなどの紙の原料やハゼノキなどの植林も進んでいるし、
柑橘類や柿や梅なども増えている。
寺社には作物ではなく銭が納められ、他で作られた米を購入してもらう。
紙・酒・塩など寺社にとっての必需品も安定供給されるので
ほとんどの寺社は奉行所に管理をまかせている。
寺社間の争いごとも奉行所で取り仕切るので寺社が僧兵を持つこともないし、認めもしない。
僧兵を持つ管理費もかからないし、領地の生産性は格段に上昇しているので
寺社にとって傘下におさまらない理由がないのだ。
管理下に入った寺社の修復や鐘などの寄進も積極的に行っている。
門前町もにぎわい、祭りも大きくなっている。
傀儡師が巡業しているし、猿楽や神楽も行われる。
大きな神社には土俵も作っており、相撲大会も盛んだ。
足軽衆から力自慢を選抜し、奉納相撲の巡業までしている。
土佐にいる間はなるべく国中に顔を出しておきたいから東奔西走と忙しい。
とはいえ大きなイベントは中村発信となる。今年の目玉は刀の品評会だった。
刀工の工房が集まっているのは土佐中央部なのだが、品評会は中村御所で行う。
各工房がそれぞれ無銘の自信作を1品ずつ出品する。
出品者はそれぞれ1票を自分の作品以外に投票し、
一条家からは祖父房家が1票を投票、金賞と銀賞を表彰する。
それぞれ秘匿する技術はあるだろうが、技術交流の後押しをする。
清酒の品評会は何年も前から行ってきた。清酒の作り方の出所は1つ。
中村から一条家の統治下の各地の酒蔵に伝えられていった。
製法は厳重に秘匿させているが、他国に漏れるのは半ばあきらめている。
それよりも質を向上させることに力を注いだ。
酒蔵ごとに試行錯誤し、お互いに切磋琢磨させる。
品評会を機会として、技術交流、情報の公開と共有の意識を持たせた。
鍛冶工房にも同じように技術を秘匿するのではなく
より発展させていくように考えを持ってもらいたかった。
京の半分以上が焼け落ち、鍛冶にたずさわる者の多くが亡くなったり、
離散することになった。失伝してしまったノウハウや技術もあっただろう。
新天地だからこそ、古い因習にとらわれない取り組みに向き合ってもらう。
品評後に作品は返却され銘を打たれることになる。
献上はさせない。賞状と名誉だけ与える。
今年の金賞受賞は京から下向してきた来派の庶流だった。
気に入った無骨な刀を作った工房は表彰はされなかったが、個人的に一振り注文した。
まだ成長途中の自身の体にあわせて長さや重さを細かく指定した
完全なオーダーメイド品だ。切れ味より耐久性を重視した。
刃先より鍔よりに重心をとらせた。攻めより守るための刀。
戦場で刀を振るうことがないのが何よりだが鍛練だけは欠かさないようにしている。
自分専用のモノというのは嬉しいもので、出来上がるのが楽しみだ。
面白いと思った方、
ブックマーク、ポイント、いいね、いただけると嬉しいです。




