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禁眼の吸血姫  作者: 榛名 怜
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第十八話 日常side勇者

本編がひと段落しましたので、ここから数話、勇者たちのお話の予定です。

評価、ブックマークよろしければお願いいたします。

月曜日それは、私にとって憂鬱な日々の始まりであった。

おそらく大多数の人たちは、昨日までの至福の時を想い、今日から始まる一週間を憂いていることだろう。

労働に励む大人達ならいざ知らず、一般的に青春時代という人生の中で最も若く活発なときである、高校生である私ですら月曜日は憂鬱なのだから。



私、『天野あまの ひじり』は、パソコンに映し出された時刻を確認した。

時刻は、早朝の六時を示し、締め切ったカーテンの間からは、朝の陽射しが部屋に差し込む。

私は徹夜明けの目を擦りながら、背を伸ばした。

私は俗に云う『オタク』である。

だが世間一般的に言う『オタク』とは、私は違うと自負している。

彼らの様な深い知識もなければ、情熱もない。

私は、ただ漫画やアニメ、ラノベ、ゲームが好きなだけで、昨日(すでに今日だが)も私はパソコンのウェブ小説に夢中になってしまい徹夜してしまったのだ。

『好きなものを浅く広く楽しむ』を信条に日々を送っているのだが、そんな私の楽しみを奪う学校は私は嫌いである。

嫌いな理由は、他にもあるのだが、入学した以上は嫌々ながらも通学しなければ親にも申し訳ない。



私は、普段通り、いつもと変わらない通学路を歩く。

通学路の途中にある交差点で昨夜読んだ小説の場面を思い出す。

大きなトラックが追突してきて自分も物語の主人公の様に別の世界に行けないものかと。

しかし、当然のことながらそんな非日常は起こることはなく、私は学校に今日も無事に登校してしまう。


教室に入ると、皆が一斉に私の方を見た。


「おはよう、天野さん」

「よっ、天野」

「おはようございます。天野さん」

「お、おはよう。みんな」


クラスのみんなは、私に笑顔で挨拶をしてくる。

そう。これが私の学校に来たくない理由だ。

周囲は私のことを、容姿端麗、品行方正、成績優秀、スポーツ万能の美少女と思っている。

確かに私自身、顔も整っている方であると思うし、成績も上位である。

運動神経もそこまで悪くないと思うが、そのせいで私は常にクラスで注目を集め、はっきり言って居心地が悪い。

だが、それは小学校からのことであるのである程度は慣れた。

私の学校に来たくないのはコイツらがいるからだ。


「オハー、ヒジリン」


私の机になぜか座っていた、緩くウェーブのかかった茶髪を肩まで伸ばし、制服をやや着崩した今風のギャルのような見た目をしたクラスカースト最上位の『神崎かんざき 亜由美あゆみ』が私に抱き着いてきた。

私は今すぐ払いのけたい欲求を必死に耐え、顔に出さないようにできるだけ穏やかにで彼女に言った。


「神崎さん、はなしてください」


私がやんわりと引きはがそうとしていると私の苦手な少女二人目がやってきた。

『北条 凛』神崎と同じくクラスカーストの最上位に立ち、神崎とは真逆に真っ直ぐに伸びた黒髪を後ろで結び凛々しく男女問わず人気があり、成績上位者、バスケ部のエースという人生の勝ち組である。


