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禁眼の吸血姫  作者: 榛名 怜
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第十五話 強襲

洞窟の入り口でみすぼらしい服装をした男たちが立っていた。


「はぁなんで俺らが見張りなんだよ。」

「仕方ないだろ、俺らは下っ端なんだよ。はぁ今頃、上の連中は攫ってきた女たちで遊んでんだろうな」

「あぁ俺もやりてぇなお前もそうだろ」


男たちが下卑た会話をしていると洞窟の近くの茂みがガサっと揺れた。


「おい!そこに誰かいるのか」


見張りの男たちは、腰にぶら下げた剣を抜き茂みの近くを警戒した。

見張りの一人が先ほど揺れた茂みに近寄っていくと、ひょっこりと赤い目をしたウサギの魔物が姿を見せた。


「なんだよ。ホーンラビットか。ビビらせやがって」

「馬鹿なやつだな。サクッと殺して腹の足しにしてやるぜ」

「されじゃあ、サクッと死んでくれや」


男は特に警戒することなく、ウサギの魔物を仕留めようと剣を振り下ろした。

そしてぽとっと男の頭が落ちた。

ウサギの魔物は跳躍し、男の首を角で切り落としたのだ。

男は警戒をするべきであったのだ。

普通のウサギの魔物は、体が小さく多少素早く動ける程度の生き物であり、子供でも狩ることできる比較的おとなしい魔物ではある。

現れた魔物の眼が普通の魔物と異なり、血の様に赤く輝いたことに。

動く死体(リビングデッド)と化したホーンラビットは通常種とは異なり痛みを感じず、恐怖を感じない主の命令をただ実行するだけの人形である。


そして主から受けた命令は『人間の抹殺』であった。

人形ではあるが知性をもつ、どうやれば仕留めることができるのかをきちんと理解している。

相手の油断を誘い、わずかな隙をつき、一撃で仕留める。

結果、見事に一人目を屠ることに成功した。


仲間の首が落とされたのを見た男は怒声をあげた。


「は、嘘だろ。ふ、ふざけんな――」


男も剣を抜き放ちウサギの魔物を見据えた。


『キュイィィィ』


突然、ウサギの魔物が鳴いた。


「いったい何なんだ」


ウサギの魔物が当然鳴きだしたわけがわからず、辺りを警戒した。

ウサギが鳴いた理由はすぐわかった。

深紅の瞳をした魔物達が洞窟の入り口を囲むように続々と出てきた。

ウサギの魔物だけではない、鳥、狼、熊の魔物が出てきた。


「こ、こんなの無理だ。うわぁぁぁぁぁぁ」


男は恐怖からか何度も転びながら、大急ぎで洞窟へ走っていった。






「おいおい、なんだか外が騒がしいなぁ」


女を犯していた男の一人が洞窟の入り口の方向に目をやると、息を荒げながら男が走ってきた。

走ってきた男は大急ぎでここに来たためか、恐怖のせいか、汗をびっしょりとかいていた。


「あ、兄貴。ま、魔物の群れがこっちに押し寄せてきやす」

「なんだと。魔物だぁ。そのくらいてめぇらで片づけやがれこっちは今、楽しんでるのがわかんねぇのか」

「それがでけぇ普通の魔物じゃないんす。真っ赤な目をして、狂暴な魔物なんすよ。仲間がそいつらに……」

「見張りが死んだか、仕方ねぇな。おい旦那を呼んで来い。たかが魔物程度、旦那一人で十分だ」

「わ、わかりやした」


兄貴と呼ばれた男は、魔物を旦那と呼ばれる人物に任せるように言うと再び女を襲った。





見張りの男は洞窟の奥にある部屋にいる、一人の人物に会いに行った。

洞窟内には扉はない。部屋は布で簡易的に仕切られているだけのものである。

