42 ●甲賀忍者
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(1531 秋 ●鈴鹿小六視点)
堺衆から土佐一条家が忍者を召し抱えたがっていると聞き
土佐までやってきた。
堺で天王寺屋、魚屋、納屋と面会後、
天王寺屋とともに土佐中村までやってきた。
堺衆の中でも複数の大店から面接され、
天王寺屋当主自らが土佐まで案内するなど
土佐一条家はずいぶん大きな取引相手のようだ。
土佐中村に着き、案内された屋敷で待っていたのは
烏帽子、狩衣が妙に似合っている子供だった。
『一条房基だ。天王寺屋、遠路はるばるご苦労だった。
納屋の船が着いたというから鎧兜が届いたと思っていたが
その方がくるとは驚きだ。
今回は甲賀から人を案内してきたときいたがそちらの御仁か?』
「一度、中村御所を直に見ておきとうございました。
噂通りの活気のある街でございますな。
どの様式の鎧がよいのか決めていただきたくて
30ほどの鎧兜を運んで参りました。
これらは見本ですので無償で提供させていただきます。
次に警備警護の人材として甲賀の大身、山中家より推挙された
ものを連れて参りました。」
「鈴鹿小六と申します。」
『鈴鹿とは聞かぬ家名よな。』
「こちら六角高頼様より先代がいただいた感状でございます。」
懐から感状を取り出し、近侍のものに渡す。
一条房基は受け取ると目の前に広げてじっと見つめる。
『誰か、急ぎ、飛鳥井を呼んで参れ。』
そう言うと今度はこちらの顔をじっと見てくる。
『何故この遠い土佐まで来ることにしたのだ?』
「山中家の分家筋でございます。戦続きで若輩の某が当主に
なりましたが、戦働きのできるものが少なくなり申した。
このままでは家が保てぬと思うておったところ、今回の話がありました。
警備警護の役目をしつつ、力を蓄えよと本家から推挙いただきました。」
『この中村に着いてみてどう思うた?』
「驚くことばかりでございました。まず港のにぎわい、
綺麗に整えられた街並み、実り多き田畑。
何より多くの民百姓が笑っておったのが驚きでした。」
そんな問答をしているうちに狩衣を着た公家のような年老いた男がやってきた。
『飛鳥井、急に呼び立てて悪いな。ちとこの書状について
意見が聞きたかったのだ。目を通してくれぬか。』
そういうと感状をその男に渡す。
『鈴鹿よ、気を悪くさせてすまぬ。一族まるごと召し抱えるには
それなりに注意が必要だとわかって欲しい。』
(一族まるごと?召し抱える?、感状に不審なところがあったのか?)
「若、どこで気づかれましたか?」
『紙が良すぎる。たぶん越前和紙。それに書が綺麗すぎる。
六角殿が甲賀衆に出したとするとおそらく30年以上前のこと
書いた感状は20以上はあったはず。
感状の真偽を疑うなど突飛すぎる。
最初から疑わぬ限りばれるはずもない。』
「さすがにございます。おっしゃる通り、仕事が一流すぎましたな。」
『教えてくれるものが優秀だからな。ご苦労だった下がってよい。』
「偽物なのですかっ!」
「そんなはずはござらん!。
家宝として先代より譲り受けたものでございますっ!」
『鈴鹿小六という名も本物かどうかな。
津田、顔をつぶされたと思うな、これが乱破よ。
商人でも売り込むためなら多少の嘘をつくであろう。』
『さて小六、疑った状態のままではあるが、こちらとしては
一族まるごと召し抱えるつもりでいる。女子供から老人、
戦働きができなくなったものまで全てだ。
土佐にくるまでの費えも渡す。戸数を教えてもらえば
こちらにくるまでに家と土地も用意しておこう。』
「・・・何故に疑ったまま召し抱えるのですか。それに
ここまで愚弄されてこちらが仕えるとお思いか?」
『愚弄したつもりはない。何より言い分を全て信じて受け入れる
ような馬鹿な主に仕えたくはあるまい。
甲賀衆の紐つきで、いくらかの秘密が漏れるのは最初から覚悟の
上での話だ。
「鈴鹿」よい名だと思った。鈴鹿山への忘れぬ想いが感じられる。
「小六」深い名だと思った。六角が嫌いゆえに小さい六なのか?
こちらが勝手にそう思っただけだがな。
戦、戦ですりつぶされて家が保てなくなりそうだというのは
本音に思えたのだ。
相手に信じさせるには少しの本当を混ぜる。その本当がそこに
あるように思えたのだ。
逆に問おう、私はその方らが仕えるに足る器を持っているか?』
「・・・・・誠に、8歳ですか?
山中本家の先代と話しているようでございます。
真の主に出会えた思いです。
「鈴鹿小六」房基様にお仕えさせていただきとうございます。
よろしくお願い申し上げます。」
『こちらこそよろしく頼む。
早速だが、急ぎ甲賀へ戻り、一族皆の移住の段取りをつけよ。
こちらの状況を逐次手紙で送らせるために
字の読み書きができるものを一人残して行け。
同じ土佐の民になるのだ。隠すことはない。』
『津田。堺へ送る手紙を早くまとめあげて鈴鹿に渡せ。』
「堺への手紙ですか?」
『せっかく土佐まで来てくれたが、ゆっくりさせるつもりはない。
大内家に紹介状を書く。周防に寄って、瀬戸内航路で堺へ戻れ。
土佐よりも周防のほうが発展している。
周防経由で商売の手を広げてこい。
お主にとってはそれが何よりの褒美であろう。』
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