第二十四話 作戦会議
今回は少し長めです。
ちょっとエッチぃシーンが入ります。
「ふぅ、やっと森を抜けたわ」
「長かった」
ルナとノアは、ほっとした様子で目の前に広がる草原を見ていた。
「これで、もうあんな目にあわなくて済む」
「そうね。ここからは、安全に移動ができるわ」
「はぁ……。二人ともそんなに、私の魔物に乗りたくなかったの?」
「「あたりまえ」よ」
私達は、この三か月森での移動は、ほとんど魔物の背中に乗って移動していた。
森の中では、木々が入り組んでいたり、起伏が激しい場所が多くある。
その中を魔物に乗って移動するのだから、当然、振り落とされたりする危険も存在する。
この三か月で二人は、何度も背中から振り落とされ、その度に涙目になりながら魔法薬で傷を癒していた。
しかし、森の中を徒歩で移動するのは、時間がかかり過ぎる。
結局のところ選択の余地など存在しなかったが、二人は、できるだけ森では魔物に乗りたくないといつも思っていた。
私も二人のそんな気持ちは、理解しているが二人には、未だに体を固定している魔法は教えていない。
二人が振り落とされる度に、笑うのをこらえていた。
「やれやれ、でもここから街に入るまでは、魔物には乗らないわ。奴らに気づかるからね」
「アリス。もしかして、これから街に乗り込んで奇襲とか考えてる?」
「そうだけど」
ノアの問いかけに私はキョトンとした様子で応えた。
今までとやることに変化などない。
人間を虐殺する。ただそれだけだ。集落も村も街でも殺す人数が違うだけでやることは変わらないだろう。
その応えを聞いた二人は、まるで頭痛をこらえるように頭を抑えた。
「アリスはアホ」
「そうね。バカね」
「どういうことかな。二人して私をバカにして」
ノアは、アリスの肩をポンポンと叩くと優しい目で告げた。
「正座」
そこからは、ノアとルナの説明会(街編)が始まった。
二人曰く、集落や村と違い町は、一定の実力を持った貴族や騎士たちによって、統治されているのがほとんどであるという。
貴族たちは、年少の頃から魔物との戦闘で経験を積みレベルを上げているものがほとんどらしい。
私は、政治に関わる貴族たちがなぜ強くなる必要があるのか、わからなかった。
「なんで政治に関わる貴族のが、騎士とか平民より強いのよ。」
「簡単なことよ、力は権力なのよ。強ければそれだけで偉いのよ」
ルナがない胸をこれでもかというほど張り、自慢げに言った。
「それだけじゃない。レベルが上がれば死ににくくなるから。貴族にとって死なないことが重要。だから貴族は自分を鍛え、部下を鍛える。貴族も取り巻きも強いから平民は従うの」
「ふぅん。ただ強い奴がいるってだけじゃない。それだけなら問題ないわ」
「アリス、最後まで聞く」
その後もノアとルナの説明は続いた。
街全体には、魔物などの外敵の侵入を阻む結界があること。
街の多くは、城壁に囲まれ物理的にも侵入は難しく、唯一の侵入口は
また、侵入者を撃退するための魔道具などが常設してあること。
これらがほぼ全ての街に存在することなど、街は人間にとって要塞の様なものであるということ。
「わかったかしら。如何に自分が無謀なことをしようとしたか」
「わかったけど。なんでそんなこと二人は知ってるの」
「「常識」」
「人間の街には、手を出すなって、少なくとも獣人のなかでは常識」
「そうですか」
私は、少し痺れてきたため、正座を崩し二人に座るように言った。
「それじゃあ作戦変更ね」
「初めてまともな作戦会議ね」
「今までの作戦【トツゲキ】が脳筋過ぎただけ」
「脳筋で悪かったわね。今回はちゃんとした作戦よ」
私は二人に作戦を話した。
その結果は……。
「「却下」」
「なんで、私の作戦は完璧なはず……」
