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疾る閃光! 正真正銘トドメの一撃。そのニ

「フッ。君に真っ向から勝てないことなんて知っていたよ」


ゴルドールは、俺が倒れて動けないのをいいことにどうでもいい話をべらべらと語り出す。


「そもそも元は君が僕達の五人の代わりに、賢者の盤石な地位のため人類に魔法の力を見せつけるはずだったというのに。あの女の入れ知恵で計画は台無し。組織から君が逃げ出した事により僕達は老いた体に鞭を打って賢者の頂点を決める戦争なんてものをする羽目になった。それが星権戦だよ」


紗世との未来のため何としてでも起き上がらなければならない。


しかし、途方もない疲労感と全身の痛みで、起き上がることも出来ない。


チクショ……俺は、ここまでなのか?


「あの女は唯一の成功例とか言って殺さなかったのが、今でも愚かな選択だったと嘆かざる負えないよ」


べらべらとうるせぇ無駄口の中で、身動きが取れず澄んだ俺の耳に微かな囁きが届く。


「延命措置がないと生きられない女ではもう実験などできないと何度も言い聞かせてやったというのに。あの男はたった一度の成功に魅せられてあんなゴミを生かしておいたんだよ」


その言葉を黙って聞いていた俺の中で、痛みを恐れる感情を超える感情が芽生える。


さっきまでもう動かせないと思っていた身体は痛みを忘れ。


ただ一つの感情がぼろぼろの肉体に火をくべる。


「お前は俺の目の前でやってはいけない二つの内、一つの事をした」


今まさに湧き上がる新鮮な怒りが、俺の限界を迎えた身体を突き動かす。


「おっと、まだ立てたのかい? だけど残念。君がその姿での活動時間が五分しか持たない事はすでに知っているよ」


立ち上がった俺をゴルドールは少しだけ意外そうに眺める。


「紗世に害を及ぼすこと、そして……」


組織で生まれ、恐れから誰も触れようともしなかった俺に初めて温もりを教えてくれた人。


この世で俺が一番最初に愛した人。


自分の世界に何の疑問も持たずに組織で生きていた俺を救ってくれた人。


そして、俺の母だった人。


「さやを侮辱することだぁぁっ!」


雷を走らせた全身で立ち幅跳びの格好で跳んだ俺に、ゴルドールが掌を向ける。


「もうテメエには謝罪の言葉すら喋らせる気はねえ……!」


跳び込んだ勢いに任せて、顔を掴み床へと叩きつける!


勢いよく仰け反ったゴルドールの胴体が跳ね上がる。


「こんなもんじゃねえ……こんなもんじゃねえぞ!」


床に押し当てたまま火が出る勢いで引きずって、ゴルドールを壁へと投げ飛ばす。


それに追いすがって空中を飛んでいるゴルドールに猛打を振るう。


殴って。殴って。殴り続ける。


そして、壁へと到達する瞬間。


俺は振動する拳で、化石のように限界まで壁面に同化させていく。


このクズが二度と大地など踏めないように、全ての拳に殺意を込めて全身をくまなく殴り続ける……!


「オォォォォォォ!!」


怒号を上げて、振りぬいた最後の一撃はゴルドール胸へと突き刺さる。


「ゴフッ、痛いよ。今にも死んでしまいそうなくらいにね? だけど、そこまでやっても僕は死なない」


「勘違いしてんじゃねえ……。今のはむしゃくしゃして怒りに任せて殴り続けただけだ」


余裕そうなゴルドールの顔を見て、俺は全身に流れていた雷を怒りとともに右手に集中していく。


「本番はこっからだよ、クズ野郎」


「貴様!? 何をするつもりだ!!」


「やっと焦ってくれたな? 火炙りってのは出来ねえが、直で電撃を流すことなら出来るぜ」


「そんなもの黙ってやらせる訳がないだろ!」


時間が必要な雷を蓄えている俺に、ゴルドールは最後の足掻きで、壁にめり込んでいた掌を強引に向ける。


「触れ合い吹き飛ばす風よ、目の前の脅威を討ち滅ぼせ」


この距離で喰らえば、今の踏ん張りの効かない足ではこの魔法を耐えきるのは無理だろう。


だが、このチャンスを失ったら痛みは無くとも俺の身体でもう一度同じ事はもう出来ない。


コイツを倒すなら今この瞬間しか、チャンスは無い!


