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作戦終了。決戦開始の足音と雷オヤジの雄叫び。

「なんなんですか? 今のは。説明してください」


爆散する直前の吸血鬼を、当然のように蹴り上げた俺にアシュリーが訝しげに尋ねてくる。


「いや、だから魔具だろ? まさか身体の中に仕込まれているとは思わなかったけどな」


「あれが、魔具。つまりリーマンの運用実験は成功と見ていいんでしょうか?」


どうなんだろうか。


使用者が爆散して、吸血鬼ですら死んでしまったのだから失敗かもしれなかった。


「まあ、どっちにしろ早く行こうぜ」


俺は出口に向かって歩き出す。


「確かに、今のは凄い爆破でしたからね。早く帰ってシャワーが浴びたいです」


アシュリーが自分に降ってきた吸血鬼の血や肉片で汚れた身体を見て、呑気な事を言う。


「いや、違うだろ。俺は早くゴルドールの元に行こうぜって言ったんだよ」


居場所も、奴の計画も知った今、こんな所で足踏みをしている暇はない。


さっさとぶっ飛ばして他の賢者も探しに探したい。


「ああ、そっちの事ですか」


「当たり前だろ。逆になんでシャワーのことだと思ったんだよ」


「私も一刻も早くリーマンの元に向かいたいですが、シャワーだけは浴びに帰ります」


それでも、アシュリーは頑なにシャワーを浴びることに拘る。


「なんでだよ……ヴィントって場所に行けばゴルドールが居るんだろ? だったら早く済ませようぜ」


「確かに、この爆発でここでの出来事が社長に知られてしまうのも時間の問題です」


「あ、確かにそれはやばいな!?」


盾石のオッサンがこの爆発の事を知れば真っ先に俺の関与を疑うだろう。


「そこには気づいてなかったんですね……」


「ああ、ちっとも考えてなかったわ」


「それにリーマンの計画も実行を早めるという可能性がある以上急ぐに越したことはありません」


「お、おう。だから寄り道せずに向かった方が良いって話だろ?」


「ですか、それとこれとは話が別です。私は必ずシャワーを浴びてから行きます。それだけは譲れません」


「いや、今は汚いのやだ。とかそんなん言ってる場合じゃねえだろ」


「剣さん、あなたはバカですか?」


真顔で言われ、俺の沸点が一瞬限界を超える。


「てめえ、()ろうってんなら受けて立つぞ! 小娘が!」


「私達は今から復讐に行くんですよ?」


「だから、さっさと行くぞって言って──


「こんな汚れきった姿では、決まりませんよ」


俺の言葉が終わる前に、アシュリーは自分の譲れないポリシーを口にする。


「……わかったわかった。もう勝手にしろよ、俺も一旦帰って連れに挨拶だけして来るからよ」


「剣さんも用事あるんじゃないですか、面倒な人ですね」


俺のは今思い出したついでだけどな!


「ほっとけ。じゃあ一旦ここで解散して、準備が出来次第アシュリーの家に集合でいいな? ウォロフもそれで大丈夫か?」


問いかけたウォロフは、先ほど暴風が吹き荒れた上空を見上げていた。


その横顔は、俺の声など届いていない。


「ウォロフくん?」


「え? あ、うん。オイラもそれで大丈夫だよ」


アシュリーに肩を揺らされ、心ここに在らずで返事をする。


「何ぼーっとしてんだ? お前まだ眠いんじゃねえか」


「もう大丈夫だよ! 今のにちょっと驚いただけだって」


ウォロフはそう言って笑っているが、その笑顔は少しぎこちない。


「ならいいけどよ。じゃあこれ以上言うこともねえし俺は先に行くとするわ」


その笑顔が気にはなったが、それよりもまず目の前の戦いを終わらせるべきだと思い。深くは聞かないことにする。


今はここで長話をしてる時間も勿体ないくらいだ。


そう言って、再び歩き出す。


「待って下さい剣さん」


さっきまで軽い調子で話していたアシュリーが、真剣な顔で俺を引き止める。


「なんだよ?」


すると、アシュリーはさっき渡した数枚の紙を俺に返してくる。


邪魔だったから持って帰れって事か?


「おそらくこの闘いから帰る頃には、社長には私達がなにをしているのか知られていると思います」


「確かに、賢者が殺されたなんて事は全世界に知れ渡るよな」


もちろん、それをやってのけた実行犯達も。


「はい、ですからこの書類を社長のデスクの上に置いて来てください」


おい、ただのパシリじゃねえかよ。


「そうすれば賢者のことが分かった時、正義はこちらにあったと証明出来るはずです」


この紙にはヴィントの全人口を吸血鬼に変えてしまおうという計画が記されている。


これを白日の元に晒せばゴルドール・リーマンの地位は地に落ちる。


そんな悪人を倒せば、俺達はお咎めなしってところか。


確かに、悪くない作戦だな。


「まあ、出来れば悪者にはなりたくはないよな。お互いに」


「ええ、これでやっとヴァンパイア・ハーフでも堂々と出社できると思います」


そう言いながら、アシュリーが戯けたようにクスリと笑う。


悪人だった賢者を倒したとなれば、いくら化け物といえど盾石のオッサンも受け入れてくれるだろう。


「わかった。じゃあこの紙をオッサンのとこ置いてから帰りゃいいんだな」


「はい、お願いします。剣さんにしかできない事ではないですが、私は一刻も早く帰宅したいので」


「本音が漏れてる上に、余計すぎるわ!」


結局長くなった話を切り上げ、ブラックパージ社を出て飛び上がる。


前方には既にモンスターバスター社のビルが見えていた。




ビル伝いで近づくと、オッサンの居る社長室の照明はまだ室内を照らしており人の気配がした。


あの仕事大好き人間のオッサンのことだから、居るとは思ったが、こうなるとどうするかだな。


今オッサンに会うと確実にさっきの爆発の事を聞かれることになる。


嘘をついてもいいが怪しまれる事になるしなぁ。


「うーん。この状況じゃしょうがないよな」


俺はその辺に落ちていた石を拾い上げ、その石に紙を固く結んでいく。


これでも十中八九、俺の仕業だと気づくと思うが直接会うよりはマシだろう。


「オッサンが全部を知る前に帰ってくりゃ良いしな!」


俺が投げた石は、一直線に社長室の窓に向かって飛んでいく。


我ながら完璧なコントロールだ。


ガシャーン!!


そして部屋の窓を割った瞬間、俺はその場を立ち去ろうとした足を止める。


コントロールは完璧だったが、力加減はどうも上手くいかなかったようだ。


壁に並んだ連窓の一枚ではなく、それに連なる窓ガラスが全て騒音を上げて割れ落ちた。


「剣ーっ!!」


実行犯の名を呼ぶ雄叫びを聞いて、俺は一目散にその場から飛び出した。

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