38 堺再び
感想、誤字報告いつもありがとうございます。
(1531 1月 8歳)
京を離れ、堺から太平洋ルートで土佐へ帰る。
堺には土佐商人のための新しい拠点ができていた。
今度の拠点には私や母のための客間もあった。
後発の土佐からの荷物も届いていた。
天王寺屋、ととや、利休とともに納屋が訪ねてきた。
納屋「初めまして、納屋宗次と申します。
天王寺屋やととやの様子がおかしいので
見極めに参りました。」
『一条房基です。皆がたぶらかされているとお思いでしょうか?』
納屋「摂関家にかかわることなどありませぬゆえ、舞い上がっているのでは
ないかと心配しております。」
『遠い田舎の童が精一杯背伸びして商いのまね事をしているのに
つきあってもらっているだけですよ。』
納屋「この度は鎧兜がご所望とのことですが、おいくつくらい必要でしょう?」
『大きいものが20、中くらいのものが60、小さいものが20の割合で
100ほど用立ててもらいたい。』
納屋「100だけですか。」
『品質に満足できれば追加で500。
その後は大きさの割合を細かく変更して400で合計1000。
最終的には3000は頼むことになると考えていてくれ。』
納屋「3000」
『代金は1000までは全額前払いさせてもらう。天王寺屋、大丈夫だな。』
津田「10000でも大丈夫でございます。納屋さん、買掛したままの銭が
うなるほどあります。お売りしたくても買っていただけるもの
がなかなかないのですよ。房基様は目利きゆえに
私が用意する鎧兜ではなく、専門である納屋さんを紹介させて
もらうしかなかったほどですから。」
『目利きか、うれしいことを言ってくれるなぁ。目利き、目利きか。
そうだ面白いことを思いついた、ちょっと待っていてくれ。』
そういうと、少し席をはずして、アレコレ準備をして戻ってきた。
『待たせたな。せっかく堺の名だたる商人たちが揃ってくれたから
面白いことをさせてもらう。
ここに茶碗を10ほど用意させた。与四郎、4つ選べ。
他の3人も手に取ってみてもらってよいぞ。』
豪商たちそれぞれに茶の湯もかじっている。
おそるおそるそれぞれの茶碗の値踏みを始めた。
利休は更に難しい顔をしてそれらしく鑑定をしていた。
しばらくして皆が元の位置に座り直した。
『与四郎、よかったと思う順に4つ並べてみよ。』
利休が4つの茶碗を並べる。
『なるほど、さすが与四郎だ。目利きは確かだと思う。
・・・ただし1番目はまだ時代を先取りし過ぎではないか?』
利休「確かに黒はまだ早かったかもしれません。これは4番目としましょう。」
『さて、京で三条西実隆様に与四郎の師匠を紹介していただくよう
お願いをした。武野紹鴎様に声をかけていただくことになった。
お忙しい方のようで次に実隆様にお会いに来られた時に話をし、
それからとなると2,3年先になるかもしれないが待って欲しい。
1番目の茶碗は依頼料として武野紹鴎様に差し上げてくれ。
2番目の茶碗は天王寺屋
3番目の茶碗は納屋
4番目の黒は魚屋がそれぞれ受け取ってくれ。
もし他の茶碗で、こちらのほうが、というものがあれば替えてくれてよい。』
そういうとそれぞれが礼をのべた。
天王寺屋「ありがとうございます。武野紹鴎様に来ていただけるのならば
ぜひ私も教えていただきたいと思います。
魚屋「ありがとうございます。まさか三条西卿にお願いしていただける
なんてお礼のしようもございません。与四郎は幸せ者でございます。」
納屋「ありがとうございます。これ1つで蔵が立ちます。
何故これほどのものを下げわたしていただけるので?」
『ただより高いものはない、という。これは投資だよ。
それにこれで3人は商売敵ではなく、茶の湯仲間になった。
仲間なら協力しあうのに理由などつけなくて済むだろう?』
納屋「参りました。皆が惚れるわけです。どうか末永いおつきあいを
お願いいたします。」
『納屋、実はその方の茶碗は京を離れるときに実隆様がくださった品だ。
箱書きも書いて銘もつけてくださった。蔵でなく城が立つ品よ。
他の2人の茶碗も同じかそれ以上の品だと見ている。大事にしてくれ。
とはいえ、使ってこその器だから、しまい込まずに使ってくれると嬉しい。』
納屋「家宝とさせていただきます。」
『さて3人には投資の見返りとして頼みたいことがある。
伊賀者、甲賀者のような乱破、透破働きをしてくれるものを探しておる。
きちんと禄を払って召し抱えたい。
知っての通り、清酒・椎茸・扇風機など秘匿したい技術が多い。
警備・警護をまかせられる集団が欲しいのだ。
3人の伝手を使って声をかけて欲しい。
土佐までの往復の費えは用意するので、
その方らの紹介状をもたせて土佐中村まで送って欲しい。頼んだぞ。』
天王寺屋の息子は津田宗久、納屋のもとにはこの後、今井宗久が身を寄せ
武野紹鴎の娘と結婚します。千利休とあわせて天下三宗匠といわれる
3人の実家が揃いました。
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