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STAGE  作者: 今野 英樹
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Stage 2013 Part2

後日、祥二に電話で美空の結婚の報告と、結婚式での演奏の件を相談すると

「へー、良いんじゃない。俺達も佐川さんにはいつも世話になってるし。」

と、賛成してくれた。

「でも、考えてみると、俺達のレパートリーに結婚式に相応しいような曲が無いんだよな。」

そう、そこが一番の問題。

俺がそう言うと祥二がちょっと考えてから

「・・・そうだねえ、折角だから純ちゃんと陽子ちゃんで曲を作ってプレゼントしてあげたら?」

「えっ?」

何を言い出すんだお前は?

これまで俺達の曲は、俺が作詩をして、祥二がそれにメロディを作曲してベースとギターでだいたいの曲の原型を形作って、それを陽子と信吾がそれぞれのパートを付け足すという、ぶっちゃけ祥二任せの産物だった。

・・・それを俺と陽子にやれと?

そんな不安を祥二に伝えると、笑いながら

「純ちゃんはともかく、陽子ちゃんのピアノは本物だし、ロックだけの俺よりクラシックとかジャズとかもバックボーンにある陽子ちゃんの方が適任だと思うよ。」

・・・無邪気にディスられた。

まあ、陽子を褒めてくれてるからプラマイゼロか。

「・・・わかった、陽子に相談してみるよ。」

祥二との電話を切り、陽子に祥二の提案を伝えると

「わかったわ、やってやろうじゃない!この陽子様に任せなさい!」

俄然乗り気だ。


「ねえ、ここはこんな感じでどうかしら?」

陽子がキーボードで何小節か奏でる。

「うん、良いんじゃないか。」

俺が頷くと陽子が嬉しそうに

「じゃあ、次はこんな感じかしら?」

調子づいてキーボードを叩く。

「・・・いや、俺そんな急に高い声出せねえよ。機械じゃ無いんだから。」

「アハハ、そうよね。・・・もうちょっと低いところね。」

そんなこんなで二人で曲を作り始めたんだ。

つっても作曲はもっぱら陽子がキーを叩いて、俺はその音が出せるかの確認だけ。

奏でるメロディーラインも祥二が創り出すそれとはひと味違う、女性の感性ならではの優しい旋律のバラードに仕上がりそうだ。

そんなこんなで何日か掛けて出来上がった俺達、・・・主に陽子作のその曲に「STAGE」と名前を付けた。

女性として新たな「STAGE」に進む、美空へのはなむけの曲だ。

それと同時に、生まれてから十代、二十代、三十代、四十代と笑い、泣き、怒り、悩み過ごしてきた俺達それぞれの「STAGE」、そしてこれからの「STAGE」を歌った曲にしたかった。

そして美空のキーボードの伴奏に俺のまだ未完成の歌詞の仮歌、まだ大半がハミングの曲のデータを祥二に渡し、アレンジを委ねる。

俺達のデモを聴いた祥二からは

「いや、さすが陽子ちゃん。凄いよ!俺にはこんな綺麗なメロディ書けないよ。」

と、陽子をベタ褒めだった。

・・・俺も協力したんだぜ?・・・まあ、良いか。

数日後、祥二から送られてきた曲のデータをパソコンで再生すると、イントロからAメロまでは陽子のピアノのみ、Bメロからスローなベースと手数の少ないライドシンバルで柔らかなグルーブを生む、、そしてサビに入るとちょっと哀愁漂うエレキギターも加わり分厚く盛り上がる情熱的なロッカバラードに仕上がっている。

陽子が作った時以上、さらに輪を掛けて良い曲に化けていた。

祥二に曲の感想をメールすると

「ありがとう!o(*^▽^*)o佐川さんの結婚式まであんまり時間が無いから、簡単なアレンジにしてみたよ!(〃⌒ー⌒〃)ゞ エヘヘ」

いやはや祥二、お前が一番凄いよ。

本当に町のパン屋さんか?

それからは祥二が作ってくれた音源データとスコアを基に、それぞれがそれぞれの自分のパートを練習するって作業に入る。

徹だけは祥二に呼び出されて特訓を受けているようだ。

俺には歌詞を100%にするって作業もあったけど、試行錯誤し、時には陽子の意見も聞きつつ、ちょっとクサくてちょっとダサい感じもするけど満足する歌詞に出来上がった。

・・・かな?

その後、全員が集まって練習出来たのはたったの一回だけだったが、徹も祥二の特訓の甲斐あってほぼほぼ仕上がって来ていた。


そして、美空の結婚式当日、俺と信吾の二人が”STUDIO AIR”から借りてきたドラムセットとアンプ類を信吾の軽1BOXに載せて、教えられた住所の教会へ到着した。

「・・・ここで、良いんだよな?」

予想外な目の前の光景に戸惑いながら、車のドアを開けながら信吾にたずねると。

「ああ、・・・合ってるはずだけど。」

信吾も車を降り、その建物を見上げる。

「うーっす!!」

そこへ俺達の背後から、それぞれギターとベースを背負った徹と祥二が歩いて到着する。

と、徹が

「・・・うわっ!何だこれ?随分ボロッちいな。」

笑いながら、俺達の思ってた感想を歯に衣を着せない表現で吐き出した。

そう、俺達の目の前には築何十年ぐらいなんだろ?異様に古ぼけた教会が建っている。

本当にこんな所で結婚式やるのか?

