「旅立ちと約束」
「僕たちの宇宙船だ」
「う、宇宙船…」
「とりあえず僕に付いてきてくれるかな」
「わかりました」
部屋を出るとエレベーターに乗り地下へ向かった。
改めて見ると本当に大きな研究所だ。
チン。エレベーターが止まった。
「な、なんだこれは…」
「フフッ驚いたかい?雷二君。これが僕たちが乗る宇宙船ペガサスホーンさ」
ペガサスホーンと言われた宇宙船は装甲がとても厚くペガサスホーンなどと言うよりかは普通の宇宙船と言った感じだった。
「これでペガサスホーンですか…」
「そう言うと思ったよ。ペガサスホーンと言うのは、ただの名前というわけではなくこの船の特徴を表しているんだ」
「特徴ですか」
「ペガサスホーンは今はただの宇宙船だが、これに乗って移動するということは自然にこの船が狙われると言うことにもなる。そこで外の装甲はダメージを吸収するように作られている。ダメージをため続ければ自然と船は墜落する。だから、ダメージを受けた装甲をその場で取り外事が可能となっている。装甲を取るたびに速度や姿が変わる。そして最終的にペガサスとなるんだ」
「なるほど。そういう事だったんですね」
「それはそうと次はトレーニングメニューを言うよ」
「あ、はい」
「まずは体力トレーニングだ」
そう言って広い場所に連れて来られた。
「すみません達也さん。機体の操縦に体力なんて必要なんですか?」
「そうだね。まずはここで攻撃の型となる動きを覚えてもらうんだ。体力と言うより動きの訓練だと思ってくれ」
「なるほど。わかりました」
「君の武器は剣だから最低剣道は覚えてもらうよ」
「はい。で誰が教えてくれるんですか?」
「安心してくれ僕は柔道も剣道も師範代クラスの階級を持っている」
「!!!」
思わず言葉を失った。この人は本当に完璧な人だと思った。これで科学者だって言うんだからまさにチート人間だ。
「次はシュミレーター室に案内するよ」
「は、はい」
また長い道のりをとうりシュミレーター室についた。
「ここでは、君が前までやっていたことと同じことをするだけだ」
「わかりました」
「1日ずっとこのメニューをやり続ければ確実に強くなる」
達也さんの言葉なぜか説得力があった。
「これから宇宙に旅立つまでこの研究所で泊まったほうがいい。わざわざ家まで帰っている時間が無駄になるからね」
「わかりました」
「じゃあ今日は家族に別れを告げてきてくれ。しばらく会うことはできないからね。明日からは本格的に訓練を始めるよ」
そして俺は家に帰った。
「ただいま母さん」
「どこに言っていたの?遅かったじゃない」
「母さん俺さ、ディメティスを探しに行こうと思うんだ」
「はぁ?何言ってるの。バカなこと言ってないでさっさとご飯食べなさい」
「母さん俺本気なんだ」
カシャん。カシャん。夕食を作っている母の菜箸が落ちた音だった。
「なんで?なんであなたなのよ」
「俺がディメティスに選ばれたから」
「あの人を失ったばかりなのにあなたまでいなくなると私どうすればいいの?」
「ごめん母さん」
「行かないで。行かないでよ」
母さんはそう言って泣き始めた。こんな母さんは見たことがなかった。俺はただ「ごめん」ということしかできなかった。
「母さんでも俺生きて帰るから」
泣いている母さんを無視して部屋に戻った。
「こんな別れ方かよ。いつも俺はろくな別れ方しねーな」
そう言って父さんの顔を思い出す。
「もう寝るか」
次の日の朝俺は黙って家を出ようとした。
「待って雷二」
聞き間違えるはずもない母の声だった。
「なに?母さん」
「昨日はごめんね。あなたが行きたいならそうしなさい。だけどねこれだけは言わせて。必ず生きて帰ってきて」
母の言葉は暖かかった。
「約束するよ母さん」
あの時とは違う。晴れ晴れとした旅立ちだった。
あれから二週間がたちいよいよ出発の日となった。
「雷二君そろそろ行くよ」
「はい」
カウントダウン開始。
3
窓をなんとなく見た。
2
そこには泣いている母さんが見えた。
1
発射
ドカーンとペガサスホーンが打ち上げられた。
約束は絶対守るよ母さん。
執筆:助手