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禁眼の吸血姫  作者: 榛名 怜
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第五十一話 聖の日常②side勇者

城門の近くまで行くと聖騎士の人達が煌びやかな鎧を着て門を通る者達に目を光らせていた。

私は聖騎士の人たちなどの前を挨拶しながら通り抜けていく。

そのたびに城門付近にいた貴族や商人から歓声が上がるのだが、適当に手を振って上手く切り抜ける。


ようやく城門に辿り着くと私は外出の手続きをした。

外出する目的と帰宅予定時間を書くだけ簡単な手続きであるのだが、ここでしかできないため面倒だと思いつつもいつものように済ましていく。


「お願いします」

「はい、受け取りました。ヒジリ様、今日もお勤めご苦労様です。お気をつけていってらっしゃいませ」

「はい、それでは行ってきます」


私は挨拶をするとそのまま城を出た。

城の周りには貴族の屋敷が広がっており城壁を挟んでその下に街、城壁という順に何重にも囲まれている。

流石は国の首都ということもあり、その守りは鉄壁と言えるものであろう。

だが、如何せん何重にも城壁であるということは、外に出ることがそれだけ面倒にもなる。

徒歩で外に出ようとすればそれこそ日が暮れてしまうだろう。

だから手っ取り早く私は転移の魔法を使った。

この世界の魔法はイメージと対価の魔力を払えれば大抵のことはできてしまう。

そして勇者の中でも圧倒的な魔力を保有する私であれば、長距離の転移魔法でさえ容易に行使することができるのだ。


森の奥に転移した私はいつもと同じ様に魔法を行使した。


「『土人形・騎士(ゴーレム・ナイト)』」


魔法を使うと私の周囲の地面が大きく盛り上がり、大きな土塊が三つほどできた。

土塊は徐々に小さく、圧縮され人間の形の様に変化し、そして最終的に土は鎧を来た騎士の姿に変わった。


「よし、完成。それじゃあこの辺の魔物を狩ってきて」


私が土でできた騎士たちに命令を下すとその見た目とは反し素早い動きで森の中へ散っていった。


『はぁ今日もゴーレムですか、少しは運動しないと太りますよ』

「う、だってこっちの方が効率的だからいいんだよ。それに私は太らない体質だから関係ない」

『ゴーレムが魔物を殺せば経験値はヒジリにいく——。ゴーレムは魔法扱いなんてこの世界は本当に欠陥だらけっすね』

「あははは、そのおかげで楽できるんだけどね」

『ご主人様、無駄話はその辺にして、今日の分を済ませてしまいましょう』

「そうだね、ラグ」


そう言うと私は収納魔法から、武器庫で借りた二つのケースを出し中を開けた。

中に入っていたのは、大きめの銃器であった。


「今回は、アサルトライフ?とスナイパーライフル?かな」

『わかりませんが、今からそれを探しに行きますよ』

「わかってるよ。我に万象の理を開示せよ『雪銀ノ知恵(ラグエル)』」


私は瞳の色を雪の様に白い白銀に変え銃器に目を向けた。


雪銀ノ知恵(ラグエル)』は神智事録アカシックレコードにアクセスし使用者にその情報を開示する。

世界に向ければ世界の情報を、魔法に向ければ魔法についての情報を得ることができる。

しかし、対象が大きければ大きいほど得られる情報は少なく、細かければ細かいほど詳細な情報が得られる。

禁眼ディアボロス』の『虎目ノ計測(アザゼル)』は真理を見通し、模倣する力であるのに対し『雪銀ノ知恵(ラグエル)』は、真理を深く理解し記憶する力である。

それが例え異世界の理であっても——。


『目標掌握しました』

「さすが~」

『世界で最も使われた軍用銃AK―47とアンチマテリアルライフルPGMへカートⅡを模したものですね』

「ラグって地味に余計な情報まで仕入れてくるよね」

『これが私の能力ですから、それではご主人様準備はよろしいですか?』

「いつでもいいよ」

『では、AK―47とPGMへカートⅡの本物オリジナルを作成します』

「おっけー」


私は両手を地面に付くと可視化できるほど濃密な魔力を地面に流していく。

私の魔力にさらされた地面は熱せられた鋼の様に赤くなり、瞬く間に周囲の地面は赤く変化した。

ようやく準備が整ったところで私は魔法を発動した。


「創造魔法『完全再現パーフェクト・クリエイト』」


私は両手に力を入れ自分の手を地面の中に沈めていく。

手のついているところだけ、まるで赤い泥に変化したかのように手は沈んでいった。

そして、目的の物を見つけると鞘から剣を抜くように勢いよく地面から手を引き抜いた。


「ふぅー。重かった……」

『お疲れ様です、ご主人様。今回も無事再現することができましたね』

「うん、お疲れラグ。毎度のことだけどこれ変成魔法じゃダメなのかな、魔力消費が半端ないんだけど」

『ダメというわけではありません。変成魔法はあくまで物質を他の物質に変換し再構築する魔法に対して創造魔法は魔力そのものを物質に変換しゼロからモノを作る魔法です』

「そんなことは知ってるよ」

『ご主人様、純粋な魔力で創られたモノは火であれ水であれ時が経てば魔力に戻ってしまいます。これはよろしいですね?』

「うん」

『ですが、元からある土や水蒸気を利用した魔法、変成魔法など既存の物質を変化させたものは例外であります。これらは魔力には戻りません』

「うん?なら創造魔法より変成魔法のがいいんじゃない?」


創造魔法で造られたものは純度100%魔力で創られたものならば、やはり変成魔法のがよいのではないか。

そう思ったのだが、どうやらラグの意見は違うらしい。


『食料や使い捨ての物はそうですが、武器や服、特にお嬢様の世界の武器作る場合はこちらのが遥かに良いのですよ。創造魔法で造られたものは、魔力を流せばどんな欠片からでも再生します。折れた剣、割れた盾、失われた弾丸でさえ再生します。』

「つまり、どういうことなの?」

『ヒジリ、貴女はバカですか?貴女の世界の武器。特に銃器は弾丸を消費する武器なのでしょ。だから銀ノ知恵(ラグエル)は、弾丸の装填された状態で武器を作り、その状態をあるべき形とした』

『つまり、再装填リロードがいらない銃ってことっすね』

『な、紅蓮ノ節制(ウリエル)それ私が言おうとしていたのですが』

『はぁ~つまりはそう言うことです。ご主人様』


ラグはため息を吐きながら締めくくった。


そこから夕暮れまでは、銃の試し撃ちや魔物退治などを行った。

私は基本的に毎日こんなふうに過ぎしている。

毎日、武器や魔道具を借りては複製し、自分の収納魔法に作ったものを貯めてきた。

最近は金森達が創った武器の本物を作っているため手間が増えたが、それでも私の魔力量をもってすれば余裕だ。

もちろん借りたものはきちんと返しているが、私が物を複製できることは誰にも言ってはいない。

わざわざ敵を強化してやるつもりはない。

これは来るべき日のための準備なのだ。

その日が来るまで誰にも話す気はない。

私はいつかこの国を人間を裏切るのだから……。


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