「ノア、私達で作戦を考えましょう」
「うん。やはりサイコはポンコツだった……」
「なんで———」
私の作戦はこうだ。まず私が霧化して街に侵入する。霧化している間は、私には何も通用しない。
そのため、簡単に結界を突破することができるだろう。
そして、第二段階に移る。私が貴族の館を強襲しつつ街に魔物を放つ。
街が混乱している間に、二人が正面から侵入し、街の人間達を虐殺する。
最後に、私が貴族たちを殺し、その後二人と合流し街の住民を一人残らず虐殺する。
完璧な作戦であるはずだ。
「街に一体何人の人間がいると思っているのよ。」
「奇襲しても、すぐに囲まれる。何千人を一人で相手にするのは、戦力的にも体力的にも不可能。理解した?」
「ごめんなさい」
「アリスはそこで黙って座ってなさい」
改めて作戦会議が再開した。
しかし、なぜか私だけ発言権がなかった。
私は、二人に考えた作戦を聞くことしか許されなかった。
二人が作戦会議に勤しんでいる中、仲間外れにされた私は、草原の草を毟っていた。
ブチブチとただ意味もなく、草を毟り続ける。
「どーせ、私は脳筋サイコ女ですよ。別にいいし、次の訓練でボコボコにしてやるし。ぐすん」
私の座っていた場所の草は、全て毟られ手の届くところに生えている草は、なくなってしまった。
私は一度、二人の方をチラッと見た。
二人は作戦会議に夢中で、私が仲間外れにされて泣い……復讐に燃えていることに気が付いてない。
「ちょっとくらい気にしてよぉ。ぐすん」
私がボソッと言った言葉にさえ、余程作戦会議に夢中なのか、二人は気が付かなかった。
私は再び草を毟るために、二人から離れていった。
「とりあえず、作戦はこんな感じでいいかしらね」
「うん。問題ない」
「アリスもこれでいいわねって、あれ?どこ行ったのよ」
二人は、アリスがこの場にいないことに気が付き、辺りを見渡した。
アリスは、すぐに見つかった。
アリスは未だに草むしりをしていた。泣きながら。
二人は、アリスのもとへ駆け寄った。
「アリス、何しているのよ。作戦会議に参加しないで、こんなに草毟って……」
ルナの言葉が言い終わる前に、私は吠えた。
「うるさーい。バーカ、アホォー。二人して何さ。私を仲間外れにして、仲良く作戦会議して」
「アリス、落ち着いて。仲間外れになんかにしてない」
「黙って座ってろって言ったじゃん。ぐすん」
ノアがジト目で言った当事者であるルナを見た。
「おい、むっつり猫」
ノアの低い声にびくっとルナが反応した。
ノアは、ルナから視線を外さず地面を指さした。
ルナは、おとなしく地面の上に正座した。
アリスがガチ泣きしているのを見て、深い罪悪感を抱いたのか、それは素早い動きだった。
「仲間外れにしてすいませんでした」
見事な土下座であった。
地面に手を付け、額に土がつくほど深い土下座だった。
「アリス、許して欲しい。もう仲間外れにしないから」
ぐすんと鼻を鳴らし、ゴシゴシと服で涙を拭い立ち上がった。
一度、深呼吸をし、二人に微笑んだ。
ノアもルナをアリスが許してくれたと、そう思った。
そして、アリスは、二人に判決を言い渡した。
「二人とも有罪。ご飯抜きね。しばらく反省しろ!『縛鎖』」
判決は有罪であった。
アリスの生み出した魔法の鎖が二人を締め上げる。
二人は地面にうつ伏せに倒れるように拘束された。
「なんで、私も——」
「ねぇ、なんでノアは土下座しないの。ノアも私を仲間外れにした共犯でしょ」
「いい気味だわ、自分だけ助かろうなんて甘いのよ、エロ犬」
「犬じゃない、狼。」
「反省」
アリスは指をパチンと鳴らす鎖は二人が動けないように、地面に縫い付けるように全身を、縛り上げていく。
二人は地面の上に、うつ伏せで大の字になるように拘束された。
