Blazing Transfer Student 1984 Part1
僕の名前は針須祥二、13歳の中学1年生です。
家はパン屋を営んでます、僕も将来継ぐ事になるのかな?
僕はクラスのみんなより体が小さくて、気が小さい事が悩みの種です。
僕のお父さんは背が高いんですけど、お母さんがとっても小さいんです。
それに、お父さんは昔この町内のガキ大将だったらしいんですよね。
きっと僕はお父さんの身体的な特徴は全然受け継がずに、お母さんに似ちゃったんですね。
小学生の頃は体が大きいか小さいかって差しか無かったように思えるんですけど、中学生にもなると肉体的に相当な個人差が出てくるんですよね。
子供からだんだん大人になっていくって事でしょうか。
学校での会話も中学生ともなると、何と言うかえげつない会話が多くなりますよね。
「よう、針須。お前チン毛生えたのかよ?」
「えっ?・・・ううん、・・・僕はまだ・・・だよ。」
「何だ、まだ生えてねえのかよ?ガキだなお前よ!」
「俺なんてこないだ夢精しちゃったんだぜ?」
「マジかよ?どんな感じだよ?」
「夜よ、寝てたら何かこうチンチンの先が急に熱くなってよ。」
「ふんふん。」
「気がついたらパンツの中がネバネバしてたんだぜ。」
「へーっ、お前すげえな!大人じゃん!」
「それに引き替え針須ってば、毛も生えてねえなんて子供じゃん。」
「・・・ハハハ、・・・そうだね。」
・・・こんな感じでからかわれます。
体の小さな僕は、成長も人一倍遅いようなんです。
同じ商店街の肉屋さんの蕪島君も、もう声変わりしてうっすらと髭も生えてきたって言ってるのに、僕はどんどんみんなに取り残されてる感じです。。
成長が遅いって事は、体力的にも大きな差が出て来るんですよね。
それでなくても僕は運動音痴なので、この体力差はよりみんなとの差をより大きくしてるんです。
「よう!校庭でサッカーやろうぜ。」
「おう!やろうぜ!」
「・・・あっ!僕も交ぜてよ。」
「針須か、お前下手だしなー。・・・まあどうしてもやりたいなら、お前サッカー部でルールは知ってるから、お前審判な。嫌なら来るなよ。」
「・・・うん、・・・わかった。」
こんな感じで、僕は徐々にみんなから仲間はずれにされるようになってきました。
お父さんは背が高くて、きっと喧嘩が強かったって言うからスポーツも出来たんでしょうね?
ああ、僕もお父さんのそんな所を受け継いでいればなあ。
・・・喧嘩は嫌いなんですけど。
でも、そんな僕にもお父さんから受け継いだ物があるんです。
それはギターの演奏です。
お父さんは昔、プロになろうって思うぐらいギターが上手で、小学生の頃からお父さんに教えてもらって、まあまあ上手に弾けるようになりました。
・・・お父さんには全然敵わないけど。
でも、いつかはお父さんみたいに上手に弾けるように、今日も一人公園のベンチに座ってギターの練習をしています。
そう言えば今日は僕のクラスに転校生が来るって噂だったのに、その転校生が登校して来なかったとか。
・・・暗くなってきたから、そろそろ帰ろうかな。
と、どこからかザーザーと激しく水の流れる音が聞こえてきます。
・・・水飲み場の方かな?
ギターをケースにしまい音のする方に行ってみると、水飲み場で下の蛇口からポリタンクに水を汲みながら、上の蛇口でがぶがぶ水を飲んでるスカジャンを着た男の子がいる。
その男の子はしばらくして水を飲み終えると、僕に気づきこっちを振り返る。
この近所では見たことの無い子、僕と同学年ぐらいかな?
崩れた感じのリーゼントに鋭い目つきの怖そうな子、その瞳は飢えた狼のようでした。
・・・いえ、飢えた狼なんて見たこと無いんですけど、何となく。
「何、見てんだよ?お前。」
彼が僕を診て不愉快そうに口を開く。
・・・まずい、怒ってるのかな?
「・・・えっ、その、・・・何をしてるのかな?って。」
「見りゃわかんだろ?水を汲んでんだよ。」
彼は僕を嘲り笑いながらそう言った。
・・・ホッ、どうやら悪い人じゃ無さそうだ。
「水を?汲んでどうするの?」
「あっ?風呂とか洗濯とかに水を使うだろうが?ここの水を汲みゃタダだ。」
その時、その子のお腹がグーッ!と凄い音を鳴らした。
「くそっ!水じゃすぐ腹減るな。・・・おっと、水も溜まったようだし、じゃあな。」
そう言い捨ててポリタンクを両手にぶら下げて歩き出した。
そして、クルッと僕の方を振り返り
「そう言えば、さっきギター弾いてたのお前か?」
「えっ?あっ、うん、そうだけど。」
「へー、なかなか上手いじゃねえか。・・・楽器を持ってるなんて、お前んち金持ちなんだな?」
そんな偏見もあるんですね?
