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作戦前夜、賢者探しの協力者は人狼の少年。

小さな狼少年に「四日後の夜に俺の匂いがする場所まで来てくれ」と耳打ちしてから、紗世さよを帰路に促して、俺たちは少年と別れた。




「さっき、あの子となに話してたの? 誰かを探してるようなこと言ってたけど……」


「あ~まあちょっと用がある奴が、いてな」


隣で半眼になった紗世が、俺の失言を逃さず追及してくる。


まあ、紗世とその両親くらいしか関わっていなかった俺が、わざわざ人探しをしているとバレた時点で目的を感づかれても仕方ないんだが。


「だったら、望位磁石使う? これならその人にすぐ会えるんじゃないかな」


「それって確か、会ったことも行ったことも見たこともない場所には導けないんじゃなかったけか」


確か、望むことの出来る明確な人や場所でないと反応しない筈だ。


「え、うん。そうだけど、つるぎ会ったこともない人を探してるの? どうして?」


「それも今度話すってことで……よし! この話終わりっ」


俺は手を叩いて会話を打ち切る。


「もう~勝手だなぁ。解決したら絶対聞かせてよ? 剣の口から」


「当たり前だろ。俺以外に誰がその報せを届けるんだよ」


「いや、内容が分からないから何とも言えないんだけど……」


結局、紗世はの顔は最初の複雑そう表情に戻ってしまう。


いつかこの話が満面の笑みでできる時を迎えるためにも、五日後の作戦を成功に収め賢者との最初の闘いを完全勝利で終わらせないとな。




「遅いですよ。明日が作戦決行の日だというのに、こんな夜中まで何をしてたんですか?」


四日後の夜、俺がマンションの屋上に辿り着くと、夜風が肌を吹き抜ける中でガードレールにもたれる。腕を組んだ仏頂面のアシュリーにそう言われた。


「いや、この前連れが来てるって話しただろ。その子が寝付くのを待ってたらこんな時間になっちまったんだ、すまん」


デート後で、紗世寝るのが遅かったのは事実なので嘘は言っていない。


「まあいいですよ。元々あなたが時間にルーズなのは知っていますし、私も今日は眠れそうにありませんでしたから」


「俺も、それは一理あるかな」


それはもちろん、寝れないという方のことだ。


「では、早速明日の作戦についてですが」


「あ、ちょっと待ってくれ。これから助っ人が来ると思うから話はそいつが来てからにしてくれねえか」


「あなた、私たちの計画の事を見ず知らずの人に喋ったのですか? しかも私に何の相談もなく」


「いや、待て! 落ち着けって、俺達の計画の事は喋ったりしてねえよ。ただそいつの鼻が人探しに役立ちそうだったからここに呼んだけだ」


殺気を込めた目で俺を見据えるアシュリーを、手で制して事情を説明する。


「……分かりました。ただし、信用できない人だった場合は私の情報が広がるのを避けるためその方にはここで消えてもらいます」


「まあ、そいつはそんな悪い奴って感じの奴じゃねえけどな。バカそうだけど」


「御託はいいので、返事をしてください。さもないとその減らず口をもぎ取りますよ?」


「うわーこわっ。分かったよ、そいつが悪い奴だったときは好きにしてくれ」


すまん、狼少年。俺はお前を信じてるぞ。


勝手に命を懸けられてると知ったら流石に恨まれそうだった。だが、恨むなら目の前の半吸血鬼を恨んでくれ。


俺達が少年の処遇について話をしていると、非常階段を昇って屋上へと息を切らせて辿り着いた少年が、絶好のタイミングで姿を見せる。


アシュリーはその少年を見て、大きく見開いた目を俺に向け『お前は正気か?』と、瞳で語りかけてくる。


「おい、アンタ。オイラは確かに匂いを追えるとは言ったけど、どこにでも行けるとは言ってないぞ」


ぜぇぜぇ、と肩で息をしながら少年は恨み言を言いながら息を整えている。


「いや、なんでそんな疲れてんだよ。エレベーターで最上階まで上がれば屋上までの一階分を昇るだけで済んだだろ……」


「エレベーター?」


マジかよこいつ。まさかエレベーターの存在を知らなかったのか。


服装はその辺の若者と変わりないのに文明への順応性は山籠もりを終えた仙人並みだな。


「剣さん、この子は大丈夫なんですか? 大事な作戦に邪魔者はもちろんおバカさんも連れて行きたくはないんですけれど」


「いや、大丈夫だって。これは山暮らしが長いからこうなっただけだと思うわ、知らんけど」


「なあ、それで来いってい言うから来たけど、オイラはなんで呼ばれたんだ? それにその女の人誰だよ」


呆れ顔のアシュリーに、少年が少し気に入らなそうに聞いてくる。


「そういえば、お互いの自己紹介すらしてなかったな。俺は剣、それ以外特に語ることなんてないただのおっさんだよ。で、この目つきの冷たいお姉さんはアシュリーだ」


俺の簡単な紹介にアシュリーが文句でもありそうな顔をする。


「あなたのような子供の来るところではないと思いますが、もしも作戦に参加するというなら足は引っ張らないでくださいね? おチビちゃん」


あれ? 作戦に参加させるかは後で決めるんじゃないのか? まあ、アシュリーがいいなら余計な事は言わないが。


「ぐっ、うるせえな! オマエが誰だか知らないけど、オイラは自分より強い奴以外の指図は受けないぞ!」


「フッ、強さなんてどうでもいいですが、この作戦の立案者は私です。ですから私の指示に従わないなら今すぐお引き取り下さい」


「なんだとっ!?」


「まあまあ、二人とも落ち着けよ。アシュリーは気持ちは分かるが焦りすぎ。それとお前は自己紹介がまだだぞ?」


睨み合っている二人の間に入り、今にも始まってしまいかねない争いを止めて、自己紹介を促す。


すると、少年は唐突に咳払いをした。


「オイラは、ウォロフ! 最強の人狼になって、群れの長になる男だ!」 


「この子、人狼……なんですか?」


「な? 人探しにはもってこいの人材、いや犬材だろ」


「だから、オイラは狼だって言ってんだろ! あとそういう事だから覚えておけよ、人間の女!」


ビシッ、と音が聞こえそうな勢いで人狼の少年・ウォロフは、なにか考え込んでいる様子のアシュリーに向かって指を差して自分の挨拶を終えた。


まあ、アシュリーも人間ってわけじゃないが、わざわざ俺が言う事でもないか。

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