18 手動扇風機と麦茶
(1526 夏 3歳)
祖父が上洛した。
天皇が亡くなり、新しい天皇が即位するともなると自粛ムードもあって
小競り合い程度の戦さえも少なくなるそうだ。
京からの知らせは頻繁に届く。
頻繁とは言っても5~10日はかかるし、危険も費用も高い。
力のある家だからこそ情報が集まる。
また念のため複数のルートを使うから
同じ内容の知らせが届くこともあり、時系列の確認が必要。
情報を得るために周辺の国人などの有力者達の来訪が増える。
父房冬に願い、控えの間で家老格の安並か土居といっしょに話を聞き、
情勢や国人の力関係の説明をしてもらえるようにした。
夏に入って、じわじわと暑さにやられ始めたので
扇風機を開発。穀物を風力で選別する”唐箕”の構造の応用で
手まわしの扇風機をつくった。羽根の部分は団扇を使う。
父と母にプレゼントしたらとても喜んでくれた。
すぐに枕元で一晩中回し続ける係ができたらしい。
体を冷やしすぎるのはよくないから、と注意して、
寝ついたら止めるようにしてもらった。
まだ幼い弟のために梅の方にもプレゼントしておいた。
父はこの手動扇風機を来訪者との会談の席に持ち込んで
自慢ついでに購買力のありそうな相手には高く売りつけ始めていた。
夏といえば麦茶。
大麦は古来から栽培されていて、麦茶も麦湯として飲まれていた。
そこで非電化冷蔵庫を作らせた。
冷蔵庫というほど冷えるわけではない。
前世で、息子の夏休みの自由研究の手伝いで覚えた仕組みだ。
水分が蒸発するときに熱をうばう仕組み、気化熱を利用したものだ。
大小2つの壺を用意し、大きい壺の中に小さい壺を入れる。
大きい壺と小さい壺の間に砂を入れる。
この砂にたっぷりの水をふくませる。
これだけのことで小さい壺の中がずいぶん冷やされるのだ。
これに手動扇風機の風を外からあてると更に効果がでる。
で、この小さな壺の中に麦茶を入れた容器を保管しておくのだ。
この冷蔵庫、時代的にオーバーテクノロジーな気がして
厳重な管理をさせた鍵のかかった部屋の中に設置している。
賓客へ冷えた麦茶をだすととても喜ばれる。
しばらくしてから気づいたが、
麦茶を入れた冷蔵庫の隣には清酒を入れた冷蔵庫が並ぶようになっていた。
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