「ううん、僕んちもお金持ちなんかじゃ無いよ。公園のわきのパン屋が僕んちなんだ。」
すると、彼は羨ましそうな表情で
「パン屋かぁー。くぅーっ!想像したら余計腹が減るぜ。・・・じゃあな。」
そう言うと、彼はまた公園の出口の方へ歩き出して行きました。
すると何歩か歩いてフラッとふらついたかと思うと、突然バタッと倒れたんだ。
「・・・えっ!?君大丈夫っ!?」
慌てて駆け寄ると、白目をむいて気を失ってしまったようだった。
大変だっ!!僕はお父さんを呼びに、無我夢中で駆け出しました。
「う・・・ん?・・・ここは?」
「あっ、気がついた?・・・良かったぁ。」
そこは僕の家の居間だった。
公園で気絶した彼をお父さんが抱きかかえ、僕の家へ連れ帰ってたんです。
布団の脇で、僕と一緒にその子の様子を見ていたお母さんが
「一応お医者さんに診てもらったら貧血だって、ご飯をあんまり食べてないみたいだけどどうしたの?」
と、優しく問いかける。
すると彼は恥ずかしそうに布団で顔を隠しながら
「俺んち、・・・母ちゃんと父ちゃんが離婚しちゃって、一昨日母ちゃんとそこの角のアパートに引っ越して来たんです。・・・母ちゃんが飯代を置いてってくれて仕事に行ったんですけど、弟と妹に腹一杯食わそうと弁当を買ったら、俺の分が買えなくて・・・。」
と、言うとまた彼のお腹がグーッ!と凄い音を鳴らしました。
するとそこへ、店じまいをしていたお父さんが上がってきて顔を覗かせる。
「そうか、腹減って目を回してただけか。じゃあ、飯食って行けよ。・・・母さん、俺達も晩飯にしよう。」
「・・・えっ?」
彼は目を丸くしてお父さんの顔を見上げました。
彼にしてみれば、事情はわかりませんが自分の両親の離婚で辛い思いをして、打ちひしがれていた事でしょう。
それを今日会ったばかりの、見ず知らずの大人に親切にされるのが不思議だったのかも知れません。
「はい、じゃあ布団片付けてテーブル出しましょうか。」
さっきの狼の面影は消え、鹿のようにキョトンとしている彼を尻目に、布団をたたみちゃぶ台を設置しそこへ料理が並ぶ。
ご飯に味噌汁に肉ジャガに漬け物。
お世辞には豪華とは言えない、僕の家のいつもの晩ご飯。
でもとっても美味しいんですよ!お母さんの肉ジャガは僕の大好物なんです。
「大したお料理は用意出来なかったけど、遠慮せず食べてね。・・・おかわりもあるわよ。」
お母さんが優しく促すと、
「・・・い、いただきます。」
それまで、遠慮してかどうして良いかわからずに下を向いて座っていた彼が、ボソッとつぶやきガツガツと食べ始めた。
それを見てお父さんが笑いながら
「ハハハ、よっぽど腹が減ってたんだな!・・・でも弟と妹の飯を心配して、自分の飯を忘れるなんて感心だな。・・・坊主、困った時は頼って来いよ。」
お母さんもその言葉に黙って頷きました。
お父さんは初対面の彼を妙に気に入ったようでした。
そう言えばお父さんがプロのギタリストの道を諦めたのは、お父さんのお父さん・・・僕は会ったことが無いお爺ちゃんが、お父さんが高校を卒業する頃に亡くなって、お父さんのお母さんのお婆ちゃんと、当時まだ小さかった弟の叔父さんを助けるために、家業のパン屋を継いだって聞いたことがあります。
・・・すいません、説明がややこしくて。
もしかしたらお父さんは、自分と似たような境遇の彼と自分を重ね合わせたのかも知れませんね。
・・・いや、当時の僕にはそんなことわかりませんでしたけど。
すると、彼はお父さんとお母さんの顔を交互に見回すと、涙ぐんで
「・・・ありがとうございます!!」
と叫び、むせびながらご飯を頬張りました。
晩ご飯が済んで帰る彼に、お父さんが今日売れ残ったパンを渡してあげました。
お母さんが彼に
「そう言えば、お名前を聞いて無かったわね?」
と言うと、彼はハッキリした口調で
「松ヶ谷・・・徹です。・・・本当にありがとうございました。」
と、深々と頭を下げ礼を言い走って立ち去りました。
お腹がいっぱいになって本来の彼が戻ったようでした。
そして、次の日学校に行くと、昨日来なかった転校生が登校してくるとの噂で持ちきりでした。
一時間目開始のチャイムが鳴り先生が教室に入ってくると、その後ろからピシッとしたリーゼントに鋭い目つき、改造学生服を着た転校生がついて来ました。
「・・・!!!」