けれども見張りの男は目的の部屋の仕切りの前まで来ると、中には入らず膝を付き中にいるであろう人物に話しかけた。

中の人物は同じ山賊ではないからだ。

資金の多い商人たちは、自衛のために冒険者を雇い一時的な用心棒とする。

しかし、何も用心棒を雇うのは、商人だけではない。

資金のある山賊は、より利益を上げるために用心棒を雇うのだ。

中にいる人物は、ここの山賊が雇った用心棒である。

ここにいる山賊の誰よりもレベルが高く戦闘狂であるが、実力は申し分ないため戦闘時には必ず力を借りていた。


「失礼しやす。だ、旦那、出入口に狂暴な魔物の群れが現れやして……」

「俺にそいつらを排除しろってか」


部屋の中から聞こえる野太い声に見張りの男はブルっと震えた。


「す、すいやせん。俺達じゃ手に負えねぇんです」

「お前らはクソ雑魚だからしゃーねぇよ。しかたねぇーなー」


旦那と呼ばれた男はガツガツと音をたてながら、部屋の中から出てきた。

出てきた男は、顔に大きな獣に引っかかれたような傷跡を持った筋骨隆々の大男であった。

その手には二本の大きな斧を持ち鎧などは胸と腰に最低限のみであった。


「それじゃ仕事するかぁ」






洞窟の出入口では魔物達と山賊達が戦っていた。

既に山賊達は数人の犠牲者が出ていたが、それ以上に地面には魔物達の死体が転がっていた。


「なんだよ、余裕そうじゃねぇえか」


旦那と呼ばれた人物の登場に山賊達は歓声を上げた。


「旦那!全然、余裕じゃねぇですよ。こいつら頭潰さねぇ限り襲いかかってくるんですよ」

「そうっすよ。足切り落としても全然怯まないんっすよ」

「なんだそりゃ。アンデッドか。まぁそんなの俺には関係ねぇがな」


大男は手に持った斧で次々と魔物を屠っていく。


「なんだ、全然歯応えねぇな」

「旦那!危ない!」


大男に狼の魔物と鳥の魔物が同時に襲いかかった。

背後と上空から同時攻撃に気づいた山賊が叫んだ。


「そんなわかってるっての」


大男は背後を振り向かずに、右の手に持った斧を一振りした。

そのひと振りで上からの迫った鳥の魔物を両断し、狼の魔物の頭を潰した。


「それで次はどいつだぁ」

『グァァァァァ』


大男の挑発に応えるように熊の魔物が咆哮した。


「ほぉ、お前がこいつらのボスか。少しは骨がありそうだな」


熊の魔物がもう一度咆哮をすると、他の魔物達が一斉に大男に押し寄せた。


「甘い、甘過ぎるぞ。雑兵がいくつ群がろうと俺は倒せねぇんだよ」


大男は押し寄せる魔物のことごとくを両手の斧で両断していく。

魔物達は、一匹たりとも大男に触れることすらできず、斧の射程に入った瞬間に潰された。


「オラオラどうした!」


大男は、大きな斧を高速で振り回しているのにも関わらず、息を乱す気配すらなく、魔物を煽る余裕すらあった。

魔物達は潰されるとわかっていても、果敢に突進をしていく。


「だから意味がねぇって言ってん……」


大男は、その言葉を言い終わる前に炎に包まれた。

他の魔物達を囮に使い熊の魔物は、魔力をため炎の魔法を大男に放ったのだった。

熊の魔物は、炎に包まれた大男を熱で赤く光った爪で切り裂こうとした。


「調子に乗るな雑魚がぁぁぁぁ」


炎に包まれながらも、男は熊の腕を根元から切り落とした。

男はしてやったりと熊の魔物を笑った。


しかし熊の魔物は、そんな男の態度をあざ笑うかの様に不敵に笑った。

熊の魔物は大男にさらに接近し、自ら炎を纏いそして爆発した。

熊の魔物の起こした自爆攻撃は近くにいた大男はもちろん近くで戦闘をしていた山賊達をも巻き込んだ。


「う、腕が俺の腕がぁぁぁ」

「俺の足が、いてぇいてぇよ」