「“私”がお前なんぞに敗北などするものかぁぁ! この小童!!」


「お前が負けんのは、俺じゃねえ──!」


その瞬間。


俺がゴルドールの持っている杖を叩き割るのと同時に、奴の手を壁に張り付けるように数本の血結晶の矢が突き刺さる。


「俺達だ!」


背後で、弓を構えてるであろうアシュリーの分も右手に力を込める。



「薄汚い小娘がぁ! 生きておったのか貴様!」


「死んだフリが得意なのが自分だけだと思わないことですね。あなたの長話のお陰で随分と回復できましたよ」


「クソが! クソが! クソがぁぁぁぁぁ!」


「フフフ、なんて良い眺めなんでしょう。私はあなたのその愚かでみっともない姿を見れて感激しています」


認められない事実に絶叫するゴルドールをアシュリーが心底楽しそうに嘲笑う。


「覚悟しな。ゴルドール・リーマン!」


突き刺した腕で心臓を鷲掴み、雷がゴルドールの体内から全身に駆け抜ける。


「ガァァァァァァァァ!!」


ビクン! と跳ね上がる身体に何度も雷を流し込む。


回数を重ねる度、次第にゴルドールの身体が黒く焼けただれていき、焦げ臭くなった身体からは血が一滴たりとも流れて来ない。


「今度こそお別れだな。賢者よ、さらばだ」


最後に盛大に雷を放出するのと同時に、炭のように脆くなった心臓を握りつぶした。




「ナイスなタイミングだったぜ。アシュリー」


「とどめの瞬間はこの目で見ないと気が済みませんからね」


そう言って、自分も満身創痍のアシュリーがそっと拳をこちらに向ける。


俺はその拳を自分の拳をコツンと、当てて俺たちの勝利を分かち合う。


「あともう一個言っていいか?」


「なんですか?」


「……あと、頼んだ」


さっきまでなんともなかった身体が肌色に戻り魔法の時間が終わる。


その瞬間、突然襲い掛かる疲労感に抗うことなく目を閉じてその場に突っ伏した。


★ ★ ★


目の前で倒れた剣を見て、アシュリーとウォロフは顔を見合わせて笑う。


「フフ、やはりこの人は最後まで締まりのないおじさんですね」


「ホントだよぉ。せっかく勝ったのにこれじゃ引き分けみたいじゃん」


「私としてはここに置いて行っても構わないのですが、さすがに今回ばかりは剣さんも頑張りましたし運んであげてもらえますか? ウォロフくん」


「まあ、確かにこのまま敵陣に放置するのはかわいそうだしね」


ウォロフは剣を背負って、壁にできた帰り道の方を向く。


「もうこのまま帰っていいのかな?」


「大丈夫じゃないですか? ここに居る人たちにリーマンの計画を引き継ぐ事はできませんから」


「え、なんでそんなことがわかるんだ? もしかしたら部下の一人が──」


アシュリーの言い切った言葉にウォロフは疑問を唱える。


「賢者が居ないブラックパージに賢者の居る町への攻撃など仮にされても私たちが出るまでもありませんよ」


「あ、そっか」


二人は敵の気配に注意しつつ来た道を戻って行く。




「やはり、自分の住んでいる町は良いものですね」


灯京の町に帰って来たアシュリーが、今となっては住み慣れた町並みを眺めながら呟いた。


「そうだね。まあオイラはこの町の生まれじゃないけど」


もうあれから八時間以上は眠っている剣を背負ったウォロフが歩きながら正直な意見を口にした。


「てゆうか、剣さんってこんな家に住んでいたんですね」


「なんか変なの? オイラには普通のお家に見えるけど……」


目の前の平家を見て、アシュリーは意外そうに眺めている。


ウォロフは人間の住む小屋に住んだことがないのでいまいち言ってることが分からなかった。


「ええ、だからです。こんな異常な肉体の人がこんな普通の家に住んでいるって少し可笑しくないですか?」


「なるほどね。確かにちょっと笑えるかも」


ピンポーン。


「はーい。今開けまーす」


アシュリーがインターホンを押すと、中から女性の声がした。


しばらくして開かれた扉の向こうには、突然の訪問に驚いた紗世が立っていた。


「え、アシュリーちゃんとウォロフくんどうしたの!?」


「サヨ、昨日ぶりだね!」


「紗世さんのご主人を届けにあがりましたよ」

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