81 ●吉田宗忠
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(1535 2月 ●吉田宗忠視点)
土佐一条の房冬様が京に住まわれるようになったと伝わってきた。
ご挨拶に伺わねばと考えていると先方から先に挨拶にみえられた。
公家のほうから会いに来るなど通常なら金の無心であるが
土佐一条に限ってそれはありえない。
「いくつか願うことがあったゆえ、こちらから来させていただいた」
「私どもでできることであれば何なりとお申し付けくださいませ」
「早速いくつかの書を土佐に送ってくれたことにまずは感謝しておこう。
引き続き医術薬術に関する書の写しがあれば送って欲しい」
「こちらのほうこそ明の医術書をお借りできたこと感謝しております」
「房基と話をしたことがあるその方には取り繕わぬ。
まずは房基については外では話をそらして欲しい。
土佐一条は房基が引き継いではいるが、表向きは
土佐は父房家、京はわし房冬が取り仕切っているとせよ。
房基には敵が多い。房基を狙われると土佐が揺らぐ
土佐が揺らげば日の本が揺らぐと思うておる」
「他言しないことお誓いいたします」
「次に、土佐一条では3隻目の唐船を作らせる予定だ。
1隻目は堺の納屋に、間もなくできあがる2隻目は天王寺屋にまかせる。
次の3隻目は角倉家にまかせたい」
「わたしどもが唐船をですかっ!」
「もちろん船員の手配や運用については納屋や天王寺屋に
教えてもらわねばならぬだろうし、堺港に蔵も用意する必要があるだろう。
金もかかる。堺衆からの反発もあるだろう。受ける覚悟があるかどうかを聞きにきた」
「喜んで承らせていただきます。ですが何故私どもに」
「本当にわからぬか?」
「わかりませぬ」
「外の国との交易は危険がともなう。船が沈めば店も沈む。
1つの店に集約すれば儲けも多いが危険も高まる。
複数の店に分散させれば危険も分散できる。
互いに切磋琢磨して高めあうこともできる。
自然の危険の次に武家の危険がある。
堺が攻め落とされたらどうなる?
堺が燃えてしまうことはないといえようか?。
堺の他で外の国との交易ができる商家となると博多か京だ。
博多は大内と大友に近すぎる。京であれば敦賀港も使える。
わしらは商人ではない。儲けは二の次だからこそ分散できる」
「もっともでございます」
「どこにまかせるにせよ、しばらくは堺衆との共同運営だ。
角倉家であれば医術や技術を積極的に取り組んでくれるだろうとの見立てゆえだな。
資金が足りねば融資もしよう」
「これも房基様のお考えでしょうか」
「あれは何故かその方を見込んでおった。
3隻目は土佐の廻船問屋に任せる話もあったが京には一流の品が集まる。
角倉家は一流の目利きであろうと言っておった」
「房基様こそ一流の目利きでございます」
「できた息子よ。これからも房基を支えてくれ。
危険に飛び込みこの話を受けてくれたその方に褒美がある。
清酒の製法を伝える。信頼できる者を土佐に送れ」
「・・・・参りました。ここまでされては末代までかかっても
土佐一条家に恩を返しきれそうもありません」
「まぁ、儲けるのもほどほどにせよ。
米が不作の年は酒づくりも減らすのを忘れるな。
今年から山城にある一条の領地は土佐と同じ米づくりを始めていく。
高く買ってくれるとこちらも助かる」
「私どもはどのようにしてこの御恩に報いることができましょうや」
「土佐には医員が足らぬ。医員を送って欲しい。
あれは土佐で医員を育てる学校をつくるつもりらしい。教え導く者が必要だ。
土佐一条家に恩を返さなくてよい。
土佐の民に、京の民に返してくれ、それが一番喜ばしい」
にこやかに笑うその笑顔に房基様の笑顔が重なった。
土佐一条家、公家でなく、武家でない、不思議な一族である。
医術関連でツバをつけてみた吉田宗忠は角倉家でした。
角倉家は後の「京の三長者」のひとつ。
ここで一足早くひとつ頭抜けた商家になってもらいます。
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