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現れた追跡者は予期せぬ救世主!?その二

「来いよ?」


唸り声をあげながら威嚇をしている人狼に視線を戻して、俺は開戦の一言を呟く。


「オイラの強さにちょっとでもビックリしたらアンタの強さを教えてもらうから、なっ!」


跳び出した人狼が鋭い爪を立てて、俺の拳の射程外から腕を伸ばして手当たり次第に引っ掻いてくる。


それをその場から一歩も動く必要もなく、無数のかぎ爪を一つ一つ弾きながら俺はこの人狼に最近感じたばかりの感情がこみ上げてくる。


攻撃の速度は決して遅くはないし力が弱いわけでもない。だけど、俺は内心あくびが出そうな思いで目の前の人狼を眺める。


「どうした? 守ってるだけじゃアンタも勝てないんじゃないのか」


安い挑発をして、俺が踏み込んで来るのを待っているらしい。


お望み通り、少しばかりこのつまらないじゃれあいを戦闘に変えてやるとするか。


「怪我しても、あとで文句言うなよ!」


一歩踏み込み軽く吹き飛ばすつもりで、蹴る。しかし、人狼は頬に当たる寸前でしゃがみこんでかわす。


その結果、俺の足が空しく空気を切って一周して元の場所へと戻ってくる。


こいつ、さっきまでの攻撃の速度から当たると踏んでいたが、まだ余力を残していたのか。


「へ、へえ、中々いい蹴りだね。当たったら痛そうだったよ」


「言葉の割には随分と顔が固いようだけどな」


避けられて驚いていた俺より、明らかに動揺した様子の人狼が声を震わせて軽口を叩いている。


あれ、こいつもしかして……


「オイラだって、まだまだこっからだよ!」


懲りずに一定の距離から爪で引っ掻こうとしてくる人狼の相手もそろそろ飽きてきた。


ここいらで、終わらせようかな。


一撃で敗北したと分かればもうこんな面倒なことはしてこないだろう。


さっきより少し痛い一撃をお見舞いするため、俺は腰を落とし肘を軽く曲げて拳に力を込めた。


「終わりにしようぜ、クソ犬!」


「犬じゃねえって――――」


人狼の細かいツッコミを無視して、腰の回転を利用して勢いを乗せた拳を斜め下から一直線に打ち込む。


言葉の途中で不意に飛んできた目前の拳を目で追いながら、人狼の顔が引きつる。


奴の毛の感触が拳にふさふさと触れて、当たったと思った瞬間。


人狼はあと数ミリまで迫った拳の衝撃に従うように、危機回避能力が覚醒したかの超反応でその場で渦を巻いてかわす。


またもや、空を切った自分の手を眺めながら俺は驚いていた。


紗世さよの前だからと手加減してはいるが、そんなことは抜きにしても殴るために振るった拳を二度も避けられるとは。


「やるな、犬っころ。ただ、自分っで言ってた通り守ってるだけじゃ戦いには勝てないんじゃねえか?」


「わ、分かってるよそんなこと!」


う~ん、回避能力はずば抜けているのに、どうもこいつからは危険性を感じない。というか、自分を押し通そうという気迫みたいなものが伝わってこない。


「オイラだって、今から攻めようと思ってたんだ!」


目の前の化け物は言葉と共に歩道から自動車が行きかう道路に飛び出す。人狼でも轢かれたら無事では済まないと思うが……


そんな俺の思考を裏切る形で、ちょうど横切ろうとした車に足の爪を食いこませ、水平にしゃがみ込んだまま一瞬のうちに俺の視界の前から横へと移動する。


その際、驚いて急ブレーキを踏むことになった運転手は気の毒だった。


「獲った!!」


一瞬のうちに首元に向かって大口を開けながら、してやったりな笑顔を浮かべる人狼少年の顔面を、俺はまるごと鷲掴む!


そして、そのまま反対側に建っているレンガ造りの建物の壁に、受け流した勢いのまま叩きつけた!


鈍い音と共に背中を強打して息を吐き出す人狼に、俺は拳を握り締めて最後の一言をこぼす。


「これで、終わりだ」


「待って、つるぎ!」


ドォォン!


音を立てて跡形もなく崩れたレンガの瓦礫を前に、それまで黙って見ていた紗世が腰を落としてへたり込む。


「え、」


横で驚いている紗世が顔に疑問符を浮かべている。


「おい、お前見てなかっただろ?」


「へ?」


俺はすでに顔から手を放して、その場にしゃがみ込んで頭を抱えている人狼に上から声を掛ける。


自分から強さが見たいとか言っておいて最後の最後で目を瞑ってやがるとか……


殻に籠るのをやめて俺を見上げた瞳には、まだ臆病な光が残っている。


「お前……強さとかなんとか言ってるけど、実はすげえビビりだろ?」


避けられるたびに驚いていたが、今の反応を見てはっきりした。


そりゃあ避けるのに全神経を使っているのに、攻めるの時はパッとしないわけだ。


「そ、そんなわけないだろ!? オイラは人狼なんだぞ、怖いもんなんかないやい!」


「ふーん」


ニヤニヤと人狼から人間の姿に戻った少年を俺が見下ろしていると


「よかったぁ。剣がその子のこと建物と一緒に壊しちゃったかと思ったよ」


隣で、紗世が安心した声を漏らした。


「でも、アンタの強さは本物だな。頼む! オイラにその強さを教えてくれ、代わりになんでもするから!」


「なんでもするって言われても、お前にしてほしい事なんて考えても無いしなぁ」


それに教えることなんてありもしない。


「いいじゃん剣。ここまで言ってるんだし、この子のお願い聞いてあげれば?」


「紗世、お前他人事だと思ってなんも考えないで言ってるだろ……」


「頼む! 絶対に勝ちたい奴が居るんだ!」


「……いや、ごめんな。やっぱ面倒だからやめとくわ」


親身になって懇願する姿に少しだけ心が緩みそうになる。が、今の俺にはそんな時間など無いと紗世を見て心を結びなおす。


「いいのか!? オイラに教えてくれるまで匂いをたどってどこまでも追いかけて探し出すぞ!」


「お願いが、脅迫に変わってやがる……!?」


やっぱこいつ、ここでもうちょい傷めつけといて方がいいかもなあ。


ん、待てよ?


「お前は、匂いさえあればその人物の居場所を突き止めることができんのか?」


「おう! だからアンタらの匂いは覚えたから、もう逃がさないぞ」


このガキを仲間にすれば、賢者の居場所を突き止めるのにさらに有利になる! 我ながらツイてやがる。


「よし、分かった! お前に俺の強さを見せてやる。その代わりにお前はその鼻を俺に貸してくれ」


俺は人狼に手を差し伸べて起こしてやると、何の話をしているのか不思議そうな顔をしている紗世を横目に、そのまま握った手と手で約束の握手を交わす。

人物紹介その八


ウォロフ

人狼。

年齢十五歳。誕生日1月1日。

容姿、本来は純白の人狼だが、人間に紛れるために化け、だぼだぼで目が痛くなりそうな色の服を着ている。

身長は人間時、約160㎝。人狼時、約180㎝

好きなもの、肉。力。

嫌いなもの、痛み。苦しみ。弱い自分。

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