あぁ。
初投稿でドキドキですが、多くの人に読んでいただければなと思っています。笑笑
知らない歌が聴こえてくる。
綺麗な声だ。でも、悲しい歌だ。
真っ暗な世界の中で、月のスポットライトを浴びて彼女は歌っていた。
ポタポタと目から美しい雫を零して。
『どうして泣いているんだい』
そう問いたくて、彼女の涙をとめてやりたくて、
伸ばした手をとめた。
私の目に入ったのは鋭い爪の生えた毛むくじゃらの醜い手。
そして泣いてる彼女を慰めようと開いた口からは地の底から響いてくるような汚い唸り声。
あぁ。私には出来ないのだ。
泣いてる彼女に優しく理由を問うてやることも、
震える身体を抱きしめて、共に泣いてやることも。
お願いだ。ここから消えてくれ。
その歌も、その涙も、今の私には憎く思える。
これ以上、私を醜い生き物にしないでくれ。
君のような綺麗な声が、手が、顔が……
なぜ私にはないのだろうか。
なぜこのような容姿をしているだけで、
こんなにも窮屈な思いをしなければならないのだろうか。
あぁ。憎い、美しいものが、愛される者が。
あぁ。憎い、こんなにも汚れたこの私が。
気づいた時にはもう遅かった。
彼女は息絶えていた。
もう歌は聴こえない。
月も雲に隠されてしまった。
また一人、殺してしまった。
何かをひとつ、壊してしまうたび、
自分の身体が、心が、更に醜くなっていくような気がした。
読んでいただきありがとうございました!
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