熊の魔物が起こした爆発は爆発自体の威力もさることながら、巻き上げられた礫や剣などが奥にいた山賊達にも被害をもたらした。

爆発で戦闘に参加していた山賊のほとんどが負傷し爆心地の近くにいたものは死亡した。

しかし、一番爆心地にいた大男は両腕の肉は、骨が見えるほどえぐれているにも関わらずに生きていた。


「はぁ、はぁ。あのクソ熊自爆しやがりやがってふざけんな!」

「へぇ、炎で焼かれても、目の前で爆発されても、死なないなんてとんだ化け物だね」


返事を期待したわけではない。

ただ苛立ちから口に出した言葉に返事が返ってくるとは思わず、一瞬固まってしまった。

それが先ほどまで魔物が大量に入ってきた出入口からフードを深く被り全身をローブで隠した人物がいて、なおかつ少女の声であったためというのもあるだろう。

しかし、その硬直は致命的であった。

少女、私は、収納魔法から剣、ロングソードを取り出しながら大男に急速に接近した。


「てめぇなにもんだ」

「さぁもうすぐ死ぬあなたには関係ないよ」


私は剣の鞘を大男に投げつけ一瞬、大男の視線を遮った。


「なめんじゃねぇぞ」


大男は投げつけた鞘を傷だらけの腕でいとも簡単に斧を振るい粉砕した。


「あまいって言ってんだろ……あ?」


鞘を粉々に砕き私に一撃をくわえようとしていたが大男の前に私はいない。

私は、視界を遮ったとき大男の側面に回り込んでいたのだ。

そして、剣の届く範囲まであと僅かというまで接近することができた。


取った……私は、奴の首を落とそうとした。

しかし、次の瞬間私の水晶の眼には、斧で斬り裂かれた私が映った。


とっさに私は距離を取った。


私の回避とほぼ同時に大男は斧を振り下ろした。

回避したことで辛うじて大男の一撃を避けることができた。


私を見失った大男は驚きはしたものの、決して動揺はしていなかった。

それどころか大男は奇襲に対して反撃をしてきたのだ。


「チッ勘のいい奴め。素直に奇襲してくれば楽にしてやったのになぁあ」


大男と距離を取ったことで、斧の間合いから脱することはできたが、それは同時に見方を巻き込まずに弓を射ることができる距離でもあった。


「く、くらいやがれ」


山賊達が私に矢を放ってきたが、私には一本たりとも当たらない。


未来を視る私の【玻璃ノ未来(ラプラス)】の前では矢を回避するなど造作もないことである。


「手出すな!こいつは俺が殺す。てめぇらはこいつの仲間がいないか警戒しろ」


山賊達は大男に言葉に従い矢を射ることやめ周りを警戒した。

私は、周りを警戒し始めた山賊達を見て薄っすらと笑みを浮かべた。


警戒しても無駄よ。二人は見つけられるわけないんだから。


二人はじっと私達の戦闘を洞窟の岩陰から見ていた。


『ねぇ全然気づかれないのね』

『うん。姿、匂い、音、魔力も遮断する魔法すごい』

『確か【不可視の新月(フルインビジブル)】触れられない限り姿形を隠蔽する魔法……』

『時間制限もあるけど不意討ち、暗殺には十分でも……』

『えぇ今回はここで見学よね。まだ私達じゃ足手まといだものね……』


ルナは少し落ち込んだ様子をしたが、仕方がないことだと割り切ることにした。


『それより何あの大男、強すぎない?』

『強いけど大丈夫。アリスのがもっと強い』


アリスを心配するルナに対して、ノアはまるでアリスが勝つと信じきっている様子で言った。



戦闘シーンって難しい……

次回の投稿は、火曜日の12時の予定です。

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