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十五歳の好奇心。

『パトリシアのことはわたしに任せて、君は自室に戻って安静にしててくれ』


モニターから聞こえる無機質な言葉に頷いて、おれは頭を抱えるパトリシアに背を向ける。


「ああ、そうだな。それがソイツの為だな……」


くそっ、だから言っただろ。不用意におれに近づくなって。


『そうだ。最後に一つだけ』


出口にたどり着いたおれを、黒須が呼び止める。


この状況で呼び止めるなんて、また新しい訓練の話か?


「……なんだよ?」


『これが、これが君がわからせてやるべき人間だよ』


「ああ、そうかい。どうでもいいよ、そんなこと」


人間がどうとか、未来の話とか、そんな先のこと今のおれにはどうでもいい。


おれは最初から、誰も信じるべきじゃなかったんだ。


★ ★ ★


監視モニターの電源を切り、わたしは顔に手を当てて震える。


パトリシアは用意した改造人間とともに、武御雷の底力を引き出した。


そして、自分の身体を酷使してまで助けた武御雷は、救った本人に拒絶され、また一歩わたしの理想に近づいた。


二人の行動は間違いなく、正しかった。相手を傷つけないことに関してはね。


「くっくっく、アァハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!」


簡単すぎて、涙が出るよ! 


可哀想な環境にいる少年を救いたいと身勝手な欲求を押し付ける少女も、そんな人間に期待して自分の持った能力ちからの恐ろしさを理解していない少年にも。


お互いの優しさが、お互いを勝手に傷つけるなんて傑作だね! 

おかげでわたしは新たなデータを手に入れ、武御雷の人間への嫌悪を増すことが出来た。


全く覚悟なき行動には感謝しても、しきれない。賢者たちに武御雷のお披露目するまで、あと五年。


それまでに完全になってもらわなければ困る。そうでなければ、人間を淘汰し賢者薙ぎ払い、世界を終わらせることなどできはしないのだからさ。


「さーて、今度は君にどんな絶望を与えようか?」


理想の世界を見せてくれる少年の為、俺は今日も夢を馳せる。君が最強の災害になるため、今から作るいばらの道に。


★ ★ ★


目を覚ました真っ白な部屋に、ノックの音が虚しく響く。


「そこに置いといてくれ」


おれの声に返答はなく、遠ざかる足音が朝食が置かれたことを教えてくれる。


「って、んなこと言われるまでもないじゃん……」


アイツがおかしかっただけで、この扉からおれ以外が室内に入ってくるなんてないんだから。


朝食を受け取り、もそもそと口へ運ぶ。いつもと何も変わらない朝。


固形食と栄養ドリンクを飲み干して、皿をその辺に置いたまま横になる。


「……つまんな」


この一ヶ月、パトリシアがうるさかったせいか、妙に静かに感じる。


「ちょっと早いけど、メンテ行くかな」


部屋を出て、通路を歩く結社の奴らにすれ違うたびに「おはよう」だの「いい朝」だの話しかけられるのを無視して、機密エリアをから医療エリアに向かう。


挨拶なんて、してもしなくてもどうもしないっての。


「あ、武御雷。今日は早いですね。もしかして、急ぎの御用でもあるんですか?」


検査室の入り口に立つおれに、少し驚いて担当の医師が視線を向けた。


結社ここで? ある訳ないじゃん。自室に籠ってるだけなんだから」


「そうでしたね。では、今日も始めましょうか」


「ああ、よろしく」


それから、いつも通り医師の指示に従って順番に検査を終わらせていく。


しかし、今日は異常なしとはならず。流石に、昨日の無茶が応えたようで「今日は絶対安静にしてください」と、念を押された。


その無茶をさせてるのは、アンタらのボスなんだけどな。




通路に出て自室に戻ろうとしたおれは、医療エリアの奥を見つめパトリシアの話を思い出していた。


(一番奥の病室。あそこ、十五年間一度も空室になったことがないらしいの)


「気になるな」


しかし、通路にはまばらとはいえ監視カメラがある。あれにおれが映ると今より行動が制限されかねない。


「今日はやめとくか」


そう言って、機密エリアへの道に振り返ったおれの耳に――――


ジリジリジリジリジリジリ!


辺りから、突然やかましい警告音のようなものが流れ出す。何かと思ったが、おれはすぐに昼食のベルの音だと気づく。


「あれ、どうしたんですか? こんな所で」


すると、検査室から白衣姿の医師が出てきた。もちろん今から食堂に向かおうとしているのだろう。


おれはその時、一つ面白いことを思いついた。


「いや、なんか立ち眩みがしてさ。しばらくしたら自室に戻るから気にしないで」


「え、ええ。そういう事でしたら私は行きますね」


何かに引っかかているようだが、医師はおれになにも指摘はせずに立ち去る。


いや、指摘できないのかもしれない。


「そんなことより……」


おれは自室には戻らず、今目の前で鍵を閉められたドアをドアノブを無理矢理回して中に入る。


「えっと、あ! やっぱあるじゃん」


室内を眺めると目的のものはあっさりと見つかった。


それは医師が座っていた椅子にかけられた、結社の全構成員に配られるローブ。


「これがあれば、ちょっとは遊べそうかな」

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