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禁眼の吸血姫  作者: 榛名 怜
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第五十六話 種まき

久しぶりの投稿です。


日が沈み待ちに待った夜が訪れた。


「アリスもういいよね?いいよね?」

「もうノアったら、そんなに興奮しないでも大丈夫よ。みんなアレは持った?」


私は三人に事前に渡したものについて確認した。


「ええ。持っているわよ」

「だが、こんなもの本当に役に立つのか?」

「うん……。たぶん?それが役に立つかを確認するって感じかな。使い方は大丈夫だよね?」


私が確認するとノアとルナは当然のように頷いたが、クレハは困った顔をした。


「その……俺にこれは不向きというか……」

「うん。クレハ下手くそ」

「そうね。クレハのセンスの悪さは致命的よね」

「面目ない」

「ははは、まぁそれでも今回は頑張って使ってみてね」


私はそう言うと三人に渡したものをクルクルと回しホルスターに収めた。

三人に渡したもの、それは拳銃だ。それもただの拳銃ではない。

ドレファスの持っていた拳銃を『虎目ノ計測アザゼル』で再現し、さらに私の変成魔法を使って加工した新しい魔道具だ。

基本的な構造は普通の拳銃と変わらないが、魔力を流すことで発砲音を消したり、弾丸を収納魔法から取り出したり自分でもなかなか実践向きの魔改造ができたと思う。

本当ならここに自動追尾とか、付与魔法も付けたかったが流石にそこまでは現状つけることはできなかった。

あくまで現時点でこの魔道具が役に立つかわからないので仕方ないのだ。


「それじゃ、私とクレハ、ノアとルナのペアで行動ね。あくまで今は種まき、仕込みなんだから二人とも派手に動かないでね」

「わかってる」

「アリスじゃないんだからそんなの分かっているわよ」

「それじゃ夜明け前には戻ってきてね」

「うん」

「了解よ」

「わかった」


そういうと私達は二手に分かれて夜の街に消えていった。


まず私とクレハ不可視化の魔法で姿を消した。

日が沈んだからといっても外を出歩いている人間がいなくなるわけではない。

寧ろ日が沈んでからの方が街は賑やかになるものだ。

それは外壁の外にある街でも例外ではない。

大きな通りは人間で溢れ、食事処からは酒に酔ったもの達が騒ぎ、色町では女たちが外の男どもを誘っている。

そんな様子に思わず殺人衝動に駆られそうになるのを抑え私とクレハは街の奥、人目のない路地裏を目指した。


今回の目的は『種まき』。

ユーノの時は街の住民から崩していったが今回は逆からアプローチを駆ける。

この街の権力者や実力のある者を隷属化したあとに迅速に街の人間どもを制圧する。

だが、大きな都市であるために万が一に備え伏兵を仕込むのだ。

人間はどこまでも狡猾で残忍な種族だ。

奴らを滅ぼすためにはできることは何でもやらなくてはいけないのだ。


というのは建て前でぶっちゃけると私達の精神的健康のためこれは仕方ないのだ。

親、家族、友人の仇の種族が自分達のすぐ近くを幸せそうな顔で闊歩する。

耐えられるわけがない。

憎くて憎くてたまらない。憎悪が溢れ、殺意が抑えられない。

だから、私達は殺すのだ。


私とクレハが路地裏を歩くこと数分、私達は最初の標的を見つけた。

最初の標的はガラの悪そうな数人の若い男たちだった。


『み~い~つ~け~た』


私は口角を上げながら腰に挿した二本の刀に手を置き、抜刀姿勢を取った。

そして、男たち目掛けて刀を抜こうとしたとき、首を締め付けられる様な鈍い衝撃が私を襲った。


『ふぎゅっ』


私は無様な声を漏らした。

私はすぐに服を掴み、私の奇襲を妨げた人物、クレハを恨めし気に見た。

するとクレハ呆れたような顔で言った。


『はぁ……アリス今回は拳銃これを使うんだろ。見つけた途端に刀を抜こうとするなよ』

『うぅぅごめん、つい……ね?』

『それじゃあ、気を取り直して殺そうか』


私とクレハが拳銃に魔力を流すと拳銃の周りが音を逃さないように小さな風の結界に包まれた。

結界が発動するのを確認し、ついでとばかりに私は周りを防音結界で包んだ。

そして、私達は引き金を引いた。

両手から伝わる鈍い衝撃に耐えながら、立て続けに引き金を引き続ける。

私の初弾は四人いた男のうち一番手前にいた男の鼻の下、脳幹を一撃で貫いた。

弾丸で脳幹を破壊された男は指一つ動かすことなく息絶えた。

第二、第三弾は隣の男の目を貫き命を奪った。

残りの弾は、最後の二人の両太ももを貫いた。

装弾数全七発の弾丸を打ち終えた後、息のある男二人は絶叫した。


息のある二人は突然襲われた痛みに叫び声をあげ、油汗をかきながら周りを見ると仲間の二人が頭から血を流して倒れているのを見て再び叫んだ。

叫び声を聴いて周りから人間達が集まってきそうだが、残念ながらその声は防音結界によって妨げられた。


攻撃をしたことで不可視化の魔法が解けた私であったが、そんなことをお構いなしに楽し気にクレハに話掛けた。


「うん。全弾命中。やっぱり私って天才かも、クレハは?」


私がクレハに話しかけると肩にポンと叩かれ不可視化の魔法を解除したクレハが現れた。

その様子を察した私はいたずらっぽくクレハをからかった。

不可視化の魔法は制限時間を過ぎるか、外部の者に影響を与えなければ解けない。

つまり、私の肩を叩いて姿を現したクレハの弾は、全弾外れたのだ。


「へたっぴ」

「う、うるさい。俺にはこんな道具必要ないんだよ」


クレハそう言うと拳銃を自分のホルスターにしまうと、自身の贈り物(ギフト)『刀』を発動した。

彼女の指に挟まれたのは、小さな刀だった。

所謂脇差よりも短いそれを数本、未だに息のある男に向かって投擲した。

小さな刀は男の心臓、両目、喉を深々と刺さった。

その様子に満足したクレハ自慢げに私を見てきた。


「ほらな、こんなの無くても余裕だろ」

「はぁ……そうみたいだね。クレハに使わせたら弾の無駄遣いだからそっちでいいよ」


私はそう言うと拳銃に再び魔力を注ぎ込んで再装填すると、這って逃げようとしていた男に全ての弾丸をぶち込んだ。

もちろん全て急所を外し、何回かそれを繰り返した。

そして完全にこと切れたことを確認すると隷属化し別の標的を求めてまた歩きだした。


「うん……。少し扱いが難しいかな……頭とかに当たれば即死させられるけど足とか腕だとダメ殺せないね」

「なんだ、一応考えて撃っていたのか。俺はてっきり遊んでいたんだとばかり——」

「むぅぅ。失礼だな。ちゃんと実践で使えるかを見極めてたんだから」

「悪い悪い。それで実際どうなんだ?」

「雑魚なら余裕かな。でも高レベルの人間相手だとわからないかも」

「そうか。まぁ俺はそれ使わないからどうでもいいけどな」

「射撃へたっぴだもんね」

「う、うるさい」

「まぁ、クレハは兎も角ノアとルナの二人には使えるようになって欲しいかな」


私はクレハとそんな会話しながら夜町で種まきをひっそり行うのだった。


長く間をあけてしまいすみませんでした。

ちゃっかり『死ぬほど強い転生者リンカネーター』なんていうのも書いてみたのでそちらも読んでいただければ幸いです。

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