「戦う意志」
あれから、暫くの時が過ぎた。その間俺は、ただひたすらボーッとして過ごしていた。何をする気力も起きなかった。
今日は、父の葬儀だった。そしてそれが終わると、片付けもせず自分の部屋に戻った。
「本当に……本当に死んじまったのか親父」
父の写真の前で呟いた。
あの日、俺はディメティス・ダークネスを撃退する事に成功した。しかし、あの勝利は偶然によるものだし、父の敵をきちんと討つことだって出来なかった。
そしてもし、ダークネス達の軍勢が再び攻めてきても、勝てる保障はない。
「これから俺は、どうすればいいんだ。教えてくれよ親父」
答えが返ってくるはずのない写真に、何度も問いかける。
今思えば、親父は俺の道しるべだった。すぅー、と涙が零れてくる。
何もない。ディメティスの事も知らない。俺の心には、消失感だけがあった。
「もっと、物分かりが良かったら……! もっと、力があれば……!」
その時、ギーとドアが静かに開く音がした。
「親父!?」
振り返ってみると、そこに居たのは親父の助手である達也さんだった。
「……達也さん、久しぶりですね」
「雷二君、今から少し話さないか」
「今は、ちょっと」
「二三分でいいんだ。なんとか話せないか?」
あまりにも必死な様子だったのでつい、
「わかりました」
と言ってしまった。誰かと話したい気分ではなかったのに。
「仏間に行こう。博士にも、もう一度だけ挨拶しておきたい」
仏間に行くと、達也さんは父さんの写真の前で頭を下げた。その時、達也さんの目に涙が見えたのは、多分気のせいじゃない。
父さんの死を、何人も悲しんでいるんだ。
「雷二君、僕は、博士から本当にたくさんのことを教えてもらった。僕がもっとしっかりしていれば、博士は助かったかもしれない。そう思うと、僕は自分の無力さに腹が立つ」
そうか、この人は俺と同じ気持ちなんだ。
「博士はもういない。でも、まだ何も終わっていないんだ。ダークネスが居る限り、何度でも争いが起こる」
「……俺にまた戦えっていうんですか? でも、もう前のようにはいかないですよ」
「君は、そこで諦めるのか」
達也さんの言葉が、胸にグサッと刺さった。俺は、ただ諦めようとしていただけなのだろうか?
「僕は、ここで諦める気なんて無い。僕には大切な妻と息子が居る。地球のためだ何て言わないさ。妻と息子を守るためなら、なんだってする」
「でも達也さんは戦えないじゃないですか。第一、同じディメティスでも倒せなかったのに、どうやって……」
「方法なら、ある。でも、君の力も必要なんだ」
「俺の、力が…」
「もし君に戦う意志があるなら、明日ここに来てくれ」
そういうと達也さんは、地図が書いてある紙を俺に渡して、出ていった。
「戦う意志、か」
地図に書かれた場所に行けば強くなれる、ダークネスを倒せるっていうのなら。
「そんなの、無いわけないだろ……!」
俺は行く。俺にだって守りたいものはある。母さん、生き延びた学校の友達。強くなって、みんなを守る。
第四話「戦う意志」終了 執筆:藻世