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STAGE  作者: 今野 英樹
25/44

Ignition switch 2013

さて、俺達The Namelessが再結成して、約3ヶ月ほどが経った。

もっとも、陽子が再加入して全員揃ってからはまだ約1ヶ月だが。

一番ネックだった徹の演奏も、だいぶ上達してきたように思える。。

まあ、音楽にも徹にも辛口な陽子的には、まだまだみたいだが。

そんなある日、祥二から携帯にメールが入る。

メンバーに一斉送信されたみたいだ。

『次の練習日に重大発表がありまーす!ヾ(*´∀`*)ノキャッキャ』

・・・あいかわらず女子みたいなメールだな。

仕事を終え、家に帰り家族3人で食卓を囲む。

「祥二から陽子にもメール来たか?」

俺がたずねると

「来たわよー。」

と、陽子。

「何だろう?重大発表って。」

俺が聞くと、陽子が首をかしげながら

「・・・わかんない。私も祥二君に『重大発表って何?』ってメール返したら、『へへー、秘密だよー!(灬╹ω╹灬)』ってメールが返ってきただけだったわ。」

・・・陽子のメールの方が男らしいな。

「じゃあ、次の練習日まで楽しみにしとけって事か。」

陽子が微笑みながら

「そうみたいね。」


そして次の週末の練習日、STUDIO AIRのロビーに集合する。

祥二、信吾、そして珍しく徹も先に来ていて、俺と陽子が一番後の到着だった。

「おっす!俺達が最後か。」

「よう!・・・よし、これで全員揃ったな?・・・祥二、重大発表って何だよ?」

徹が急かす。

祥二が、笑いながら

「まあ、その話はオーナーさんから。」

オーナーがカウンターから現れてにこやかに

「こんにちわ!えっとね、まだ全員揃ってないのよ。ちょっと待っててね?」

あれ?俺達全員いるぜ?

・・・重大発表の相手って俺達だけじゃ無いのか?

オーナーと祥二以外、事態を飲み込めてない俺達は、顔を見合わせ首をかしげる。

その時、入り口のドアが開き、数人の少年達が入ってきた。

赤に青に緑に黄色、見覚えのあるカラフルな髪の色の少年達。

以前、ここで会った事のあるDEATH BOYS君達だ。

陽子の表情がピクッとこわばる。

オーナーがその空気を中和するように

「あら、こんにちわ!待ってたわよ!ささ、こっちに座って!」

と、俺達の隣の空いてるテーブルへ誘う。

・・・何だろう?

またオーナーと祥二以外、事態を飲み込めてない俺達は、顔を見合わせ首をかしげる。

それはDEATH BOYS君達も一緒のようだ。

不思議そうに、しかも不満そうな顔で俺達をチラチラ見ながら、言われるがままベンチへ座る。

オーナーが俺達を見回して口を開く。

「さて、これで全員揃ったわね!」

DEATH BOYSの赤い髪の少年が面倒くさそうに

「大事な話って何すか?」

「まあまあ、今話すから。はい、これ。」

と、俺達に何かのビラを配りながら

「実はね、知り合いのライブハウスさんで、対バンライブが開催されるの!それで、うちのお客さん代表で、あなた達2組に出てもらいたいと思って!」

・・・何だろう?どっかで見た展開だ。

祥二がきらきらした瞳で俺達を振り返って嬉しそうに叫ぶ。

「凄いだろ?俺達の復活後の初ライブだよ!」

ほう!25年前と同じような展開だが、ライブか!

こりゃ、楽しみだ!

「良いじゃん!俺はOKだ。みんなは?」

陽子もちょっと首を傾けて

「私はいつでも良いわよ?」

信吾も黙って頷く。

「俺もいけるぜ?・・・よっしゃ!いっちょやったるか!」

徹も威勢良く賛同する。

「じゃあ、祥二君達は参加ね?雷堂君達はどう?」

雷堂と呼ばれた赤い髪の少年は

「・・・はあ、俺達も良いっすよ?なあ?」

と変な髪の色の髪のメンバーを見回す。

その中の青い髪の少年が

「ああ、良いぜ?・・・ただよ、このおっさん達と一緒ってのが、何かなあ?」

それを聞いて徹が立ち上がる。

「あんだとガキども、あんま調子こいてっと泣かしちまうぞ?ゴレンジャーみてえな頭しやがって。」

ドスのきいた声ですごむと、DEATH BOYSはビビって、一斉に下を向いて黙ってしまった。

徹よ、お前は知らないだろうけど、髪の色とか根性とかはともかく、この子達は25年前のお前とネーミングセンスが一緒なんだぞ。

・・・と、それより彼らはゴレンジャーなんて知らないんだろうな?

