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STAGE  作者: 今野 英樹
26/44

Bad News 2013

さて復活後初めてのライブが決まった翌日、自宅のパソコンで祥二にもらったまだ詞の無い曲のデータを読み込ませて聴いている。

しかし祥二はこんな事出来るスキルがあるんだな?

仮にパン屋が駄目になったとしも、IT関係の職にも就けそうだな。

そんな事本人に言ったら、怒られそうだから言わないけど。

えーっと、詞か。

・・・こうやって改めて考えると、何も浮かばないな。

・・・・・。

・・・・・・・・・・駄目だ。

何も思い浮かばないし、隣のリビングから聞こえるTVの音が耳について集中出来ない。

まあ、首都圏のベッドタウンの狭い分譲マンションじゃしょうがない。

自分の集中力の無さをTVの音のせいにしてるようじゃ駄目だな。

・・・とりあえず、一服しよう。

リビングに行くと、陽子と樹莉亜が仲良くTVを見てる。

「あっ!パパ!」

「よう!・・・陽子、お茶ちょうだい。」

「今、入れるわ。」

樹莉亜の隣の椅子に腰掛ける。

「パパ、お隣で何してたの?」

・・・作詞とは言えないな。

「うん、・・・お仕事をちょっとね。」

「そうなんだー。お休みなのにお疲れ様ー。」

・・・我が娘ながらなんて良い娘なんだ。嘘をついたパパを許してくれ!

TVではちょうど番組が終わって、短いニュースをやっているようだ。

どこかの国の爆弾テロのニュースだ。

・・・物騒だな。

「ねえパパ。自爆テロの犯人さんて、爆発するの怖くないのかなー?」

樹莉亜が俺の方を見て尋ねる。

「うーん、どうなんだろうね?多分、人間はみんな死ぬって事は怖いと思うんだよね。樹莉亜も怖いだろ?」

「うんうん。」

「だけど、昔の日本のお侍さんもそうだったけど、何かのためなら死ぬのも怖くないって教育をされるんだ。例えばお侍さんだったら、自分のお殿様のためとか名誉のためとかね。」

「ふーん。」

「だから、この犯人達も自分達の目標のためなら、死んじゃっても怖くないって教育をされてるんじゃないかな?」

「そうなんだー。何か嫌だねー。」

ホント、嫌だねー。

日本も数年前の大震災のニュース以降、嫌なニュースばっかりが続いてるように感じる。

世界的に見てもそうだ。

最近、きな臭いニュースが多過ぎる気がする。

俺達ガキの頃って、こんなにバッドニュースばっかりだったっけ?

って言うより、そもそも俺がニュースに興味無かっただけか。

いつになるかわからないが、この子達が大人になって孫が生まれ育っていく、その頃にはバッドニュースが少しでも無くなってると良いよな。

おっ!そんな歌詞でも作ってみようか。

と、そんな事を考えてると、陽子が湯気の立つマグカップを差し出して

「はい、お茶入ったわよ?・・・何、ニヤニヤしてるの?」

えっ?ニヤついてた?

「あ、いや、祥二から宿題出されてた、作詞が全然思い付かなかったんだけどさ。樹莉亜と話してたら、ちょっぴりだけどヒントが見えたような気がしてさ。」

物騒なニュースを見て、浮かない表情をしていた樹莉亜が顔をほころばせて

「ホントーッ?やったじゃん!パパ!」

「ああ、ありがとう。樹莉亜のおかげだよ。」

樹莉亜の頭をポンポンすると

「エヘヘヘー。」

と、樹莉亜も嬉しそうに笑う。

反して、陽子が不満そうな顔で

「えーっ、何話てたのよーっ?」

・・・何だよ、同じ部屋にいて聞いてなかったのかよ?

お茶の入ったマグカップを口に運ぶ。

「でもさー?」

陽子が首をかしげる。

マグカップを口先で止めて

「どうした?」

尋ねる。

「パパ、お仕事してたんじゃなかったっけ?作詞って?」

「・・・あっ。」

動揺して手が震え、太ももにお茶がこぼれる。

「アヂッ!!!」

「キャッ!ママー!パパが大変!」

「・・・もう、何やってんのよ?」

・・・そんなこんなありまして。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


BAD

報復の連鎖 繰り返される過ち

武器があるから争うの?争うために武器を作るの?

