15 弟の名は太郎
(1525 秋 3歳)
竹「万千代丸様、朝でございます。起きてくださいませ。」
3歳児の朝は早い。というよりも早くしてもらっている。
お天道様が出ている間にできることをやらねばならない。
朝寝はしたいし、昼寝もしたい。
幼児の活動時間は短いのだ。
電池が切れたようにフリーズして
気がついたら何時間も経っていることなんてザラなのだ。
簡単に体操をして身体をほぐす。
まだラジオ体操程度の動きも複雑でできないでいる。
朝食は質素なものだ。
小さな箸を作ってもらって
ゆっくりゆっくり食べる。
手指を動かすこと、アゴを使うことを意識する。
体と脳を発達させ、健康を意識している3歳児なのだ。
食後は書き物の時間。
これもまた小さな筆を用意させて
前世の知識をなるべく思い出して書き連ねておく。
解読しにくいように、ローマ字、カタカナ混じりの字を
楷書で横書きにし、ページ番号はアラビア数字を使う。
紙は高級品なのでふんだんに使えるように増産していきたい。
手漉き前後の工程の省力化にむけて製紙業についての
アイデアを早急にまとめておく必要がありそうだ。
書き物が一段落したら母のところへむかう。
2人で源氏物語などの一条家の蔵書を読み合わせる時間だ。
わからない言葉や読み取れない文字などは
母やじいさんである一条房家の弟であり
土居家の婿に入った宗珊をつかまえて聞く。
一条家の文化人レベルはとてつもなく高い。
部屋の前まで来たら声をかける。
『おはようございます、母上、入ってもよろしいでしょうか。』
母「お入りなさい」
中に入ると、赤子を抱いた女性がいた。
『はじめまして、万千代丸でございます。』
挨拶をすると
梅「もう、こんなにはっきりとお話しになられるのですね。』
母「梅の方は、そなたの弟、太郎の母君ですよ。」
(あぁ、この方が父の側室の一人、大内義興の娘か。
弟はまだ1歳くらいかな?)
梅「どうかこの子をなでてやっていただけませんか。
万千代丸様のかしこさにあやからせてくださいませ。」
『かわいらしい男の子ですね。遠慮なくさわらせてください。』
そう言って撫でさせてもらう。
梅の方は母よりも年上のようで。大人の女性の魅力にあふれた超美人。
弟は将来きっとすごい美形になりそうである。
血筋としても大内家の血をひく超サラブレッド。高額物件だ。
絶対、子供のときから可愛がって味方につけておきたい。
梅「この子にも御仏のご加護が授けられるとよいのですが」
そう言って、少し憂う表情も美しい梅の方に私は
『どのようにお聞きしたのか知りませぬが、
厳密にいえば私は加護をいただいたわけではないのです。
ただ、夢に現れて、知識を授けられただけ。
ここだけの話、呪いと言ってもよいかもしれません。
無理矢理大人びてしまって、3歳児としてはさかしらで、
可愛げがなくなって、母には申し訳ないくらいなのです。』
母「万千代丸はかわいらしいですよ。」
『ありがとうございます。
弟には梅の方様に普通に甘えて、
子供らしくのびのび育って欲しいと思います。』
梅「そうですね。そうかもしれませんね。」
『この先、子供らしからぬ私と何かと比べられてしまうでしょう。
今のうちに謝らせていただきます。申し訳ございません。
できうる限り守らさせていただきますので
何かありましたら遠慮なくお知らせください。』
母「そうですよ、兄弟仲良く、それが大事です。」
梅「ありがとうございます。ありがとうございます。」
突然の出会いであったが、梅の方も優しそうな方で、
母との関係も良好なようで、一安心だ。
大内義興
父一条房冬の側室の父。
周防・長門・石見・安芸・筑前・豊前・山城!の7ヶ国の守護となった
天下人に近かったひとり。
守護でもなく、土佐の1/3ほどしか領有していない土佐一条家に
7ヶ国守護の娘が側室として入っていたわけで、
土佐一条家の家格が別格であったといえます。
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