「やめなさいよ!大人げない。」

先日BBA呼ばわりされて、彼らに苛ついてるはずの陽子が徹をたしなめる。

「・・・冗談だ、冗談。」

徹が苦笑いしながら座る。

・・・ああ、徹も大人になったなあ。

するとDEATH BOYSの一人がよせば良いのに、陽子に怒られる徹を見て恐る恐る言う。

「・・・あの、ぶっちゃけあなたの発言は、・・・そのぶっちゃけ脅迫とかに当たるんでー、ぶっちゃけ冗談じゃ済まないんすよ。」

「あ゛あ゛っ!?」

徹がさっきより殺気に満ちた表情で立ち上がる。

DEATH BOYSがまた一斉に青い顔をして下を向く。

「コラ!君たちも余計なこと言わないの!・・・ほらほら徹君、座って。」

「・・・チッ!」

徹がDEATH BOYSを視線で殺せるんじゃないかと思えるぐらいの、鋭い眼光で睨み付けながらまた座る。

オーナーが苦笑いしながら

「じゃあ決まりね!日程とかはビラの通り2ヶ月後だからね!・・・じゃあみんな頑張って!」


「さてと。」

オーナーの発表を聞いて練習スタジオに入ると、祥二が切り出す。

「とりあえず、第一の目標が出来たね。」

徹が、ギターアンプの上に腰を下ろしながら

「ところで、曲はどうすんだ?またいつものヤツか?」

祥二がニッコリと微笑んで、スマホを取り出す。

「ちょっと聞いてみて。」

祥二がスマホを操作すると、スマホから音が聞こえ出す。

ギターの音と、祥二の歌声のようだ。

曲調はハードロック的な気持ちの良い曲だ。

詞は聞き覚えのあるような無いような・・・。

「あれ?この詞は?」

「そう、前に純ちゃんが書いてくれた詞に曲を付けてみたんだよ。とりあえず、伴奏はギターだけで。」

徹が目を輝かせて

「すげえな祥二!俺がこれを弾きゃ良いんだな?」

「そうだよ。はい!これがスコア。」

祥二が徹に譜面を渡す、徹がそれを見て

「おい。このスコア、ギターとベースとヴォーカルしか書いてないぞ?」

信吾がのぞき込んでいぶかしげな表情で振り返る

「祥二、俺と陽子のは?」

祥二が苦笑いしながら、頭をかいて申し訳なさそうに

「ゴメン、俺もドラムはやった事が無いから、どうしたら良いかわからなくて。だからその・・・。」

信吾が天を仰ぎながら

「・・・自分のパートは自分で考えろってか?」

「エヘヘ、まあそんな感じで。」

やりとりを黙って見てた陽子が

「私もそんな感じなのね?」

祥二が捨てられた子犬のような目で陽子を見て

「・・・うん、お願いします。」

信吾と陽子がやや呆れたように

「はいはい。」

と、同時に返事をする。

「あの後もピアノでクラシックなら弾いてたけど、ロック系は私もブランクあるんだからね!」

陽子が怒ったフリで祥二に詰め寄る。

「でも、陽子ちゃんは流石に上手いよ。マジでリスペクトだよー。」

「ウフフ・・・そう?じゃあ、御期待に添えるように頑張っちゃおうかしら。」

声に出すと確実に修羅場になるんで言わないが、豚も煽てりゃ何とやらだな。

そして祥二がスマホを操作して

「それともう一曲。」

別の曲を流し出した。

ちょっと曲調が変わって、80年代のダンスミュージックっぽい、サウンドだ。

今度はベースとギターとハミングしか入っていない。

「純ちゃん、この曲は作詞も頼むね。」

信吾と陽子と祥二のやりとりを見てほくそ笑んでたら、すっかり意表を突かれた体だ。

「えっ?俺もか?」

祥二が40過ぎとは思えない無邪気な笑顔で

「そうそう、俺達はただの素人の集まりだからね。みんなで補い合いながら、分担作業で。」

言いたい事はわかるが、徹だけは役割分担が無いな?みそっかすか?

