94 ●一条雪の京紀行
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(1536 秋 ●一条雪視点)
房基様が従四位上になられて昨年に引き続き上洛が決まった折、
土佐で寂しく待つのではなく一度は京へ行ってみたかろうとおっしゃられて
嬉しいことに連れて行ってくださることになりました。
房基様はお優しい方でございます。
豊後から土佐に嫁いで以来の船旅は楽しい旅でした。
前回は船に酔ってつらかったことしか覚えていませんでした。
堺からは男装束に着替えて、馬に乗って京まで向かいました。
土佐では房基様がよく町に連れ出してくれます。
馬にも乗せてくれました。私専用の小さな馬もいて馬に乗る練習をしていました。
さすがに旅の間は大きな馬で家臣との2人乗りです。
馬に乗ったときはその高さで見る景色で世界が変わります。
土佐に嫁いでたくさんの景色を見ることができたのです。雪は幸せ者です。
土佐に来てから民百姓がどのような暮らしをしているのか皆が教えてくれます。
民百姓あってこそ日々つつがなく過ごせるのだと言われます。
普段食べているものがどれほど苦労して作られるのか知ることで毎日の食事も
感謝していただくことの本当の意味を知ることができたと思います。
京はとても大きな町でした。でもあちらこちらが焼け落ちており
人々の顔は暗くやつれて見えました。京は戦で万を超える死者が出たと言います。
土佐の青い海と空と川が無性に恋しくなりました。
側仕えをしてくれている絹は20年以上も京から離れていました。
今の荒廃の様子を見て毎晩泣いて過ごしていました。
房基様にお話をすると、親族でなくとも知り合いが希望するならば
土佐に呼び寄せる手配をしていただけることになりました。
礼儀作法やしきたりを知る人材は何人いてもよい、
土佐に来るまでの旅の費用も出してくださると言ってくれました。
その日以来、絹は元気を取り戻し、地縁のある者を探し歩きに
外へ出かけるようになりました。
京に着くと義母である玉姫様に久々にお会い出来ました。
房基様が昇殿されたり、他の家へ挨拶に行かれている間は玉姫様に案内されて
他の家が所有されている源氏絵巻を見せてもらいに行きました。
このことだけでも京に来てよかったと思えました。
京の滞在はとても短い期間でした。
京から堺に移動。海の匂いに少しだけ気持ちが落ち着きました。
房基様が堺商人たちとの会合に忙しくされていた合間には
田中与四郎という若い男性に茶の湯の指南をしていただきました。
同年代のはずですが、不思議な雰囲気を持つ方でした。
土佐に来てから玉姫様と房基様の勧めもあって日記を書き始めています。
土左日記(紀貫之)、枕草子(清少納言)、源氏物語(紫式部)のように
いつか私の書いた文章を後の世の人が読んでくれるでしょうか。
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