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戦国クラス転生  作者: 月本 一
172/293

171 ●帰蝶出戻る

感想、誤字報告いつもありがとうございます。


次回更新は12/10(日)

(1547 ●蝶姫(12)視点)

 自身が性同一性障害かもしれないと悩み続けていた時に突然女性として生まれ変われるチャンスが与えられたとしたらどうだろう。それが女性に生きづらい時代だったとしてもだ。自身の知識では名前が特定できる女性は限られていた。選択したのは織田信長の正室である濃姫。有力武将の娘として生まれ、覇王信長の正室になった女性。秀吉や家康の正室よりは苦労は少ないはず。転生者同士ならば価値観も近い。史実では信長との間に子どもはいなかったはずなので、希望すれば仮面夫婦を認めてもらえるかもしれない。そんな打算があった。


 昨年になって急遽、土岐頼純と結婚することになってしまった。父斎藤利政(道三)が争っていた美濃国守護土岐頼芸と和議が成立。土岐頼芸が守護を退任し、守護を継ぐことになった甥の土岐頼純と斎藤利政の正室の子である私との婚姻が決まったのだった。11歳と23歳の政略結婚であった。


 同じ転生者同士である兄斎藤利尚(義龍)、従兄妹明智光秀に聞いてみたが、どちらも濃姫が土岐氏と結婚したという史実の記憶はないとのことだった。何かのきっかけで歴史が改変されつつあるのか、史実通りであり、離縁されて戻ってくるのかわからないとのことであった。周囲の目があって斎藤利尚と明智光秀には会う機会を作ることがなかなかできなかった。子ども同士だから仲良く、というわけにはいかず、それぞれこの時代の教養を学ばさせられる日々を過ごしていたのだった。


 結局、土岐頼純の住む大桑城へ輿入れした。土岐頼純は初潮もまだの女児と枕を並べるどころか同じ家に住むこともなかった。城内ではなく城下町で警護という名の監視付きの人質生活が始まった。稲葉山城から付き従ってついてきてくれたのは護衛としての武士と身の回りの世話をしてくれる女性がそれぞれ数名。皆、年寄りばかりで、再び争いが始まれば生きては帰れないと実感した。かといって悲壮感が漂うわけではなく、家から離れたことで逆に自由な時間が増えた。新生活では婚礼祝いとして堺の商人たちから贈られた温かい布団一式が嬉しかった。父道三は商いに明るく、美濃には多くの商人が出入りしていた。近年は堺や京の商人が多く来ていた。兄たちが言うには土佐の一条房基の手が伸びているとのことだった。


 京の商人からは琴と琵琶が贈られた。どちらも小さな子供サイズに作られたものだった。楽器とあわせて指導者もついてきた。京の公家である正親町家出身の年配の女性[はる]。その侍女として私より少し年上の女児[こはる]が姉弟子として紹介された。楽器の教育のための短期間での契約とのことで、費用は京の商人持ちとのことだった。指導は厳しかったけれど楽しくもあった。娯楽のない日々に彩りを添えてくれた。


 そんなある夜、[はる]に揺り起こされた。

「姫様、斎藤利政殿が攻めて来られたそうです。すぐに稲葉山城へ戻る支度をしてください」


『子どもの足で逃げ切れるとは思えません。覚悟はできています』


「明日には大桑城から迎えが来るでしょう。[こはる]に姫様の着物を着させます。姫様の代わりになってもらいます。供回りの侍女と私がまわりを固めていっしょに行けば上手くだませるでしょう」


『正体がバレればただでは済まないですよ』


「私たちはその覚悟ができています」


『すべて父の指図なのですか? あなたたちは忍びの者なのですか?』


「いいえ、斎藤殿の手の者であれば土岐殿に見破られていたでしょう。斎藤殿も知らないからこそ、琴や琵琶のことしか知らないからこそ側にいられたのです」


『覚悟ができている、とは、こうなると知っていたのですか?』


「万が一のための指示を受けていました。最悪の場合の説明も受けています。私たちが死ぬことになっても、私の実家も[こはる]の実家も多くの益を受けることになっています。それより時が惜しい。早く支度をしてくださいませ」


 結局、訳も分からず強引に押し切られて稲葉山城に戻ることになった。大桑城は落ち、夫である土岐頼純は討ち死にしたという。12歳にして未亡人となり、[帰蝶]と呼ばれるようになってしまった。接点がほとんどなかった夫の死はどうでもよかったが、戦が終わっても[はる]と[こはる]は行方知れずになったままであった。兄たちと話し合ってみると、京の商人や公家である正親町家へ影響力があるとなると、一条房基が何か手を打ったのではないかとのことであった。連絡するすべもなく腑に落ちないまま悶々とするしかないのであった。

幼かったため、婚約だけで婚礼はなかったのではないかと思っていますが、帰ってきた蝶の話としました。


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