「・・・年季が入ってるって言いなよ。」

祥二が苦笑いしながら窘める。

「ま、まあ楽器下ろそうぜ。」

俺達が気を取り直して信吾の車から楽器を下ろそうとすると、掃除をしてたのか、ほうきを持った60歳ぐらいの神父さんらしき人が慌てて出て来た。

「あ、あのどうかされましたか?」

俺達の大荷物を見て驚いたようにたずねてくる。

「今日ここで式を挙げる佐川美空さんの友人で、演奏をすることになっているんですが。」

俺が答えると、神父さんはハッとしたように

「おお、そうでしたか。伺ってますよ。・・・ただ。」

神父さんが困り顔で言葉を濁した。

「ただ?」

俺が聞き返すと

「ええ、うちの礼拝堂は非常に手狭ですので、ドラムのような大きな楽器は置けないでしょう。・・・それと、電気を引いておりませんので、電気を使う楽器も使えないんですよ。」

「ええ?マジかよ?それじゃ演奏なんて出来ねえじゃん?・・・どうすんだよ?」

徹が呆れたようにぼやく。

どうすんでかすね?俺も聞きたいっす。

そんな俺達を尻目に祥二が

「しかしずいぶん古い感じの建物ですね。いつ頃の建造ですか?」

無邪気に質問すると、神父さんが待ってたかのように

「ええ、大正5年に建てられた建物ですよ。」

優しく返答すると

「うわーっ!凄いですね!」

純粋に感心している。

・・・いやいや、だから演奏どうすんだって。

「・・・どうしたの?」

そこへ陽子と美空が連れ添ってやって来た。

俺は陽子と美空に事の次第を説明した。

「お前、礼拝堂の下見とかってしてなかったのかよ?」

徹が美空に詰め寄ると

「うーん、値段だけ見てネットで予約しちゃって下見なんてしなかったわね。」

アッケラカンと言う。

「何だ?建物は古くせえのに、ネット予約とかって現代的な事してんのかよ?」

徹が笑うと神父さんは頭を掻く。

「とりあえず、中を見せてもらおうよ!」

祥二が目を輝かせて提案するが、きっとこいつの頭の中は古い建物への興味しか無いんだろう。

俺達神父さんに案内されて礼拝堂に入る。

そこは、長い年月を経て木材が黒っぽく変色し独特な黒い光沢を放っていて、いかにもな落ち着いた雰囲気を醸し出している。

そして全体的に黒っぽい風景に、ステンドグラスからの光が綺麗なグラデーションで色彩を与えている。

・・・確かに狭いな。

奥まった祭壇の傍らには、これまた年季の入っていそうなアップライトピアノが鎮座している。

「うわー、かわいいピアノ!」

陽子が歓喜の声を上げるが、どこがかわいいのかよくわからない。

「他の楽器はこの中に入っていますよ。」

神父さんが隣の小部屋を開けるとナイロン弦のクラシックギターが1本と、タンバリンとリングベルが数個。

それを見て祥二が、口を尖らせて

「チェッ、ベースは無いのか。今回は僕は出番が無さそうだね。・・・はい、徹君。」

と、徹にギターを手渡す。

ギターを受け取った徹はこれまた困り顔全開で

「いやいやいやいや、俺アコギなんて弾いたことねえから弾けねえぞ!・・・祥二お前が弾けよ!」

と、ギターを祥二に突き返した。

なんということでしょう!

我がバンドのギターの匠が、アコースティックギターを弾いたことが無かったなんて。

・・・アンビリーバボー。

ちなみにギターソロも弾けないんですけどね。

ギターを受け取った祥二がキラキラした瞳で

「良いの?・・・じゃあ、折角だから最初に考えたアコースティックバージョンにしちゃおうかな。・・・陽子ちゃんのピアノはそのままで良いよ。」

嬉しそうに声を弾ませ指示する。

「最初に考えたって?」

俺がたずねると

「うん、最初は曲調からアルペジオのアレンジを考えたんだけど、短時間で徹君にマスターさせる自信が無かったからやめたんだ。」

頭を掻きながら答えると、徹が

「何かよう、今の言い方だとお前が自信が無いって言いながら、俺をディスってるよな。」

眉をひそめながら問い詰める。

「・・・いや、そんなつもりじゃ。」

祥二が苦笑いしながら否定すると、その背後で信吾がタンバリンを手にし

「俺はこれか。・・・どう叩けば良い?」

祥二にたずねる。

「そうだね、・・・信吾君のフィーリングに任せるよ。」

「OK!了解した。・・・ほれ。」

と、返事をしながら徹にリングベルを手渡す。

「俺はシャンシャンベルかよ!まあ、しゃあねえか。」

手を振ってシャカシャカ音を出すと、陽子が

「調子に乗ってあんまり鳴らすんじゃないわよ?邪魔になるから。」

と、ぶっとくて鋭利な釘を刺す。

「へいへい、わかってますよう。・・・じゃあ、準備すっか。あんま準備もクソもねえけど。」

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