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健気令嬢の悪女訓練  作者: 淺葱ちま
1/4

私…なります!

そんな長くなる予定はないんですが、書きたいと思い書かせていただきました

「クリスさん」

「はい、何でしょう奥様?」


椅子に座り桃色の淡いドレスに身を包んだ彼女、カメリア・アドレーヌは、窓をじっと見つめて、付き人の執事クリスの名を呼んだ。


カメリアは、アドレーヌ家に嫁いではやいことでもう3ヶ月がたっていた。だが、この3ヶ月で、嫌と言うほどわかったことがある。


「実家から資金援助の連絡は、来ていませんよね…?」

「…奥様が気にかけることではありません。旦那様がよきように対応させて頂いております。」


微笑んで見てくれるクリスの顔を見て、カメリアは、泣き出しそうな気持ちをぐっとこらえて、クリスに向かい頭を下げた


「催促されてるんてますね…本当に…本当にうちの実家が申し訳ありません…!」



わかったこと、というかわかっていたことだが、これほどまでと感じたのは、実家がいかに金に目敏く意地汚いのかということだ。

実家のネルハンバー家は、アドレーヌ家と同じ男爵の地位を貰ち、隣同士に領地を持っているが、産業で得た資金をほぼほぼ独占し、市民に雀の涙ほどしか還さず、直談判に来る民もいたが、それでも変わらず私腹を肥やすだけの両親だった。しかし私はこの事がおかしいことだと認識し、何度も正そうと説得を続けていた。

なぜなら、一度見に行った隣のアドレーヌの領地では、民が税金に苦しまず伸び伸びと笑顔に溢れていると知っていたからだ。


「なんと謝罪したらいいのか…」

「お辞めください奥様!私なんかに頭を下げることはおやめください!

貴方様は生きているだけでも奇跡的な状態からやっとすこし回復されたのですよ!」

 

しゃがんだクリスさんに、クッと肩を押され、身体を上げることとなかったが、俯くことも涙も止まらなかった。


「女なんて金の足しにもならない」と言いながらも子供は私しかできず、説得は耳を貸さない両親は、私も民同様無下に扱い、やめていった使用人の代わりを担うと「一銭も払わなくていいから楽だ、お前一人で全て行え」と、使用人をすべて切り、朝から晩まで食事も満足に食べられず、死にものぐるいでボロボロに働く私を笑うような両親だった。

病的に細くなっていたであろう私に同情する民も多かったが、位地には、何者も勝てなかった。

そんな非情な生活をしていると、税も収まらなくなるのはわかりきっていたのに、生活水準を落とせなかった両親は、隣の領地の25歳となる次期当主の為に、アドレーヌ家が嫁を探しているとわかるやいなや


「娘をくれてやるから結婚準備金を寄越せ」


といいはなった。


「役立つときが来たな」

「女の貴方が役に立つ機会を与えたのですよ、旦那様に感謝しなさい」


なんて言って、まんまると太った、私とは正反対の出で立ちの母と父は笑った。

18歳になったばかりの私の意見もすべて無視な行動に、抵抗する気力さえ失っていたが、流石に無茶苦茶が過ぎ、誰がそんな条件を飲むものか、一蹴されれば、少しくらい真っ当になるのかなと思って、使用人の仕事をして過ごしているとアドレーヌ家は血迷ったとしか思えないが、言うとおりの金額と私を嫁にと話になった。


「だん、だんなさまに…迷惑を…」

「奥様はここにいるだけで、それだけでいいんですよ」


ポロポロと止まらない涙と嗚咽にクリスさんは、「失礼」と、一言言って背中をなでて落ち着かせてくれた。


 結婚の話が成立したと聞かされ、翌日すぐに結婚準備金を直接持ってきたアドレーヌ家。そのアドレーヌ家の者に会えと父親が突然言ってきた。唯一持っている一張羅を着込んで、トボトボと家の中を歩き、頭の中では「金の亡者から逃げてと旦那様になる人に伝えて」と叫ぶ算段を立てていたが、扉を開けると私の目の前に現れたのが、巨漢のその人が、私の旦那様となるオリゴン・アドレーヌだった。


「僕が、君と結婚する、オリゴン・アドレーヌといいます。顔を見れてよかった、カメリア」

「ど、うして、ご本人が…」

「それは、たしかに。突然申し訳なかった。ただ、知らない年上の自分と結婚するなんて、自分だったら不安でたまらなかったと思う。だから、こうして持参金とともに顔を見させてもらったんだ。」


どうしても聞きたかった私は、結婚する旦那様に聞いた。


「…なぜ、こんな、バカげた結婚を受け入れたのですか…?」

「僕にとっては、バカげた話じゃなかったからだよ」


わけがわからなかったが、旦那様になる人は、優しく照れたように頭を掻きながらフニャッと笑った。目線を合わせるためにか猫背で、癖っ気の髪の毛で目は半分ほど覆い隠されているが、優しい目が見えた。私よりもとても大きなガッチリとした身体、なのに威嚇しないようにと小さくいようとする姿に、私は何も言えなくなってしまった。


その日持ってきてもらった持参金は、2着ほど洋服を買っただけであとはすべて、両親の私腹を肥やす羽目になった。


「わたし…旦那様に、なにも、なにもかえせない…」

「奥様…」

「ここに来て、細すぎるって、お医者様にかからせてくださって…お金を使わせてしまって…、それなのに、わたしは、寝込んで…心配までさせてしまいました…」

「奥様、お医者も言われておりました。栄養が足りておらず、やっと身体が年齢相応に戻ろうとしてると、そうでなければ命の危機も危ぶまれたのですよ」

「わたし、なんて…助けてもらわなければ…よかったんです…! 旦那様は…今でも、実家にせびられてる、私がいるからって…!」


子供のように嫌だ、嫌だと小さくなって泣く


「旦那様は、それをも、良しとして、カメリア様だからご結婚されたのです。」

「っ…」

「ですから、ここにいてくださっていいのですよ」

「ううう…」


クリスさんの優しい言葉に涙が止まらなかった。でも本当にいいんだろうか、本当にいることが正しいのだろうか。嫁に出してやったんだから家に金を入れろ」や「事業の一部を寄越せ」と人としておかしな事を言っているはずだ。多額の援助を要求して、私腹を肥やす家族から旦那様を救い出す方法は、私を助けてくれた人を助ける方法は本当にないのでしょうか。

考えていると、内側からブァリと熱くなる感覚に襲われる。あぁ、まただ…


「奥様、身体がまた熱くなっておられます。まだ身体も丈夫ではありません。少し休みましょう、心労も体に障ります」

「はい…」


まだ、私の体はしっかりと治っておらず、こうなると何日かは熱が引かない。熱にうなされていると、旦那様が、心配で見に来てくださった


「だん、なさま」

「喋るのは辛くないかい?カメリア、してほしいことがあったら、いつでも言うんだよ」

「…ごめん、なさい」


謝ることしかできなくて、その日の私は眠りについた。どうすれば、どうすれば旦那様を助けられるのか。

 次の日、少し調子が良くなりまた考えていると、良い天気な窓が目に入り外を見る。執事に大量の荷物を持たせ優雅に歩く女性が目に入った。1つのことがパッと浮かび、これだ!!と閃くとクリスを呼んだ


「どうされました奥様?」

「クリスさん!私!決めました!」

「何をでございますか?」

「私…!」


すうっと息を吸って、ぐっと拳を作ると元気よく伝えた


「私、悪女になります!!」

「はい?」


チュンチュンと鳥のさえずりの中にクリスの疑問符は飲み込まれていった。

誤字脱字があれば教えていただけますと幸いです

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