10 山の民
2022/01/10 年号・年齢を訂正
(1525 秋 3歳)
安並は家老格の一人であったが
家督を息子に譲り、相談役として各奉行を取りまとめる役についたばかりだった。
急遽、私の守役となった。
実は将棋好きで、事あるごとに指したがる爺さんだ。
領内のことや、一条家のことに精通しており、
将棋を打ちながらいろいろと聞かせてくれる話しはとても助かっている。
石見寺の大覚和尚も囲碁よりも将棋が好き、棋力はこちらのほうが少し上。
頻繁にこちらに通うわけにもいかないので、
僧兵を1人つけてもらうことにした。
私が本当に文殊菩薩様の知恵を授かっているのか確認するために
監視役としてどうか派遣してもらうようこちらから申し出た。
向こうとしては監視役というよりも、警護兼連絡係のつもりらしい。
僧兵の名は「不破正種」
安並も供回りとして親子2人を連れてきた「堀部金丸」と「堀部武庸」
ちなみに先日2人と指したのは「小将棋」
他に「中将棋」や「大将棋」もある。どちらかというと「中将棋」が盛ん。
「中将棋」は縦横12マスで、駒は21種類。本将棋にない駒は以下
横、堅、獅、馬、龍、奔、反、虎、麒、鳳、豹、銅、象など
ルールもちょっと複雑。持ち駒(手駒=取った駒)は使えない。
「将棋」と「小将棋」もまた違う。「小将棋」には「象」がいる。
今は、2人とは「中将棋」を指している。
とても新鮮で楽しい。ただ1局に時間がかかり過ぎるのが難点。
2面指しの後で大覚和尚にお願いしたのは護衛としての僧兵の派遣。
安並に頼んだのは”山の民”の紹介。
“山の民”とはサンカや山人など山中を移動して暮らす放浪民のことで
本州中心にいたとされる人々。山の中で狩猟採集して移動する遊牧民のような集団だ。
四国にはそれほどいないだろうが、四国は流刑地でもあり、
戦乱の時代でもあることから一定数いるのではないかと考えていた。
狩猟による肉(タンパク質)や脂、毛皮などの取引だけでなく
竹林の整備や炭焼き、椎茸栽培などで定住もしてもらいたい。
男性はまだしも、女性や子供、年寄りは定住できる場所が必要だ。
男性には遊撃部隊としての機動力も期待できる。
3歳児の姿で交渉するわけにもいかず
結局、大覚和尚と安並の2人を窓口として
四国南西部を周遊して暮らす山の民との交渉を整えてもらい
四万十川上流の一部に定住するエリアを設けてもらうことにした。
“山”と”里”のハザマに住む彼らに「間」の姓を名乗ってもらうことにした。
3箇所に分散したそれぞれの代表は「光延」、「光興」、「光風」という。
そんな彼らにまずしてもらうのは
山を切り開き、生活エリアの構築
切り出した木々はまずは建材として使用
その後、炭焼きと植林、竹林の整備
植林は、ミツマタ、楮、雁皮、ハゼノキを一定数確保してもらう。
炭は川を使って下流の中村へ流し、
米や麦と交換してもらい食生活の変革をしてもらう。
もちろん狩猟採取は続けてもらうが
肉は燻製肉を製作し、里との交易品とし、
骨や腱は膠(墨の原料)、脂身は石鹸の材料として確保していく。
開拓され生活エリアが構築されたら本格的に椎茸の原木栽培にとりかかる。
この時代、椎茸は超高級品。栽培方法が確立されていないため
前世のマツタケ以上だと思ってもらってよい。
椎茸の原木栽培が成功すれば莫大な利益を生むようになるだろう。
ただし、他の転生者が市場に投入するまでにどれだけ早く軌道にのせて
売り抜けるかが大事になるだろう。
ここまでの青写真を引いた。この先、機密を厳重に守る必要もある。
相談したのは安並のみ、寺社の力関係や交流範囲が不明なので
大覚和尚には事業の基礎ができて、商人との交渉を始めるまでは内緒だ。
とはいえ絵に描いた餅に過ぎない話である。
とりあえず、椎茸を試作して安並を目に見える形で納得させることにしよう。
もう少し時代が進むと「小将棋」は大きく変わります。
先手必勝・後手必勝の定跡が完成されたという説があり、
象がなくなり、現在の「本将棋」と同じ駒数に。
取った駒が再度使えるようになるのは更に先の話。
「不破正種」「堀部金丸」「堀部武庸」
「間光延」「間光興」「間光風」
名前を考えるのが面倒なので供回りは
忠臣蔵の四十七士から名前をお借りしていきます。
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