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STAGE  作者: 今野 英樹
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Ruby Tuesday 2013

美空からもらった名刺の住所は、STUDIO AIRから10分ほど歩いた場所だった。

ルビー・チューズデイ。

こぢんまりとした喫茶店のような佇まい。

「おっ!ここだ。入ってみようぜ。」

カランコロン♪

ドアベルが鳴り響く。

「いらっしゃいま・・・あら?」

美空が俺達の顔を見て驚く。

まだ早いからか、他に客はいないようだ。

「よう、来てみたぜ。」

「まあ、3馬鹿揃い踏みね?いらっしゃい。」

「おいおい、この店は客を馬鹿呼ばわりするらしいぜ?余所に行こうか?」

と、徹と信吾を振り返り俺が茶化すと、美空が負けじと

「あら、高校時代の親友に、元カレがストーカーみたいに冷やかしに来たって電話しようかしら?」

ドキッ!!

「・・・さあ信吾君、徹君座ろうか。とりあえずビールをいただこう!」

徹もキョロキョロと店内を見回し

「落ち着いた感じの良い店だな。美空、いつからこの店やってんだ?」

「3年前からよ、・・・以前勤めてたホテルのレストランで、妻子持ちのシェフに言い寄られて、居づらくなって辞めてこのお店出したのよ。」

「お前、そんなヘビーなエピソードをあっさりと。」

信吾が苦笑いする。

「それより腹減ったー。すぐ喰えるもん出してくれー。」

徹がそんな話には興味無さそうに急かす。

「待って、今おつまみ出すから。あとパスタなら10分ぐらいで出せるけど、それで良い?」

「おー、頼むわー。」

「嫌いな食材とか、食べられない物とかってある?」

「特に無いよな?」

「俺も。」

「同じく。」

3人が答える、徹が思い出したように

「あ、でも純がダイエット中だから、カロリー控えめで頼むわ。」

・・・痛い所を。

しかし、何も言い返せず恨めしそうな顔をすると、美空が笑いながら

「わかったわ!・・・純君は具無しと。それともパスタ無しが良いかしら?」

「それ、もうパスタじゃねえじゃん。」

俺がふくれっ面をすると

「冗談よ冗談。」

美空が笑いながら厨房へ消えてく。

徹が俺の肩をポンッと叩いて

「純は、アレだな。女に弄ばれるタイプだな。」

とか言うが、未婚のお前にはあんまり言われたくないのだよ。

と、美空が厨房から3杯のビールと野菜スティックを持って戻ってくる。

「ところでギターなんか持ってどうしたの?」

徹が答える。

「おー、またバンド始めようぜって話になって今日が初練習よ。」

「ふーん、バンドねえ?それなら針須君と陽子は?」

「祥二は店が切羽詰まってて、それどこじゃねえって。陽子は主婦は遊んでる暇無いってさ。」

俺が答えると美空は笑いながら

「陽子らしいわねー。今パスタ作ってくるからゆっくりしていって。」

と、言い残しまた厨房へ下がって行った。


信吾が重い口を開いて徹に

「ところで、徹よ。」

「あん?」

「祥二は確かにバンドに加わりてえかも知らねえ。」

「ああ、それは確かだ。俺が保証するぜ。」

ちょっと間を置いて信吾が

「・・・まあそうなんだろうけど、俺らが行ったところで、祥二が抱えてる問題ってのは解決するんか?」

「店の事か?・・・まあ、しねえだろうな。」

「そこはわかってんだな?」

「ったりめえだろ。何が言いてえ?」

ちょっと徹がいらつき気味にたずねる、信吾は語気を替えずに続ける。

「わかんねえかな?祥二は元々音楽が大好きだし、底抜けに優し過ぎる奴だ。」

「おう。」

「でよ、俺らが行く事で断り切れなくて、無理矢理引っ張り込む羽目にならんかと。」

そう言われて徹も神妙な顔つきで

「ああ、確かにな。」

「それで、あいつの生活に悪影響を及ぼすようだったら本末転倒だよな。」

「そうだな。・・・まあ難しく考えねえで、祥二の顔見に行くつもりで行こうぜ。な?」

そうだよな、俺のマンネリ生活の不満から再開したバンド活動が、誰かを不幸にしちゃいけないよな。

そんなこんなしてるうちに、美空がパスタの皿を載せたトレーを持ってくる。

「お待たせー。」

キャベツとシメジのパスタのようだ。

柔らかそうな湯気と、ニンニクの美味そうな香りが漂う。

「美味そうだな。いっただきー。」

よっぽど腹が減ってたのか、信吾が早速パクつく。

「おーっ!こりゃ美味え!プロの味みてえだ!」

「・・・須田君、一応プロなんですけどね?」

美空がわざと泣きそうな表情を作って見せる、信吾が慌てて

「あ、そうだよな。すまんすまん。」

徹も口にパスタを運びながら

「俺は純と違ってダイエットメニューじゃなくても良かったんだけどな?・・・おっ!マジで美味えな。」

「ふふっ、ありがとう!今後ともごひいきに!」

美空がトレーを両の手で抱えて嬉しそうに微笑む。

昔から美空は、仕草とか所作がかわいいんだよな。

そしてそんな美空を絶対崩さない。

感情の起伏が激しい、どこかの陽子さんとは大違いだ。

ただそれだけ、陽子は正直者で、美空は演技派って事なのかも知れないな。

その仮面の下に秘めたる本性は?・・・なんちゃって、どうでも良いか。

「うん、でも確かに美味いよ。練習の後の楽しみが増えたな。美空の客いじりが酷いけど。」

俺が笑いながら皮肉混じりで褒めると、美空は無邪気な笑顔で

「ちゃんと他の縁もゆかりも無いお客様は、普通のお客様として接してるわよ。貴方達はお友達だから、特別扱いよ!嬉しいでしょ?」

徹がすかさず

「じゃあ、料金もお友達価格で頼むぜ?」

4人はお互い顔を見合わせて笑う。

今日はバンドの練習はままならなかったが、懐かしのスタジオと良い店に巡り会えたのは大収穫だったな。

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