五人の賢者と一人の男。
三章は過去編なります!
まだ一章や二章を読んでない方は、その辺りを踏まえてご覧下さい!
ひらけた地下空洞に、六つの人影が集まっている。その内、四人は模様違いのローブを身に纏い。
対面の不敵に笑う男は、隣に膝をついて座るずぶ濡れの女性の肩に手を置く。
自分の渾身の計画が、記念すべき一歩を踏み出す時を今か今かと待ち望んでいるのだ。
「こんな寂れた場所に賢者を呼び出すとは、送られてきた情報が偽りであった場合、貴様死ぬぞ?」
「嘘だなんて、滅相もありませんよリーマン氏」
凄む風の賢者に男は、胡散臭い笑顔と軽い調子で否定する。
「どうでもいいけど、もっと綺麗な場所に招待して欲しかったものだわ。何よこの鼠の這っていそうな所は」
賢者のうちの一人、立ち姿すら美しい青色のローブの女が眉をひそめて周囲に目を向ける。
「それは失礼しました。これは内密な話ゆえこの様な場所での会合となってしまった事を謝罪致します」
頭を下げた男は、それから他二名の賢者に視線を送った。
「御二方も何かご意見などありましたら、なんなりと」
「んーオレはないかなぁ〜どうでもいいし」
「アタシもだね。むしろ場所の選択は気に入ったというくらいだねぇ。ヒェッヒェッ」
気分だけで生きていそうな男と、腰が曲がり杖ついて怪しい笑い浮かべる女の答えを聞いて男は、ホッとする。
目の前の協調性の欠片も無い賢者達のご機嫌を損ねたら、話をする前に殺されてもおかしくない。
それでは、自分が何年も研究し幾度も犠牲を払った日々が台無しというもの。
「なぁ、そんなことよりその娘はなんなんだ? オレの女にしてもいいか」
ここからのプランに気を回している男に、黄色のローブの男が意味の分からない事を言い出した。
「また始まった……」
青色のローブを着た女性が顔に手を当て、目の前の光景を嘆く。
どうやら、賢者達にとってはいつもの事らしい。
「申し訳ありませんが、それは出来ません。この女は貴方たちと私を繋げる可能性の塊なのですから」
例えるなら、金の卵を産むニワトリだ。
「なんだそうなのか、ずぶ濡れでも女だから一応貰っておこうかと思ったのに」
「低俗な発言ですこと。だから貴方と同じ場所には居たくないのよ」
「フェッフェッ、女が誰なのかはどうでもいいが、ドブ鼠の様な今の姿は嫌いじゃあないよ」
「くだらん話はもういい。早く本題に入れ黒須真、このままだと此奴らは半日は訳の分からん話をするぞ」
リーマンの言う通り、既に各々が好き勝手に喋り出し、誰に言っているのかも分からない言葉達は行き先を失い部屋中に散乱していく。
しかし、黒須は自分の腕時計を確認してリーマンの言葉を手で制す。
「それが、話は皆様が集まってから始めさせていただきたいのです。三条氏が到着するまで、暫しお待ちを」
「すでに待っている。一時間も遅れている阿呆のことならな」
そう、ここには賢者が四人しか居らず、いの一番に話に乗ってきた男がまだ来ていない。
あの男「その計画で強き者が増えるのなら喜んで協力しよう!」と言っていたくせに、一向に姿を現さないじゃないか!
「黒須、だったかしら? 安心なさいあの男は私たち賢者の中では比較的一般的な思考をしているわ」
「でも、約束の時間には必ず遅れてくるけどなっ。オレ、自分より遅刻する奴に初めて会ったよ」
「それはお前さんのがずぼら故で、奴のが故意だからじゃろうて」
黒須は、紫色のローブを着た賢者の言葉に耳を疑う。
故意? ということは、三条氏はわざと遅れているのか。
では、他の賢者達が到着してから十分程時が過ぎているというのに、なぜまだ来ない?
「黒須君、あまり深く考えるのはやめた方がいい。見ての通り賢者など個の目的にしか興味がない変人の集まりだからね」
「は、はあ」
否定しようとした黒須は、しかし、さっきの光景を思い出して曖昧な相槌をうつ。
十年前、小惑星衝突から世界を救った五人の救世主が、まさか会話が成り立つかも怪しい変わり者集団だったとは……
まあ、性格などどうでもいい。
コイツらが魔法使いである事と、俺の差し出すカードの価値さえ理解出来れば、他は何もしてもらう必要などないのだから。
黒須が、腕時計に五度目の視線を落とした時。
待ちわびた最後の賢者の到着を知らせる足音が入れ口から鳴り響く。
「ハッハ、久しいなお前たち! 賢者が揃うなど何年振りだ!?」
「協定を結んだ時でしょう? お互いの目的の邪魔にならないためわざわざ、国を分けたのですから」
「おお、そうだそうだ。あの時以来か懐かしいな!」
「別に、オレは会いたいとか思った事ないけどな」
「私もです」
「アタシもだねぇ」
「……」
「待っておりました、三条氏。それではわたしから皆様へのお話を始めさせて頂きます」
「おう! お前が黒須真か。遅れてわるかったな! 三条兜ただいま参上!」
「「……」」
「で、では、わたしの計画を聞いて頂きます」
突然、静かになった部屋の中央で静寂を破った黒須は話し始める。
この世を、混沌に叩き落とす為の計画を。