転がり続けるジレンマの卵

この世界は

BAD Beauty and Dirty Birth and Death Bright and Darkness


BAD

狂った権力者 流れ続ける血の涙

主張が違うから憎み合うの?憎いから主張が違うの?

転がり続けるジレンマの卵

この世界は

BAD Beauty and Dirty Birth and Death Bright and Darkness


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


おっ!我ながらなかなか格好いいんじゃね?

って、自画自賛しててもしょうがないので、プリントアウトしてキッチンにいる陽子に見せに行く。

「陽子、祥二の作ってくれた曲用に詩を考えてみたんだけど、どうかな?」

陽子が腕を腰に当て偉そうに

「ふーん、どれどれ?」

ペーパーを受け取って読み始める。

そして、

「・・・題材的に重いわね?私、自分のパートはマイケル・ジャクソン的なポップなイメージでアレンジ考えてたんだけど?」

そりゃ初耳だ。

「そうなんだ?」

「ちょっとこの詞には合わないわねー。一から方向性変えた方が良いかしら?・・・ちょっとめんどくさいわー。」

「じゃあ、良いんじゃないの?その最初に考えてたアレンジで。」

「るさいわねーっ、聞いてもいないくせに。私が変えるって言ったら変えるのよ!」

・・・優しさのつもりで言ったのにー。

でも、めんどくさいと言いつつ何だか嬉しそうだ。

そしてエプロンを外しつつ、隣の部屋に向かうと

「よし!じゃあ早速アレンジ考えるわ!・・・覗いちゃ駄目よ!」

バタン!ドアが閉まる。

・・・鶴の恩返しかよ?

でも、俺の詞へのダメ出しは無かったな。まあ良しとするか。

・・・あ、ってかその部屋に籠もられちゃ、俺が祥二に歌詞送れないじゃん。

かと言って今入ると、もれなく怒られるんだろうな。

歌詞をプリントアウトした用紙を片手に、途方に暮れる。

あ、そうだ!Faxで送れば良いじゃないか。

たまたま俺ん家も、祥二宅もFax付電話だったのを思い出した。

とりあえず、携帯で「Fax送るよ!」とメールを送る。

・・・何か変だな?まあ良いか。

ウイーーーン・・・ガガ・・・ピーーー♪

よし、送信完了。

すると、数分後祥二から電話が来た。

・・・反応が早いな。

ピッ♪

「もしもし、純ちゃん?・・・歌詞読ませてもらったよ。」

「どうだった?」

「ってか、純ちゃん一体どうしちゃったの?」

ありゃ?祥二にはハマんなかったのか?

「・・・ダメだったか?」

「ううん、とんでもない!すごく良いよ!予想以上の歌詞つけてくれて、びっくりしたよ。」

まぎわらしいな、脅かすなよ。

「そうか、気に入ってもらえて良かったよ。」

「やっぱり純ちゃんに頼んで良かったよ。・・・そうそう、純ちゃんこれから出れる?」

特にこれと言った用事は無いな。

「ああ、大丈夫だよ。」

「じゃあさ、軽くやろうよ?」

飲みの誘いか。

飲むのは嫌いじゃ無い、どちらかと言うと好きだから断る理由も無い。

「OK!行こう行こう。」

俺達は待ち合わせの時間と場所を決めて電話を切った。

さてと、着替えと陽子に声をかけるため、隣の部屋のドアをそっと開ける。

こちらに背を向け、ヘッドフォンをしてキーボードに一心不乱に向かう陽子。

恐る恐る肩を叩くと、こっちがびっくりするような勢いで振り返り

「何っ!?覗かないでって言ったでしょっ!?」

ひえーーーっ!!凶暴な鶴だ。

「ごめん。・・・あの、ちょっと出掛けてくるよ。」

陽子がヘッドフォンを外しながら

「ふーん、どこ行くの?」

「祥二に誘われて、駅前辺りで飲むみたい。」

「ふーん、まあ祥二君なら安心ね。行ってらっしゃい。」

「うん、行って来ます。」

さすが町のパン屋さん、主婦からの信頼は絶大だ。

自宅を後にし、祥二と待ち合わせた駅前へと向かった。

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