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禁眼の吸血姫  作者: 榛名 怜
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第五話 吸血鬼の禁忌

森に入ってすでに数時間経ったころ。

辺りは、うっそうとした木々に囲まれ、虫や鳥の鳴き声が響く。

太陽の光は、背の高い木々達に遮られ、ほとんど地表には届かず、昼にも関わらず薄暗い。

そんな森の中を私は、あることについて考えながら、歩いていた。


そういえばまだ【贈り物(ギフト)】を使っていなかったなぁ。


【贈り物】は魔物や過酷な環境のあるこの世界を生きるために、神様が与えた力とされている。

通常は一人一つの【贈り物】を持っている。その力も多種多様に存在する。

【料理】は上手に料理ができる力。【健康】は病にかかりにくいなど【贈り物】は、身近な力がほとんどである。


しかし、中には【炎】など魔法を使わずに自由にその力や物を操る力もある。

【贈り物】は大きく分けて五つに分類することができる。


『強化型』身体の強化、感覚器官の拡張や物質の強化や変化させる能力。

『生産型』特定のものや物質を生成、作成する能力。

『支配型』特定のものを自由に操ることができる能力。

『技能型』特定の技能の対して並外れた技術を得る能力。

『特殊型』これらに分類されない能力である。


【贈り物】は生まれた時に授かり、自身と共に成長していき死と共に消滅していく。


禁眼ディアボロス】【死冠の王(モーグスローン)


これまで自分の力は見たもの模倣する魔眼だと思っていたので正直どちらも使い方がわからなかった。

そこで一度、一先ず魔力を眼に集めることにした。

すると言葉が頭の奥から浮かんできた。


「【虎目ノ計測(アザゼル)】」


銀色の瞳が、獅子の瞳の様に黄に染まった。

見える風景が一瞬黄色に染まったことに、少し驚き自分の眼に手も当てた。

視界に自分の身体が入ったとき、私はこの力を理解した。


なるほど。眼に聞けって言うのは、こういうことか。

言われた時は意味が分からなかったが、実際に使用して初めて理解した。


「ありがとう」


誰にとは言わないが、私はつぶやいた。

そして新たに知ったこと、能力に私は笑みを浮かべた。


【贈り物】の試運転を終え、今後について計画を立てているとき。

私は気が付いてしまった。


人間を滅ぼすと殺気に満ちていたが、やつらがどこに住んでいるのか?