その徹が

「でもよー、ライブまであと2ヶ月なんだろ?曲作りながらとかって、間に合うのかよ?」

おいおい、役割分担の無いお前が言うか?

祥二がにこやかに

「みんなは多分大丈夫だよ!あとは徹君次第じゃないかな。」

無邪気な笑顔でちょっと酷い事を言う。

ただ正論なので、陽子と信吾そして俺も無言で頷く。

「・・・ああ、そうかい、そうかい。」

渋い顔をする徹をスルーして祥二が続ける。

「それと、高校の時は衣装もバラバラだったから、今回は統一したいよね。」

そう言えば高校の時のライブでは、俺が”Hard Rock Cafe”のジージャン、信吾が迷彩の上下、徹が龍を背負ったド派手なスカジャン、祥二が赤系統のチェックのネルシャツ、そして陽子が厚化粧、じゃなくて確かピンクのワンピだったか?

当然、当時は衣装を揃えるお金も無かったから、めいめいお気に入りの私服で見事なくらいバラバラだった。

徹が威勢良く

「おう!全員革ジャンに」

と言い出したのを、陽子が遮るように

「そうねー、もう私達も良い年した大人なんだし、色味合わせたスーツで良いんじゃない?」

祥二と信吾そして俺が無言で頷く。

「あーあーっ、俺の意見は即却下かよ?」

徹がつぶやくと、みんなで徹を見て無言で頷く。

「ひでえ!!いじめだ!!社会問題の縮図だ!!」

そして、ゲラゲラ笑う俺達4人。

「相変わらずバカよねえ?あんた達って。」

呆れる陽子。

何か高校時代から変化の無いと言うか、進歩の無い俺達。

俺達がガキの頃、40歳過ぎの大人ってもっとちゃんとした大人だったような気がするな。

俺の両親も、陽子の両親も、信吾の両親も、もっとおじちゃんおばちゃんだったはず。

時代がそうさせるのか、日本人全体が幼稚化してるのかなー?

まあ、でももっともっと時代を遡って武士がいた時代だと、高校生ぐらいの年齢で元服して大人の仲間入りしてたんだし、女子も嫁入りしてたのが当たり前だったんだよなー。

今だと30で結婚出来りゃ御の字みたいな御時世だもんな。

結論、時代のせいだ。俺達のせいじゃない。

「うん!これで再結成初ライブに向けての方針も、だいたい決まったね!」

いつになく祥二のテンションが高いな。

まあ祥二だけじゃ無く、俺達も結構アゲアゲなんだぜ?

そこに水を差すように徹が

「そうだ、純よー。お前さ、今度は本番であがって、やらかしてくれんなよ?」

と、からかう。

ああ、やめてくれ。思い出したくも無い。

そう、25年前の正真正銘の初ライブの時、ガッチガチに緊張して危うくライブを台無しにするところだった。

徹が俺の金玉を握った事で我に返り、事なきを得たが。

俺の黒歴史の一つだ。

「俺はもう純のチンチンなんか触りたくねえからな?陽子、頼むぜ?」

「えーっ!私がーっ?・・・まあ、良いわよ。・・・ずいぶん久し振りだけど。」

下を向いた俺と陽子以外が爆笑する。

25年という時の移り変わりは残酷だ。

当時、明るく活発だけど堅物で真面目な女子高生だった陽子が、下ネタを口にするようになるとはなー。

「よし!じゃあ純ちゃんはあがらない練習と、それと徹君はみんなの3倍くらい練習しないとね!」

祥二が無邪気に毒舌を吐いた!時の移り変わりは残酷だ!

すっかりテンションが下がった俺と徹が顔を見合わせる。

信吾が俺と徹の肩に手を置いて

「祥二の冗談だよ、ほれ、頑張って練習しようぜ。」

祥二も苦笑いしながら、

「ああ、ごめん。・・・その、機嫌直してよ。」

・・・良いんだ祥二、お前に悪気が無いのはわかってる。

・・・気にしちゃいないよ。

「・・・徹、・・・張り切って練習しようぜ。」

「・・・おお。」

貶された体の俺と徹がどちらとも無く力無く肩を組む。

そんな俺と徹を見た陽子が、パンパンと手を叩きながら

「ほらほら!あんた達!いつまでしょぼくれてんのよ?・・・ロックンロールタイムよ!」

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