「そうよ。聖が嫌がっているわよ」

「そんなわけないじゃん。私とヒジリンは相思相愛なんだから」

「ごめんなさいね。この子は後でシバいとくから。ほら行くわよ」

「んにゃーヒジリン、ヘルプ―」

「あ、はははは」


誰が相思相愛だ。と喉まで上がってきた言葉を飲み込みながら、空笑いをした。

そしてついに私の学校生活の最大の障害が私のもとに訪れた。


「やぁおはよう。聖。うん?どうした顔色が悪いぞ」


爽やかな笑顔と凛々しい声音で私の席までわざわざやってきたのは、このクラスを取り仕切るカースト一位『結城ゆうき 勇也ゆうや』である。

眉目秀麗、成績優秀でサッカー部に所属し、一年でレギュラーを勝ち取るほど運動神経がよく、リーダーシップがありなど美点をあげればきりがないほど優秀なやつである。


今日も男子の取り巻きをひきつれ私の前に恥ずかしげもなくやってくる。


「おはよう、結城さん。少し寝不足なだけだから心配しないで」

「それは、よくないな。そうだ今度、安眠にいいアロマをあげるよ」

「えぇーと、ありがとう」

「気にしないでくれ、君の安眠のが大切だからね」


このクラス、いやこの学校の中において神崎、北条そして一応私は三人は学校トップ3の美少女として全校生徒に認知されておりその名が広まっている。

そして、結城は学校一のイケメンとして校内だけではなく、校外から告白されるほどのモテ男である。

ここまでは別に私としても仕方ないと思ってしまう。

持って生まれてきた容姿に能力のだから。

だが、私が気にくわないのは、私が結城裕也の彼女の様に扱われることだ。

私は一人で自分の好きなことをやりたいのに、彼が毎日付きまとうせいで、誤解を生み、噂が独り歩きしているのだ。

結城も噂に便乗するかの様に振舞っているのもひどく面倒な事態にしている。

お陰で私はまるで、この学校ではお姫様の様に頼んでもいない飲み物やお菓子の差し入れ、いつの間にかそばにいる取り巻き達のせいで自由を制限される。

神崎は、私に引っ付いてきて、私を利用して可愛い自分を周囲に見せびらかし、私とじゃれる様子をアクセサリーの様に自慢する。

北条は、まだまともな方だが、何か恨みがあるのか、時折私への目つきが獲物を狙る獣のように鋭くなるように感じがする。

彼らとクラスが一緒になってしまったのは、本当に不幸だと思う。


その後も私の机を取り囲むように、皆が集まり口々に会話を振ってくる。

毎度のことながら、私は顔に笑みを張り付けながら会話を流していく。

私の周りに漂う賑やかな雰囲気に辟易していたとき、皆の雰囲気がガラリと変わった。

それは登校のチャイムギリギリに教室にある男子生徒が入ってきたからだ。


「よぉキモオタ。随分遅い登校だな」「どうせ、夜中までエロ小説読んでたんだよ」

「ごめん」

「越前、お前はそんなものを読んでる余裕ないだろう。少しは努力しろよ」

「ごねん。結城君」


『キモオタ』と罵られた男子生徒『越前えちぜん 瑛太えいた』は、別に罵られるだけのことをやったというわけでもない。典型的なデブ面でも、ブサ面でもない。むしろ中性的な見た目をしている方であろう。

大人しい無害そうな彼を結城をはじめとした男子生徒たちがなじり、女子はそれを見て笑っている。

神崎や結城がカースト上位なら越前はカースト最下位、クラスの中での地位が一番下なのだ。

クラスでの決め事で嫌な事柄は、ほとんど彼に回され、ストレスのはけ口にされている。


だが、最初からこんな風になってしまったわけではない。

彼がこんなことになってしまったのは、否、こんな状況に置かれたのは私のせいである。

クラスでの私は基本ボッチである。

だが周りからは、私は孤独な奴ではなく、孤高の存在、高嶺の花の様に思われていた。

かつての私はそのことに気が付かず、彼の読んでいたラノベに興味を持ち思わず話しかけてしまった。

それがおそらく引き金だったのだろう。

彼は次の日、顔に傷をつけて登校してきた、そして彼に対するいじめが始まったのだ。

私のせいでいじめられているのを知るのに時間はかからなかった。

彼らは、私が興味を持っていたラノベを必要以上に責め立てていたからだ。

それを理解した時、私は一度クラスのみんなを諫めようとした。

だがそれは、逆効果でいじめはより陰湿で過激なものへと変化し彼を苦しめるだけであった。

それ以降、私は彼に対しては、表向きは無関心でいることにしている。

これ以上彼を苦しまないように……。


私は、カバンから本を取り出すペラペラとページをめくっていく。

私が読んでいる本は『Macbeth』ウィリアム・シェイクスピアによって書かれた悲劇の話である。


私はここが嫌いだ。

私の好きなものバカにして、私の好きなものを好きな人を傷つけるここが嫌い。

好きなものを好きと言えずに、好きなことすら隠さないといけないここが嫌い。


いっそのことここから離れ、どこか遠い所に行きたい。

遠くこことは別の世界に行きたいと、そんなSFを窓の外を見ながら妄想していた。

しかし、そんな妄想すら中断する様にチャイムの音と共に教師が教室に入ってきた。


授業中も私は黒板に書かれた化学式を板書しながら朝の妄想の続きをしていた。

こことは違う世界、異能力や超能力みたいな世界なら楽しそうかな。

いや、異世界と言ったらやっぱり剣と魔法のファンタジー世界が王道だなぁ。

そんな夢みたいな非現実的な夢を妄想しているときだった。


教室の床が急に光出し、白や黄色、赤、青色の円環や幾何学的な図形、見たことのない文字が現れた。

私は床を見た瞬間、身体が凍ってしまったかのように動かなくなり、言葉すら発することができなくなった。

周りの生徒も同じ様子で皆固まって、動かなくなってしまった。

『これは魔法陣なの?』

私は先ほどまでの妄想が現実のものとなったのかと驚いた。

そして床の魔法陣らしきものは徐々に輝きを増していき、ついに臨界に達したのか。

光が教室を埋め尽くした。


そして教室には、誰一人いなくなった。


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