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禁眼の吸血姫  作者: 榛名 怜
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第四十九話 報告会side勇者

アリス達が囲郭都市ユーノを滅ぼしてから三日が経った頃。

アイオーン王国の王城その最深部、『玉座の間』では緊急の会議が行われていた。


玉座にどっしりと構えながら国王は、都市を調査した聖騎士の報告に耳を傾けた。

この場には、国王に加え大臣など国の政治に関わる重要な役職に就くもの達と伯爵以上の階級を持つ上級貴族たちが集まっていた。

皆神妙な面持ちで聖騎士の報告を手元の資料を見ながら黙って聞いていた。


「報告いたします。囲郭都市ユーノでの被害は甚大なもので都市の再建には多大な時間を要するものと思われます。現在も確認中ではありますが、現時点で生存者は確認されておらず。死者、行方不明者ともに現在確認中でございます」


聖騎士の報告を聞くなりあまりの被害の大きさに皆、口を閉ざしてしまった。

皆が黙る中、ある貴族がその聖騎士に質問をした。


「都市の再建に勇者様方の力を使えばどうだ?」

「恐れながら都市自体の再建は短期間で可能であると思われますが、都市に住まう民がおりません」

「住むべき民がいなければ、再建する意味もないか」


先程質問をした者は、聖騎士の返答に納得した様子で頷くと再び思案を巡らせるように顎を撫でた。

その者を皮切りにその場にいた、他の貴族たちも質問をしていく。


「死者の人数はどのくらい確認できているんだ?」

「現在確認が取れている死者は0人でございます。何分死体が発見されておりませんので」

「一つも確認できていないのか?」

「はい。街の住人はおそらく敵の放った魔法によって全て燃やし尽くされてしまったものと思われます」

「資料によると屋敷は勇者様の魔法で守られていたようだが、屋敷の中にも死体はなかったのか?」

「はい。屋敷内を隈なく捜索いたしましたが、争った形跡はあるものの死体はどこにも発見されませんでした」

「地下も確認したのか?」

「確認済みです」


聖騎士の一言にその場にいる全員が動揺を露わにした。


「何?それではあまりに不自然ではないか」

「なぜ死体が一つも見つかっていない」

「まさか、そんなバカなことがあるのか?」

「というかそもそも本当に貴族が殺されたのか?」


貴族や大臣たちが口々に聖騎士に確認を取るが、聖騎士は一貫して『死体は見つかっていない』と応え、貴族も殺されているだろうと捕捉された。

そんなやり取りが繰り返されるなか、ある貴族がポツリと呟いた。


「都市の住人は兎も角、なぜ屋敷の死体までもないんだ。まさか敵は死霊使いだというのか?」

「死霊使いですと?」


ある貴族の呟きを大臣の一人が聞き返した。

大臣の反応に先ほど呟いた貴族へ注目が集まった。

急に皆の視線を集めたその貴族は、驚きはしたもののゆっくりと自分の行きついた考えを口にした。


「未だに私の憶測の域を脱しませんが、敵には死体を操る死霊使い、つまりネクロマンサーの類いがいるのではないでしょうか」

「詳しく申してみよ」


貴族の発言が気になったのか国王が話を続けるように促した。

貴族は背筋をピンと伸ばし、丁寧に語り出した。


「はい。死体がないということは、敵が死体を消したか、持ち去ってしまったという可能性がございます。前者の場合は魔法による証拠隠滅などが考えられますが、後者の場合であると死体を利用する何らかの目的があるように思われます。前者ならばそれほど脅威ではないと思われますが、後者である場合、最悪貴族並みの力を有する不死者アンデッドが敵にいる可能性が出てきます。ここは最悪の場合を考えるべきかと」

「不死者だと?ならば早急に対策をしなければいけないな」

「あくまで可能性の話ですが……」


その後はユーノの件以外にも様々な報告やらが行われ情報の交換が行われた。

そして議題は勇者の育成に移っていった。


「現在、勇者様達ですが、戦力としてはもはや十分なものと言えるでしょう。しかし、高レベルに達した勇者様達はこの周囲の魔物や人形ではレベルを上げるのに時間がかかるでしょう」


レベルを上げるには、経験値を集めるしか方法はない。

だが、レベルは上げるほど次のレベルに達するために必要な経験値の量は増えていく。


この世界では命の価値は平等ではない。

道徳的なことを言っているのではない。

これは単なる事実だ。

この世界では、少なくとも人間の中の世界では、命の価値は経験値という形で数値化されている。

強き者、長く生きた者ほど命の価値は高く、弱き者、脆く儚い者ほど命の価値は低くなる。

虫を殺しても経験値は入るがそれは微々たる量であり、各上の存在を殺せれば莫大な経験値を得ることができる。

この世界はそういうふうにできているのだ。


「そうか、では勇者様達には、次の段階に行ってもらおう」


聖騎士に対して大臣は、勇者様達に次の段階に行ってもらうことを指示した。

今よりレベルを上げてもらうために彼らには、ある場所に向かってもらうのだ。


「その前によろしいでしょうか?」

「うん?どうした」

「はい。西の山脈付近に飛竜の目撃情報が寄せられています。周囲の安全を考えてここは勇者様達に討伐を依頼できないでしょうか」

「そうだな。あそこに向かってもらう前に丁度良いだろう」

「分かりました。それでは、勇者様達にはドラゴン討伐の依頼を出させていただきます」

「あぁ。ドラゴン討伐の後、勇者様達には生産系以外は全員次の段階に進んでもらう。そのための準備を進めるように」

「御意」

「生産系と言えば何でも新しい武具ができたと伺いましたがそれについては?」

「はい。まだ試作段階ではありますが、異世界の武器と魔法を組み合わせた。魔導具を開発中であります」

「それは心強い。流石は勇者様達だな。早く生産系の勇者達にもレベルを上げてもらいより強くなってもらいたいものだな」

「そうですね。それでは次の議題ですが——」


勇者の議題について大体の方針が決まると別の議題に移っていった。


会議が終わると参加した者達は各自自分の仕事に戻り玉座の間には、国王と宰相だけが取り残された。

国王は玉座に腰を下ろし、深いため息を吐いた。


「はぁー、まったくどいつもこいつも勇者様、勇者様など情けない……」

「それも仕方ないことでしょう。生産系の勇者は次々と新しい道具や武具を開発して我が国に貢献していることは事実なのですから。戦闘系の勇者も魔物退治など日々国に貢献していますからね」

「そうだな。まぁ一人も脱落者が出ていないのは喜ばしいことだが」

「ですが、あの場所ではわかりませんね……」

「うむ。聖騎士どもに念を押すように言っといてくれないか。最悪の場合は最下位の連中は潰してよい、くれぐれも上位陣は潰すなよ」

「御意に……。ですが、あの者は……」

「わかっている。あやつは、彼女の『お気に入り』じゃからな。あぁそれとユーノの都市核の回収をするように聖騎士どもに伝えといてくれ」

「かしこまりました」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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Twitterもやり始めました。


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