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禁眼の吸血姫  作者: 榛名 怜
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第三十二話 銀狼の禁忌

魔法でアリス達が姿を消したことを確認すると、ノアは不敵な笑みを浮かべた。


「かかってこい。全員血祭にしてあげる」


ノアは人間達を挑発した。


「こいつ女か?ガキが調子にのるんじゃねぇよ」


ノアもアリス達も姿を隠すためにローブを身にまとい、フードで顔を隠している。

人間達には顔は見えていないが、声と背丈でノアを女だと判断したのだろう。


「死ねぇや」


私兵達は一人で攻撃を仕掛けるのではなく、複数人で別方向から攻撃を仕掛けた。

ノアは、囲まれないように絶えず走り回った。


弓や魔法を使って、私兵達がノアの足を止めるために攻撃を仕掛けてくる。

放たれる矢を短剣で撃ち落とし、魔法は水晶で防ぐ。


だが、私兵達は、絶えず距離を仕掛け、距離を詰め逃げ場を奪ってくる。

ノアは必死で攻撃を短剣で防ぎ、地べたを這うように攻撃を躱そうとする。

しかし、そんな回避は、長く続くはずがなく、身体には切り傷が刻まれていく。


距離を取るために水晶の杭を放つも見当違いの場所に飛んでいってしまう。

ボロボロの身体になり、肩で息をしているノアを見て私兵達は勝ちを確信したのだろうか。


「おいおい、もう終わりかよ」

「チッ無駄にチョロチョロしやがって」


私兵達は、未だに多くの者が無傷であった。


「はぁはぁ……これで……最後」


ノアはボロボロの身体になりながらも体に鞭を打ち立ち上がり、目の前に水晶の杭を打ち込んだ。


「くらえ『金剛球(ダイヤモンドスフィア)』」


ノアの声と同時に地面に大きな魔法陣が浮かびあがった。

魔法陣は今までに打ち込まれた水晶を基点に輝きを増していく。

ノアは、地面の打ち込んだ杭を基点に儀式魔法を放ったのだ。


人数差も実力差もノアは冷静に把握していた。

だからノアは、戦闘が始まってから一度も攻撃を仕掛けず儀式魔法のための杭を打ち込み逃げ続けていのだ。

地面には、巨大な魔法陣が描かれ、中心にいる私兵達に向けて金剛石の槍が地中空中から襲いかかった。

金剛石の槍は、次々と私兵達に放たれ轟音の共に金剛石の球体を形成する。

辺りは、再び砂ぼこりが舞い上がり視界を奪った。


徐々に砂ぼこりが晴れるにしたがって辺りの様子があらわになってくる。

辺りは槍によって貫かれた死体達が多くあり、中心部では金剛石の球体が形成されていた。

しかし、戦闘はまだ終わりではなかった。


「……調子に乗るなよ」


声と共に金剛石の球体が砕け、中からは結界で身を守った私兵達が七人ほど出てきた。

彼らは死んだ他の者たちとは違い、全くの無傷であった。


「これが貴様の奥の手であろう。私達をここまで追い詰めたんだ、誇っていいぞ。だがそれもここまでだ」


生き残った私兵達は何事もなかったかのようにノアに詰め寄っていく。


「はぁはぁ……奥の手?……違う……」


ノアは被っていたローブを脱ぎ捨て、ノアは顔を彼らに見せた。

その表情は悲痛に歪んだ表情でも憎しみに歪んだ表情でもなかった。

ただ不敵に笑っていた。


「『我は闇を駆ける銀狼、我が爪は肉を裂き、我が顎は骨を砕く 誇り高い銀狼なり、我が命を喰らいこの身を白銀の獣と化せ【銀狼転身】』」


【銀狼転身】これはアリスの使う【永久の隷属】と同じ銀狼族の禁忌である。

吸血鬼の禁忌と同じ様に強力ではあるものの【永久の隷属】とは別の理由から禁忌とされていた。


吸血鬼の【永久の隷属】はあまりにも非人道的であるが故の人道的観点から禁忌されているものであるが【銀狼転身】は違う。

【銀狼転身】は使用者を白銀の狼へと姿を変え、凄まじい力を与える代償に使用者の命、寿命を喰らう。


だが、命を喰らうこの禁忌の与える変化は凄まじいものであった。


ノアの身体は大きな白銀の狼へと変化していく。

爪や牙は鋭さを増し、体は白銀の毛に覆われ大きく変化していった。


「はぁぁぁぁぁぁあ」


肉体の変質は壮絶な痛みを伴うものである。それこそ意識を保つことすら困難と思える痛みがノアを襲う。

しかし、ノアは痛みに耐えながらも禁忌を行使した。


『ワォォォォン』


姿を獣と化したノアは咆哮した。


「化け物が!」

「死にやがれ!」


白銀の狼に私兵達が襲い掛かっていくも、水晶の様に美しい銀色の体毛が剣を弾き攻撃を寄せ付けない。


「どけお前ら!魔法で一気に仕留める『獄炎球(ヘル・フレイム)』」


私兵の一人が漆黒の炎を放った。

漆黒の炎は先ほどまでの火の球とは異なり、火の勢いも速度も段違いに上がっていた。

だが、狼に当たる直前、突如現れた正八角形の水晶の盾に阻まれた。

炎の当たった盾には傷一つなく、無傷の銀狼がそこにはいた。


『ワォォォォォォン』


銀狼の咆哮に呼応するかのように地面からは水晶の柱が立った。

一本や二本ではない。辺りを覆いつくす勢いで水晶の柱が乱立していく。

私兵の一人が地中から現れた水晶の柱に貫かれる。

水晶の柱はそこに止まらず、まるで木の成長を早送りで見ているかのように鋭い枝を伸ばし私兵達を次々と貫いていく。

そして最後の一人、最もレベルが高いと思われる男は凄まじい勢いで伸びる枝を避ける様に上へ上へと逃げていく。


「クソがぁぁぁぁ」


それが男の最後の断末魔であった。

空中におびき出された男は銀狼の爪から逃れることができずに文字通り三枚におろされ絶命した。


銀狼と化したノアが地面に着地すると同時に辺りの水晶がひび割れ砕けていった。

水晶の破片がいつの間にか出てきた月に照らされ乱反射する。

幻想的な光景の中銀狼の身体は元の少女、ノアの身体に戻っていく。

服は狼に変身したためにビリビリに破れてしまった。

全身傷だらけで血と泥で汚れてしまっていたが、ノアは笑っていた。


「はぁはぁ……アリス……私、殺したよ。私だって戦えたんだよ」


ノアは満身創痍といった様子で地面に倒れたが、無理矢理震える足に力をいれ立ち上がろうとする。


「……ま……待っていて……私もすぐ行くから」


ノアは変身前に脱ぎ捨てたローブに身を包み、フラフラになりながら屋敷へ向かった。


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