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オオカミはフードを被る  作者: Nadi
オオカミはフードを被る
2/99

心配

 村から少し離れた静かな森の中に、家が一軒建っている。


そこの家に住んでいるのは二人の女性。


一人は自由奔放な凄腕魔法使いのゼノと二人目は笑顔が可愛らしいキエリ。


 ゼノは、ここで気ままに魔法の研究や薬草から薬作りをし、キエリは、ゼノの手伝いをしたり、薬を村に売りに行ったりして暮らしていた。


といってもゼノという魔法使いは、家一軒に長い間とどまることができない性格で、自由気ままな人であり、よく一人旅に出ていった。


キエリはその間、一人で魔法や言葉の勉強、村で手伝いなどをして過ごす。


 今日もゼノは旅に出るところだった。


 「キエリ~、ちょっと来てくれな~い?」


家の外で薬草を干していたキエリをゼノが呼んだ。


 「ん? なにゼノ?」


キエリが小走りでゼノのもとに来た。


 「アタクシ、これからまた旅に出ようと思うんだけど、今回はあなたもど~う? いっつもここに留守番してるんだから、たまにはイイでしょ?」


ゼノの提案にキエリは少し困ったように笑った。


 「ううん、この時期にとっておきたい薬草もあるし、村の人たちのお手伝いもしたいし、今回もわたしは留守番するよ。もしかして、あのこと心配してる?」


キエリの指摘が図星のようで、ゼノは顔をしかめた。


 「もう、知ってたの? もうすぐここの森に国の騎士団が来て魔獣狩りがされるコト。別にアタクシがいるのだから、そんなことしなくていいのに‥‥」


 魔獣というのは、魔力をもった人間よりもずっと大きな生き物で、凶暴性があると言われている。

各地で出現しており、実際に人間に被害がでている。


 ある年を境に魔獣の発生が増え、国は騎士団を派遣して、定期的に魔獣狩りを行っているのだ。


 曇り顔のゼノを安心させるように、キエリはゼノの手を握って穏やかに微笑む。


 「大丈夫、ゼノのおかげで魔獣はみんな追い払われてるって村のみんなも知ってるから、きっとそのことを知ったらすぐに騎士団も通り過ぎてくよ」

 「それも、そうね‥‥でも、万一騎士団が森に入ってきても、相手にしちゃだめよ。というか、家からでないほうがいいわ」

 「ふふっ、ゼノってけっこう過保護だよね」

 「だってぇ、キエリは可愛い娘もドーゼンなのよ! もうっ、ここまでアタクシの心をかき乱すなんて、キエリのいけずぅ!」


ゼノは、キエリを両腕でぎゅっと抱きしめて、自分のほっぺをキエリの頭にぐりぐりした。


 「あはは、もう、わかったよ。なるべく家から出ないようにするから」


キエリは、そんなゼノの行動が少し面白くて少し笑う。


 「いーい? ほんと気をつけてよ。アタクシ、キエリに何かあったら騎士団を潰しちゃうんだから」

 (ゼノがそれを言うと、冗談かわからないな‥‥)


 ゼノは、優秀な魔法使いで、正直強い。


そして、キエリに何かあれば本当にことをしでかしてしまいそうなほど、血のつながりのないキエリを愛してくれている。


 キエリはゼノをなんとか安心させ、ゼノの旅立ちを見送った。


 「ふぅー‥‥」


 (さすがに、ゼノもちょっと渋ってたな。心配してくれてるんだよね。魔獣狩り、か‥‥)

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