アリスは、拘束された二人に満面の笑みを浮かべ近づく。
瞳を緋色に染め、八重歯が僅かに伸びる。
アリスが近づくにつれて、二人の顔はみるみる引きつっていった。
「アリス、私が悪かったわ。反省しているから、この鎖消してくれないかしら」
「私も謝るだから」
「最近さ、魔法も上手くなって、一人でも戦えるようになって二人とも成長したと私も思うよ。でもさ、それで調子に乗ってはいけないと思うんだ。だからこれは、これは罰なんだよ」
「や、やるなら、むっつり猫にして。私は悪くない」
「な、私を身代わりにするな。わ、私は、きちんと反省しているわ。やるならあのアホ犬にやって。ね」
「確か、二人とも尻尾が弱いんだよね~。」
私が舌なめずりをすると、二人の尻尾は私から逃げるように激しく動いた。
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な」
私はゆっくりとした動きで、交互に指を振った。
指先の先にいたのは、ノアであった。
「最初はノアに決定しました~。」
「私は悪くな——。」
「頂きまーす」
私は、ノアの背に跨るように座り、首元に噛みついた。
「やぁぁあん」
八重歯を首筋に突き刺し私は、ノアの血を啜った。
吸血行為には、快楽が伴う。
ノアは、吸血行為によって生じた、快楽に耐えるように声を必死に抑えていた。
「ねぇ、ノア何をそんなに我慢してるの?我慢すればするほど辛いよぉ」
私は一度、首筋に刺さった八重歯を抜き、首筋から流れ出た血を綺麗に舐めとっていく。
「はぁ、はぁ、べ、別に我慢なんかしてない……」
身体を犯す快楽にノアは、必死に抗いながら、アリスを睨みつけた。
「ふーん、そんな生意気なこと言うんだぁ」
ふふっと、アリスはノアを笑うと再び首筋に噛み付いた。
「んぅぅ……」
ノアは声が漏れないように口を強く結んだ。
そんなノアの抵抗は、アリスの嗜虐心に火をつけてしまった。
アリスは手をノアの背中に這わせ、ゆっくりと下の方へ伸ばしていく。
肩甲骨の辺りから背骨をなぞる様に伸ばされていく手は、ついに目的のものまで辿りついた。
獣人にとって尻尾や角、耳など獣の部分は所謂、性感帯に当たる部分である。
本人たち曰く、他人に触れらるだけでも、それなりクルらしい。
そのため、彼女たちは、普段なるべく刺激を加えないように毛先の柔らかいブラシで手入れをしていた。
私の伸ばした手は、ノアのふさふさの尻尾を撫でた。
普段から手入れをされているおかげか、素晴らしい手触りであった。
私は、ゆっくりと優しい手つきで尻尾を撫でていくが……。
ノアは私が、尻尾を撫でる度に呼吸が荒く早くなっていった。
「鬼畜だわ……」
何を想像しているのか、顔を真っ赤にさせたルナがぼっそ呟いた。
私はそんな呟きを無視し、尻尾をモフった。
「らめぇ、もうやめれ、これ以上はやめれ、むりぃぃ我慢できにゃい」
ついに我慢しきれず、ノアが嬌声を上げ始めた。
「もう、やめ、やめれ……んん——」
ノアの言葉を無視し私は、さらに尻尾をぎゅっと握った。
「あぁぁぁぁん」
ノアは身体をビクンと振るわしそのまま、荒い呼吸で身体を小刻みに震わせた。
私は八重歯をゆっくり抜き、傷口をペロリと舐めた。
「ごちそうさま」
「はぁーはぁーはぁー」
ノアは、未だに身体の波が治まらないのか、荒い呼吸を繰り返す。
「さて、次はルナの番だね」
「う、嘘でしょ」
私は、舌なめずりをしながらルナの背に跨った。
「ノアみたいに抵抗してもいいけど覚悟してね。ルナが想像してよりもすっごいよぉ」
「ちょっ、待って。心の準備を……」
「待たないよ。それじゃあいただきまーす」
私はルナの髪を掻き分け、細い首筋に八重歯を突き立てた。