どこに国があるかを全く把握していないのだ。

そもそも今まで森の相当深いところで暮らしてきたためか、ほとんど義母以外と接触してこなかった。


このままじゃいけないな。

ひとまず森を抜けて、道に出ればきっと人間じゃなくても誰かいるといるだろうな。


そんなことを考えながら歩いていると、ガサっと草むらが揺れた。

私は収納魔法からすかさず、弓矢を取り出し矢をつがえた。

草むらから顔を出したのは、真っ白のウサギであった。

しかし、ただのウサギではなかった。

可愛らしいウサギの頭には一本の角が生えていた。

ホーンラビット。角をもったウサギの魔物である。

ホーンラビットは、その愛らしい見た目に反し、足をバネの様に使い、鋭く尖った角で獲物を仕留める。

身体が小さく素早いため、見た目に油断してケガをするものも少なくない魔物である。


しかし……。

ホーンラビットか。まぁいいや。

私はつがえていた矢を射た。

矢は狙い違わずホーンラビットの眉間に命中し、そのまま絶命した。


私は絶命したホーンラビットから矢を引き抜き、軽く血を拭いてから弓とともに矢を収納した。

吸血鬼の吸血対象は基本的に全ての生物である。

人や獣人、家畜や魔物まで血が通う生き物であれば全てだ。

魔物の血はあんまり好みではないけれど仕方ないか。

私は瞳を緋色に染め。

ホーンラビットの白い首元に八重歯を突き立て、血を吸った。


生暖かい鮮血が口元を緋色に染め、喉を通る。

やっぱりおいしくはないか。


ホーンラビットの死体に私は自分の指をナイフで切り血を死体の上に垂らした。

すると確かに死んだはずのホーンラビットがゆっくりと瞼を開いた。

瞳を緋色に染められ、八重歯はわずかに伸びていた。


【永久の隷属】またの名を『死者の隷属』。

血を吸った死体に自分の血をつけることで、死んだ生物を『動く死体(リビングデッド)』として、操ることのできる、吸血鬼の固有の能力。

『動く死体』は、作成者の命令のみを聞き、作成者が消滅するまで無限に復活する。

成長することも劣化することもない。

生前の最高の状態を常に維持し続ける。

たとえ心臓を潰し、脳を破壊し、身体を灰にしても必ず復活し、主の命に従い続けるのだ。

しかし、【永久の隷属】は死体を辱める外法であり、もう一つの効果から禁忌とされた。

それは、『感染』である。

『感染』とは、『動く死体』が吸血し、殺した生き物を『動く死体』にする能力である。

無限に蘇り増殖し続ける化け物を作り、従える強力で残忍で非情な能力故に禁忌とされたのだ。


けれど私は決めたのだ。

奴らを滅ぼすためならなんでもやると。


「よしうまく動いたな」


「キュイー」


「かわいい」


隷属化したホーンラビットは私にすり寄ってきた。

少しの間、白くて柔らかい、もこもこ生物を堪能した。


「よし。命令よ『魔物を狩りなさい』」


隷属したホーンラビットに私は、早速他の魔物を襲うように命令した。

命令を受けたホーンラビットは、キュイと短く鳴き、再び草むらに潜っていった。

隷属したものの動きが、きちんと把握できることを確かめ私は、森を再び歩き始めた。


これでネズミ算式に上手くいけばと思ったが、ホーンラビットこの辺りでは底辺の実力である。

そのため同程度のゴブリンなどが限界だろう。

その後もホーンラビット七匹とナイフのような嘴を持った、ナイフバード三匹など他にも数種類の

魔物を隷属化しながら森を進んでいった。


なんで誰もいないの?

いったい再生にどれほどの時間がかかったのだろうか?

隷属化した魔物たちも人間どころか、他の種族すら私は発見できないでいた。


その後も歩き続けとうとう日が暮れてしまった。

夜になり吸血鬼としての力が高まり始めたころ。

私は野営の準備をしていた。

準備と言っても、家を出る前に作った簡易テントなどを収納魔法から取り出すだけであるが。

吸血鬼であるのに夜に活動しないわけは、単純に疲労したからである。


これまでは吸血鬼の力は記憶と共に抑えられていたため、普通の生活をしていた。

そのため義母と過ごした習慣が抜けず、昼は目が冴えてしまい、夜には眠気が来てしまう。

また、昨夜は一睡もしておらず疲労も溜まっていた。


「『集まりなさい』」


私が隷属化した魔物たちを呼ぶと、次々と辺りから魔物が出てきた。

【感染】のせいか数は二十匹ほどにまでなっていた。


「結構増えたのね。まぁいいわ。『半分は私の影に、もう半分は辺りを警戒して私を守りなさい』」


命令を聞くと半分は私の影に飛び込み消えていき、残り半分は再び森に向かっていった。


まぁ一応いないよりましだけど、戦力にはならないんだよなぁ。

せめてオーガとかシャドウウルフと出てこないかなぁ。


隷属化した魔物はどれも小型であり、どれも戦闘力は低いものばかりだった。

しかし隷属した魔物は周囲の魔力を食らうため、作成者は魔力も体力も消費しない。

すでに死んでいるため睡眠も休息さえ必要としない。

そのため幅広く使うことができるため今回は警報装置として使うことにした。


命令を出した私は変成して作った食べ物を食べ、魔物除けの結界を張りすぐに床に就いた。


便利な魔法のおかげ森の中であるのに関わらず快適な生活を送っていた。


その後、毎日同じような生活を送った。

森は思った以上に深く、私は毎日魔物を倒しては、隷属化していった……。


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