97 ●松永久秀の土佐紀行
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(1537 夏 ●松永久秀視点)
千利休からもらった土佐へ向かう船の乗船札は霊験あらたかで、
航海中も丁重に扱ってもらえた。
浦戸港で下船した後の関所でも添え状のおかげでスムーズに通され、
馬まで用意され、浦戸城下にある来賓用の屋敷に案内された。
道中の風景は驚くべきものだった。
まず道が広くまっすぐに通っている。
都市計画をした上での整備が行われているのだ。
そして、田畑も四角い。四角に整地されているのだ。
そこには前世では当たり前だった等間隔にきれいに
揃って植えられた稲が広がっていた。
私も自分の領地で(正条植えを)試してみた。長慶様と合流してからも
いっしょに試行錯誤したのだが、失敗続きで断念した。
綺麗に揃えて植えるにも苦労したが、綺麗に揃えてもうまく育たない。
育ったとしても間隔が空いている分収量が少ない。
現場からの反発で続けることができなかったのだ。
畿内よりは南の土地柄か、既に大きく育っている稲が
眩しく美しく見えた。農民の顔も明るい気がした。
来賓用の屋敷には先客が何組かいた。ほとんどが先に中村御所に向かい、
あらためて浦戸城にいる一条房基に面会に来ていた。
武家だけでなく、京の公家や堺、博多の商家など様々な人が集まっていた。
数日待っている先客をさしおいて面会用の離れに案内された。
土足のまま案内されたのは驚くことに洋室で机と椅子が用意されていた。
出された麦茶は香ばしく、ひんやりとしたのど越しに
びっくりさせられた。南国土佐の夏でこの冷たい飲み物はどうやって?
いろいろと驚いていると一条房基が護衛と思われる武将と部屋に入ってくる。
長慶様と同じ年頃の14か15の若い男だった。
「初めまして、一条房基です」
「初めまして、松永久秀でございます」
「人払いは許してもらえませんでした。いろいろと言葉にできぬ会談になるでしょうからここからは全て筆談ですすめますが、よろしいですか?」
武器を預けたとはいえ、大人と子供、相手は一国の当主。当然の措置だろう。
「異存ありません」
「聞きたいことがたくさんおありでしょう。お手数ですが、書いた紙を箱に入れ隣のものに渡してください。口頭で答えられない問いには、紙に書いて返します。読んだ紙はすぐに側仕えのものが火鉢で燃やします」
双方の前に筆と紙が用意された。
(あなたは誰ですか?)
(答える必要を感じません。前のあなたより今のあなたの人生のほうが長いでしょう。私は一条房基です)
(何故、一条房基を選んだのですか?)
(選択肢は少なかった。外国との交易拠点として優良な場所として土佐を選びました)
(天下統一するおつもりですか?)
(一代で統一できるほど甘く考えてはいません。領地拡大した基盤を元として他の転生者と協力して戦乱をおさめる道を探るつもりでいます)
(他の転生者と接触できていますか?)
(今は利休だけです。信長は今年3歳になったばかり。信玄は16、義元は18、当主ですらない。距離が離れている上に、縁がないので接触は難しい。松永久秀が選ばれた後、私が一条房基を選ぶまでに選ばれたのは真田昌幸と島津義久でした)
これは貴重な情報だ。真田と島津ならばどちらも畿内には影響なさそうだ。
(これからどうなって行くと思いますか?)
(信長を中心とした集団の動き次第でしょう。協力して大きくなるか、潰しあうかによってこちらも出方を考えることになるでしょう)
(協力しあえるでしょうか?)
(その可能性は高いでしょう。転生者同士と知った上では殺しあえないでしょう。たぶん桶狭間も川中島も本能寺も起こらないと思います)
(私たちこれからどうすればよいでしょう)
「私たちとは三好長慶様と松永様ですか?」
「はい、そうです」
(当面、戦い続けるしかないのでは?。たぶんあまり深く考えずに選択したのでしょうが史実通りに版図を広げるのは難しいと思います。協力はできますが、すぐに共闘はできません。逆に質問させてください。何故、三好長慶と松永久秀を選んだのですか?)
(私は戦国の三梟雄というワードに惹かれて。旧友の信長に殺されることがなければ長生きできるかな、と。三好長慶は1550年時点での勢力地図の連想から選んだそうです)
(三梟雄は三大謀将よりはマシでしょうが。この先苦労しそうですね)
(当面は細川晴元と三好政長を潰して摂津の制圧が目標ですね)
(細川晴元の力を削ぐには協力できるかもしれません)
「どうするんですか?」
(晴元は山城・摂津・丹波・讃岐・土佐の守護ですが、土佐は一条家が統一し、朝廷からは土佐権守をいただきました。讃岐もおさえてしまえば、更に権威と資金を減らせます。長慶様と同盟を結ばせてもらえれば讃岐侵攻することができます。持ち帰って相談してみてください)
(なるほど、阿土同盟ですか。一考の余地がありますね)
「さて、他の面会者と話がしたい。他に聞きたいことがあれば手紙を送ってください。堺の土佐商人の拠点か、京にある土佐一条の屋敷に届けてくれればよいです」
「忙しい中、今日はありがとうございました」
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