ルナもノアと同じように声を漏らさないように必死に我慢していたが、ノアほど我慢が出来ずに甘い声が漏れだしてしまう。
「にゃぁぁー、らめ」
私は一度八重歯を抜き、ルナの耳元で息を優しく吹きかけながら囁いた。
「ふーぅ。もう少し我慢しなよ。そんなに気持ちいいの。ふーぅ。」
「やめ、耳はらめ。全然気持ちよくなんてないんだから」
「そっか、それじゃルナもノアみたいにして・あ・げ・る」
私はノアにしたようにルナの尻尾を弄り始めた。
「尻尾はらめ、おかしくなりゅ」
「ルナは二回目だから平気だよね」
「平気やにゃい、むりぃぃ」
私はルナの頭にちょこんと生えてるいる獣耳を甘噛みした。
少し耳に歯を立てた瞬間、ルナは大きな嬌声をあげた。
「にゃぁぁぁん」
しかし、私はそこで行為をやめずに、耳から口を離し、再び首筋に噛み付き、血を啜った。
そして、右手で尻尾をぎゅっと握り締め、左手で獣耳をモフった。
「ふにゃゃゃゃゃあ」
ルナは、一際大きな悲鳴をあげると、余程刺激が強かったのか、そのまま地面に上で気絶してしまった。
私は先程と同じようにペロリと傷口から流れ出る血を舐め取った。
「ごちそうさま」
二人から血を吸った後、私はご飯の用意に取り掛かった。
用意と言っても、ほとんど完成済みの物を収納魔法から取り出すだけであるが。
私はまず、収納魔法から椅子やテーブルを一つずつ出した。
そして、皿やフォークなどの食器を一人分だけ用意していく。
最後に今日のメインディッシュを取り出した。
私が取り出したのは、お肉のたくさん入ったシチューである。
出来立てであるかのように熱々の状態で、白い湯気と共に仄かに香る甘い匂いが辺りに広がった。
未だに鎖で縛られたままである二人は、アリスを悔し気に睨んでいた。
二人とも私と出会う以前は、貧しい生活をその反動からなのか、二人は食に関して異常な執着があった。
出されたものは、一かけらすら残らず平らげ、さらには、自分のお腹に入る限界までの量を食べようとするのだ。
そして、今日のご飯のシチューは、主犯ルナの大好物である。
ルナは、匂いを嗅ぎシチューであることに気づくと、暴れはじめた。
「この匂い!シチューね!この鎖を早く解きなさい」
騒ぎ始めたルナに私は、近くまで行き二人を見下ろしながら自慢げに言った。
「そうだよ、今日のわ・た・し・のご飯はお肉たっぷりのシチューなんだ」
「「お肉たっぷりシチュー……」」
「でも、これは私のご飯で、私を仲間外れにした二人のご飯は無しでーす」
「この変態吸血鬼!変態!エッチ!バーカ!」
「淫乱鬼畜吸血鬼」
「ふーん、二人ともそういう態度取るんだ……」
私は未だに、鬼畜や変態だの騒いでいる二人を無視し、食事を始めた。
わざとらしく、二人に見えるようにゆっくりとシチューを冷ましながらおいしそうに食べていく。
「あぁ~とってもおいしいなぁ」
私はそのまま二人を無視し続けながら食事をし、二人の鎖を解くことなくそのまま眠りについた。
アリスが寝たあと、鎖で縛られた二人は、あまりの空腹に寝れずにいた。
ぐーぐーといびきではなく、お腹が空腹を訴える。
「ご飯の恨み、明日覚えてなさいよ」
「ルナ、ここは反省したふりをしないとダメ。じゃないとあの鬼畜は朝ご飯も抜くかもしれない」
「そうね、でも——」
「わかってる。あの鬼畜に絶対復讐する。私達を穢し、ご飯を抜いた恨みは晴らす」
「そうね。これまでの狼藉……いつか必ず復讐を果たすわ」
「「いつか、あの腐れ変態鬼畜吸血鬼を犯してやる」」
二人は頷きあうと、いつか来るであろう復讐の機会のための作戦会議を二人だけで始めた。
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