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最強少年の退屈な目覚め。

〜十六年後〜


★ ★ ★


目覚まし時計が鳴らす機械的な音を聴き流しながら、おれはいつものように目を覚ます。


もう少し寝ていたい気もするけど、黒須に怒られるのもヤダし、さっさと支度しよ。


寝汗で少し気持ち悪くなった着心地の悪いピチピチの服を脱ぎ、替えのトレーニングウェアに着替える。


「これダサいよなぁ。皆変なマント被ってるのになんでおれだけこんな格好なんだよ」


コンコン。


おれが服装の差をぼやいていると、部屋の扉がノックされた。


武御雷たけみかずち、今日の朝食を持って参りました」


「はいはい、別にいちいち言わなくていいって。そこ置いといて」


そう言うと、扉の下の隙間からいつもの固形食と栄養ドリンクが入れられる。


「それでは失礼します」


そうして、配膳係の足音が遠ざかっていく。


毎日、同じ時間に持ってくるんだから報告する必要なんてないと思うけどなぁ。




朝食も早々に済ませ、おれは座学を学ぶ部屋へと向かう。


途中、誰かも覚えてない結社の大人たちに「おはようございます!」と、元気な挨拶をされ、鬱陶しいので、おれは軽く手を振って返した。


扉を開け、室内を確認するが、もちろん中には誰も居ない。


この施設内では、おれが居る場所には安全が確保されてからしか人は入って来ないのだ。


だから、おれが入り口に立っている限りは座学は始まらない。


サボタージュも気分次第である。


まあ、長くやり過ぎるとまた全身火傷を負わされるので、ほどほどに部屋中央にポツンとひと席だけ置かれた席に着く。


それから、一分後。


いつもホワイトボードに色んなこと書いて教えてくれる男が姿を現した。


「おはようございます、武御雷。今日の調子はいかがですか?」


「別にいつも通りだよ。強いて言えば朝食に飽きたってことくらいかな」


「なるほど。けれど、あの朝食はあなたの健康を考えての物なので我慢してくださいね」


「はいはい」


柔和な笑顔で言い聞かせる男に、特になんの感情もない返事をしておく。


飽きたなんて言っても、もう物心ついた時からこの生活をしているおれにとって、これは当たり前であり日常だった。


今更変えたいとか、変わりたいなんて思わない。


いつかは外の世界で人間たちと戦うらしいけど、それすらどうでもいい。


ただ毎日、身体が大きくなっているのを感じながら生きてく。ただ、それだけ。


「それでは、講習を始めますよ? 今日は昨日の続き……」


男が教材を開き、教卓の上に折り目をつけて広げる。


「効率的な人間の無力化についてです。三十二ページをひらいてください」


こうして、今日もおれの一日が始まる。


何の変哲もない繰り返しの日々、覚えても覚えても役に立たない知識だけと力だけが増えていく。


本当、人生ってつまんないよなぁ。


その後も、目の前で続く男の話を話半分で聞きながら、おれはこの無気力な時間を消費する。



「じゃあ、今日はここまで。明日はメンテナンスの日だからまた来週だね」


「うん、お疲れさま」


講習が終わり、ホワイトボードのインクを消す男に別れを告げ、おれは座学の部屋を後にする。


次は、耐久テスト。


なんでも今日から与える力を二十パーセント上げると言っていたから、疲れそう。


そんな事を考えて歩いてると、前に二人の男女が見えた。


見かけない顔だ、最近、結社に入ったばかりの人かな?


まあ、いいや。結社こんなところで談笑してる人も珍しいしたまには良いかもな。


おれは少しだけあたたかくなった気持ちで、二人の横を通る。


しかし、それと同時に二人の笑い声は消え失せ、おれに挨拶をしてきた。


「あっ、こんにちは。武御雷」

「こんにちはっ!」


「ああ、はいはい。こんにちは」


はあ、別に会話をやめる必要なんてないんだけど。みんな、おれに聞かれるとまずい事話してるのか?


結社の人達の為に、居るはずなのに。おれの目の前ではみんな気まずそうに口を閉じる。


それだけが昔から疑問だ。



「君が避けられている?」


モニター越しに会話する黒須は、不思議そうにおれの問いを繰り返した。


「ああ、みんなおれが近くに居ると気まずそうにするから、なんでだろうって」


おれは簡易的な鉄のベットに拘束されながら疑問も続ける。


「そんな事を気にする必要が君にあるとは思えんが……」


黒須は少し考える仕草をして、たぶんすぐに浮かんでいた言葉を口にする。


「それは、君のことを恐れているからだよ」


「恐れる? ここの人達はおれの守護対象なのにか」


「そうとも、例え口ではそんな綺麗事を並べても、彼等は自分を成す術もなく殺せる君が怖いんだ」


「そう、なのか。だから、みんなおれに近づかないのか」


「そうだね。でも、安心したまえわたしは君なんてちっとも恐ろしくない。わたしならいつでも君を殺せるよ?」


おれには、それが嘘だと分かった。


だってお前は、一度もおれと直接会ったことも話したこともないじゃないか。

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