84 修験者たち
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(1535 春 12歳)
その日は変わった来客があった。
本山茂宗が連れてきたのは3人の修験者達で
それぞれ違ういでたちであるが山伏の格好をしていた。
薄汚れた格好な上、帯刀したまま控えていた。
上座に座ろうと移動している途中から異臭がただよってきた。
そのまま踵を返して部屋を出ようとすると声がかかった。
「待たれよっ!」
振り返ると一人が立ち上がってこちらをにらみつけていた。
『出直して参れ』
それだけ言うと部屋を出た。
まだ何か叫んでいたが、君子危うきに近寄らず、だ。
執務している部屋で仕事をしていると本山茂宗がやってきた。
「殿、会ってくださらぬか」
『あれは誰で、わしに何の用だ?』
「土佐の山々で修行している修験者たちを代表してきたそうだ。
本山の地でもたびたび会ったことがある。真面目な者たちだ。
殿にお願いしたい儀があるそうだ」
『書面で提出させろ。会うつもりはない』
「何を怒っていらっしゃる」
『礼儀をわきまえぬ者に会う暇などない』
「いや、ああ見えて礼儀正しい者たちだ」
『茂宗、慣れてしまって麻痺しておるな。増長させてもロクなことにならんぞ』
「麻痺しておりますか?」
『汚れた格好のまま上がりこみ、帯刀したままだ。会ってほしければ石鹸で頭の先からつま先まで洗いあげてから武器を外させてからにしろ』
翌日、さっぱりした顔の2人が座っていた。
『少し身ぎれいになったな。もう1人はどうした』
「そのままでいたいと外で待っております。私どもも修行のやり直しです」
『汚れを落としたくらいでやり直すくらいならやるだけ無駄だと思うがな』
もう一人が憤る
「何をぬかすか小僧が」
『小僧がさえずったくらいで憤るなど修行が足らぬのではないか? さっさと用向きを話すがよい』
「その方が一条家当主房基殿か?」
『他に誰だと思ってここにいるのだ。それに人に名を問うならば、先に自分の名を申せ』
「目上の者への礼儀のなっていない小僧だな。某、近松行重と申す。隣にいるのは赤植重賢。本山からさらってきたものどもを家に返していただきたい」
『ふむ、面白い願いだな。ふむ、・・・・考えておこう。話はそれだけか?』
「それだけだ」
『では帰るがよい。茂宗、丁重にお送りしろ』
「わしらの願いのどこかおかしかったか?」
『答える必要があるのか?』
「遠路はるばる来たのだ、答えていただきたい」
『遠路はるばる来たのはそちらの都合だ。理由にならぬ。茂宗に聞くとよかろう』
「殿、どうか答えてやってくだされ」
『全く、面倒ごとを押し付けおって。世間と隔絶された生活を送ると見る目が狭まるものだと感心したから面白いと申した。本山から人をさらってなどいない。本山から新しいことを学ばせるために呼び寄せた者どもはいる。また学んだ上で、こちらで暮らしたいと移ってきた者どももいる。茂宗、農民合宿所を案内してやれ』
それから数日後、3人の坊主が目の前に平伏していた。
『一条房基だ。3人目の名前は何と申す』
「潮田高教でございます」
『誤解が解けたようだな』
「何も見えておりませなんだ。本山様が臣従されたのも当然のこと。宗派を問わず、多くの寺社の修復や仏像の寄進まで行われているのも見てきました。房基様は何を信心されていらっしゃるのですか?」
『(転生したのだから)目には見えぬが高き存在がいることは[知って]いる。だがそれは人を助けてはくれぬ。その方たちもわかっておろう。人を助けることができるのは人だけだ』
「我らはまだそこまで考えが辿りつけておりませぬ」
『だが人を導くことはできよう。人は弱い。何かにすがりたいのは止められはせぬ。どうか多くの民を支えるがよい。だが民をそそのかすことは許さぬ』
「われらは房基様にお味方しましょう。土佐にあだなす者がいれば必ずお知らせいたしましょう」
『ありがたい話だが、人と人の争いに近づきすぎず今後とも山にこもって修行に励むがよい』
熊野ほどではないが、四国内にも石鎚山、剣山などの山中に多数の修験者たちがいる。10人いれば10の行動原理や考え方を持つ。取り込もうとすれば反発するだけ。為政者にとっては敵対勢力にさえならなければよしとするしかない存在だ。
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