01:「これで焦らない奴は相当大物だよな」
西暦三千五百年十二月三十一日、日本。文明が進歩し便利な道具が行きわたり、人間が何一つ不自由なく何もせずとも生きられるようになった時代。
家事など身の回りのことは機械がやり、事務や商売など様々な仕事も機械がするようになった。することのなくなった人間は暇な時間を過ごしていた。そんな世の中になったせいか金という観念は廃止され何でも好きなものも手に入るようになった。
そのせいか自然と犯罪などもなくなり、人々は恐怖という感情すら感じたことがない。医療も進歩したせいか、今や病気という言葉すら知らない人間の方が多い。
そんな、まるで楽園のような世界の中で、一人の少年が生きていた。名前は海賀 俊。他の人間と同じように何一つ不自由の無い世界で、何も考えず、自分では何もせず、ただ暇な時間を生きていた。まさか明日、大変なことが起こるとは思いもせずに。
「今日は葵と約束があるんだよな」
俺こと海賀 俊は友達である恵崎 葵、ちなみに女みたいな名前だか男だ、の家へ急ぐために、ホバーボードの速度を飛ばしていた。と言っても急いでいるわけではないが。
ホバーボードというのは簡単に説明してしまうとその名の通り浮いている板で、本気を出せば何百キロも速度が出せるほどの乗り物で、昔でいう自転車とかいう乗り物と同じ役付けだ。
乗り物の中で一番普及率が高く一家に一台はある乗り物で、手軽さと出せる速度で人気の乗り物だ。そんなに速度を出して事故したりしないのだろうかと思われるかもしれないが、ホバーボードは目的地を入力するだけで走る自動運転で、他のボードにぶつからず走るようにインプットされているため事故は一件もない。
今日は西暦三千五百一年一月一日、元旦の祝いを友の家でしようと俺は葵の家に向かっているという訳だ。と言っても特に特別なことはやらないが。
「ふう、ついたな」
ボードに乗り込んで一分も経たない内に葵の家に到着した。ボードから飛び下りて鍵を閉めると俺は葵の家の扉をノックする。すると俺以外誰もいないのに扉が勝手に開いた。だが俺はそれに驚くことなく家の中へお邪魔する。別にこれは驚くべきことではない。
「やあ、俊くん。思ったよりも早いね」
廊下の突き当たりにあった扉を開けると、葵が床に転がって煎餅を齧りテレビを見ながら出迎えてくれた。これが人を出迎える態度なのか。
そう思った途端俺が部屋に入ってきたときに開けた扉が勝手に閉まり、俺の目の前に座布団とお茶が現れる。俺はその座布団に座ってお茶を一口啜った。なかなか良いお茶だ。
誰もいないのに扉が開いたりしまったり、お茶と座布団が現れたり、何が起こっているのかというと、家の所有者は自分の所有している全てのものを念じるだけで動かしたりできるのだ。要は自分の家でテレビ付けと念じるとテレビが付き、飯食べたいと念じると料理が出来る訳だ。
「さあて、それじゃあ何する?」
「何するって言っても、別にすることなんてねえだろ」
「それじゃあ暇つぶしにトランプでもしようか」
葵がそう言ったその瞬間、彼の手にトランプが現れる。何もしていないのにトランプが高速でシャッフルされたかと思うとそのうちの半分が俺の元へと飛んできた。
「ババ抜きでもしようよ。僕、結構ババ抜き強いから」
葵がババ抜きが強いのは本当だ。確か負けたことが一度もないらしい。カードを捨てている葵の顔は真剣だ。これはなかなかの強敵のようだ。
頑張らなくてはと思いながら自分の手札を見ると、捨てられるカードが殆どなかった。新年早々俺は運がないようだ。
勝負は葵の圧勝。開始から五分足らずで勝負の結果が付いてしまった。流石自分で強いというだけのことはある。
「勝ったのはいいけど、別に嬉しくないや」
「お前そんなに勝ってるのか?」
「うん、何時も暇な時はババ抜きやってたし」
そんなお前が羨ましいよ。そう思いながら葵に何をするか聞くとテレビを見ると彼は答えた。そういえば、勝負中ずっとテレビが付きっぱなしだったのか。
丁度良くお気に入りのアニメがやっていたので、テレビを見ようかと思ったその時だった。
「番組の途中ですが、臨時ニュースをお届けします」
突然チャンネルが変わりニュースが始まってしまう。でたよ、様々な番組の敵、臨時ニュース。
適当に聞き流そうかと思ったのだが、そのニュースで発せられた言葉は信じられないものだった。
「文明の発達で現在我が国は不自由ない暮らしを送っていますが、そのせいで自分で考えて行動する力が現代人から無くなっていっていることを危険に思った政府は、時代を過去に戻すという計画を立てた模様です。具体的にどういうことかというと、身の回りの物や道具を過去の、西暦千年の平安時代まで戻し、現代人に自分の力で生きていく力を持たせる計画ということらしいですが、詳細は不明です」
分かりにくいが、俺には何とかその言葉の意味が理解できた。要は身の回りの物や今の生活を約二千五百年前の西暦千年まで戻す、という計画を実行するようだ。
確かに今の日本は不自由なく暮らせすぎて、自分で考えて生きる必要がない世の中になっているし、そうすれば自分で考えて生きれる人間になるかも知れない。だが、そんなことは普通無理だし、例えるなら温室育ちの坊ちゃんを猛獣の生息するサバンナに放りだしたらどうなるだろう。それと同じくらいこの計画は無茶だ。
どうなっているんだと焦る葵に戸惑いを隠せずに汗をかいてきた俺、暫くその状態が続く。まあ落ち着こうとようやく少し落ち着きを取り戻したとき、突然俺達の体は光に包まれた。
あまりにごちゃごちゃすぎて読者の皆様は何が起きたか分からないと思います。申し訳ありません。
要は自分の身の回りの物や生活が平安時代になってしまう訳です。しかもそれを体験するのは現代人ではなく自分では何もできない未来人。というお話です。
幼稚な文章で綴るあり得ないお話ですが、どうぞ最後まで楽しんでもらえたらなと思います。
というか結構眠いので、文章が手抜きぎみだったり無茶苦茶だったりしていると思います。というかしてます。