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STAGE  作者: 今野 英樹
15/44

Reboot 2013

練習室に入って、早速祥二を加えてリニューアルしたThe Namelessの初めての音出し。

・・・と思いきや、祥二の

「とりあえず、ミーティングしようか。」

の第一声。

・・・あら、若干拍子抜け。

まあ、計画性も無しに音を出してグダった三馬鹿とは違いますな。

「もう3人で何回か練習はしてみたんだろ?どうだった?」

いたずらっぽく問う、嫌みは全く感じない。

俺と信吾は黙ってる、徹がその空気を読んで

「・・・まあ、俺がアレだ、そのなんつうか、じぇんじぇん忘れちまってるわ。」

「そっか。」

祥二がそれも想定内という表情でうなずく。

「でもよ!流石に祥二のおじさんにもらったギターは持って歩けねえから、アンプ内蔵ギター買ってよ、ちょっとの合間見つけちゃ練習してるんだぜ?」

徹がちょっと慌てて言い訳っぽくまくし立てる。

そんな徹を見て祥二がなだめるように

「うん、まあしょうがないよね。あの頃から25年も経ってるしね?普段仕事して忙しいと、意識しなきゃなかなか楽器触ろうなんて思わないだろうし。」

図星だよな、多分みんなそうだ。

「どうせやるんなら。・・・高校生の頃と違って凄く貴重な時間を割くわけだよね?なら目標を持ってやりたいなと。」

徹が驚いたように

「目標って?・・・まさか!メジャーデビューでもするつもりか?」

俺達に衝撃が走った。

・・・と、祥二が笑いながら

「まさか。・・・えっと、メジャーデビューって先に言われるとハードル上がっちゃって言いづらいけど、オリジナルをやりたいよね。あと、そうだね、そのうち単独ライブも。」

「ハハハ、わりいわりい。」

徹が笑いながら頭をかく。

「オリジナルは良いけど、どんな路線でやるつもりだ?」

俺がたずねると、苦笑いしながら

「そこまではまだ考えてないよ。ただね、作詞を純ちゃんにお願いしたいんだ。」

「えっ!?俺っ!?」

・・・なんちゅう、無茶ぶりだ。

「うん、やっぱり歌い手が作詞した方が感情移入って言うか、しっくりいくパターンが多いと思うんだ。」

そういったもんなのかねー?

ってか、冷静に分析すると俺にそんなスキルは無いと思われるんだが。

「どう考えても俺には無理だよ、それにこの年で愛だの恋だの恥ずかしくて書けるかよ?」

祥二が笑いながら

「ハハハ、そんな歌詞は望んじゃいないよ。俺達おじさんが恋愛云々なんて変だろ?おじさんのおじさんによるおじさんのためのロックをやりたいんだよ。」

それを聞いてた徹が

「ケッ!とか言いながら、お前は織美ちゃんとラブラブじゃねえか。恋愛云々が無えおっさんは俺と信吾だよなあ?・・・なあ、信吾!」

と、泣き真似をしながら言う。

・・・いや、若い奥さんをもらった祥二はともかく、タメ年のれっきとした中年夫婦の俺も、恋愛云々とは過ぎ去った過去とも思えるんだが?

とは思ったが、口には出さなかった。

無いとは思うが、誰かに聞かれて陽子にチクられでもしたら、きっと酷い目に遭わされる。

徹に急に振られた信吾が慌てて

「お、おう、・・・だな。」

と答える。

何だろう?バレバレの空々しい反応だ。

おい、そこのでかいの、まさか恋愛ってのをしちまってるのかい?


・・・まあ、それはさておき、今は俺自身の問題で手一杯だ。

「俺にそんな作詞なんて出来るのかなあ?」

「大丈夫だよ!って言うか、純ちゃんしか適任がいないって言うか。」

祥二がそう言いながら見回すと、徹と信吾が同時に

「あん?」

と眉間にしわを寄せる。

祥二が慌てる

「あ、いやいやゴメン。冗談冗談。」

徹が信吾と顔を見合わせながら

「全然冗談に聞こえなかったけどな?・・・まあいいや。」

ただ、普通作詞ってのは曲があって、そこに詞を乗せるのが定番のハズだが。

「じゃあ、曲は祥二が作って俺がそこに詞を乗っければ良いんだな?」

「うんまあ、普通はそうなんだけど、普通じゃつまんないから純ちゃんが先に歌詞作ってよ。それにみんなで音を付けていこうかと。」

はああ?なんちゅう無茶ぶりを、その屈託の無い笑顔でするんだ?

「それに今はさあ、こんな便利な物もあるしね。」

と、言ってスマホを取り出す。

「・・・スマホ?」

「そうそう、例えば純ちゃんが作ってくれた詞とか録音した鼻歌とかをデータとして送ってもらえれば、それに音を付けてやりとり出来るんだ。こんな便利な物を使わない手は無いよね?」

徹がニンマリしながら

「祥二、その便利な物を持ってない奴が、約一名いるんだぜー?」

「え?そうなの?・・・純ちゃんゴメン。」

「何で謝ってんだよ?俺が傷ついたみてえじゃねえか。」

・・・ちょっぴり傷ついたけどね。

「・・・パソコンでも出来るんだろ?まあ俺に出来るかどうかわかんないけど、やってみるよ。」

「うんうん、難しく考えないで、日頃思った事とか書いてもらえれば良いと思うよ。俺達の知ってるロックスターは、サラリーマンの経験なんてしてないから、変わった目線の歌詞が出来るかもね。」

・・・どんな歌詞になるやら?保証はせんぞ?

「まあ、オリジナルはさておき、とりあえず鈍った演奏力を上げてかないとね。さあ、練習練習!」


・・・作詞ねえ?

そんなん俺に出来んのかね?

とか言いながら、通勤の電車の中で詞の事を考えている俺がいた。

何気にノリノリだな俺。

・・・俺の日頃、思ってることか。

最近は愚痴とか不満とかばっかだけどなー。

・・・って、そんなんで良いのか?

せっかくだから、まずは俺らのバンドのテーマソングみたいな位置付けに出来る詞を書こうか。

そんなわけで、なんとなく思い付いた言葉なんかをメモしてみよう。

と、しばらくしてたまった言葉をそれらしくつなぎ合わせてみる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


プラットホームに佇む朝の憂鬱達

電車のドアが開き 行き交う人の群れ

鋭いまなざし 探すベスポジ 今日もまた見えない何かと戦いが始まる


苛立ち達を詰め込んで満員電車が走るよ

誰がどこに向かうかなんて そんなの気にしない

ただ誰もが 明日へ向かってるのさ 未来への不安を抱えながら


Woo Nameless Knights サラリーマン

Woo 眠れぬ Night そんな夜もあるさ

Woo Nameless Knights サラリーマン

Woo 眠れぬ Night 不安な朝が目覚める


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


こんなもんかな?とりあえずワンコーラス分。

続きはまたそのうちだな。

これを元に祥二が曲を作って、それから2番を書いても良いな。

とりあえず携帯で・・・は、超面倒くさいので、パソコンで入力して、祥二のスマホに曲調のイメージを添えてメール送信する。

しばらくして純から返事が返って来てた。

『純ちゃん面白いよ!ありがとう!(๑•̀ㅂ•́)و✧』

何だ、その無駄に可愛い顔文字は。

・・・女子か!

って、こんな詞がまともな曲に仕上がるんだろうか?

一抹の不安はあるな。・・・かなり。

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