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巨人戦機ディメティス  作者: 共通点
邂逅編
2/18

「父の敵」

第2章「父の(かたき)


揺れは一瞬の内に激しくなり、床が崩壊した。その場に居た全員が、奈落の底へと落下し始める。

「な、何!?」

しかし俺と母さんは、金属の大きな掌によって受け止められた。

奴が動いたのだ。

「認証、完了……」

その声がするとともに、コクピットと思われる部分が開いた。迷わず乗り込む。コクピット内は球状に拡がっており、360°全てモニターになっていた。

「…………」

さっきの機械的な音声を少し待ってみたが、何も喋ってこなかった。どうやら、既に操縦できるようだ。各操縦機器は、父にやらされたシミュレーターの物とよく似ていた。このための訓練やデータ採取だったのだろう。

覚悟を決めてレバーを握った。まず、右手を動かしてみる。

ーー野性の獣が唸るような音。 問題なく動いた。

「よし……いける!」

ここは恐らく地下なので、上昇すれば地上に出るはずだ。ディメティスの両手を振り上げ、ブースターを入れた。天井を突き破ると空洞が続いている。今居た部屋(というより空間)は地下深くにあり、家からも離れているらしい。

暫くして、勢いよく地上に出た。そのまま少し上昇する。俺の町は、見るも無惨に廃墟と化していた。学校の友達や、隣人の顔が脳裏に一瞬浮かんで、泣きたくなった。しかし、眼を背けてなどいられない。視界には、町を壊したロボットや円盤も同時に写っている。そいつらを見るんだ。

「未確認の人型兵器を二体、同じく未確認の巨大円盤を一体確認。距離、それぞれ30 35 70」

先ほどの音声は、いわゆるナビゲーションのようなものらしい。

「言われなくても分かってる……そいつらは敵だ!」

「識別信号を赤に変更。ロックします」

敵もこちらに気づいているだろう。迷っている暇はない。

「まずは、ビームライフルを……」

その時、激しい銃声と共に、衝撃が走った。敵の攻撃は既に始まっていたのだ。

「こ、この野郎!」

膝部から射出されたビームライフルを構え、一番近くに居る銀色の機体に向けて撃った。が、光線は空を貫くばかりだった。

「くそ! 当たれ! 当たれよ!」

焦って標準が定まらず、敵に接近を許してしまった。サーベルを構えている。

マズい、と思った時、既に左腕にビームサーベルは直撃していた。

「左腕……シールド!?」

ビームサーベルが実際に削ったのは、左腕に取り付けられているシールドのようなものだった。本体にダメージは無い。

「こっちの番だ!」

サーベルを両手で握り、渾身の横薙ぎを放った。銀色の機体が2つに分断され、爆発。まず、町の敵を一人討った。

「お前らが、お前らがこの町を!」

もう一体の銀色にブースターで一気に近づき、胸部に素早く突きを入れる。ディメティスは何回か被弾していたが、そんなものの衝撃は、興奮のおかげかさして気にならなかった。

擦れるような機械音とともに再び爆発が起きて、機体の中まで焦げ臭い気がした。

「後は、あの円盤……ん?」

何かが、円盤から降りて来ようとしている。

「上空より、同タイプの機体が一機降下してきます」

「同タイプだって!?」

「データ照合……『ダークネス』です」

「何だよ、それ……」

ディメティスは一機だけじゃなかった……そもそも俺は、ディメティスが発掘兵器で、とんでもない力を持ってることしか知らない。こいつらだってディメティスを持ってるなら、わざわざこいつを欲しがる理由はなんなんだ?

「……何だっていい。全部倒せば終わる話だ」

考えることを放棄して、目の前の敵に集中する。降り立った機体は、確かにこの機体と形状が酷似していた。だが配色は全く違い、全身が黒光りしていた。まさに、ダークネス、といったところだろうか。

「誰が相手だって、関係あるものか!」

加速して、懐へ一気に近づく。それは容易に成功し、攻撃へ意識を移した。

「一撃でおわらせる!」

が、俺の残撃は、同じサーベルによる斬撃によって払われた。怯まずもう一撃仕掛けたが、それも捌かれてしまう。

「つ、強い……」

「フハハハ、どうした、その程度か?」

「!? 通信機能か?」

「今度はこっちから行くぞ!」

その瞬間、目にも留まらぬ速さの斬撃が俺を襲った。成す術なく、ディメティスはダメージを受ける。

「な、なんて速さだ……!」

反撃に出たいが、ダークネスが速すぎて、狙いを付けられない。

「ふん……どうやらライジングの性能は、このダークネスに劣っているらしい。いや、操縦者の腕が悪いだけか?」

「黙れ!」

ライジング。それがこのディメティスの型番のようなものらしい。それが分かっても、ダークネスに挑発されても、俺は防御に集中するしかなかった。少しでも集中を切らせば、殺される。それでは意志を果たせない。

しかし結局、守ってばかりではジリ貧になるだけだ。

「何か手はないのか……?」

あった。まだ使ったことの無い武器。シミュレーターに搭載されていたが、父に使用できないように設定されていた物。それが何かは分からないが、現状を打破出来る可能性があるとすれば、恐らくそれのみ。

「一か八かだ……」

上空に飛び上がり、その武器を取り出す。出てきたのは、稲妻の形をしたビームサーベルだった。

「普通の奴と、何が違うってんだ?」

考えている暇はない。同じく上昇してきたダークネスに、斬撃を仕掛ける。ダークネスは、先と同じくサーベルで受けようとしており、俺は弾かれることを覚悟していた。

「!?」

だが弾かれたのは、ダークネスのサーベルだった。この稲妻のサーベルは、基本的なパワーが通常の物より上らしい。

「ライジング特有の武器か」

「特有の武器……どういう事だ?」

「ふん。知らないのならばそれでいい。貴様は、今日初めて操縦した機体で、私のサーベルを弾いた。その才能を、私の所で活かさないか? それならば、死んだ貴様の父も報われるだろう」

「父さんが、死んだ……」

薄々理解していた事だった。また生きて会えるなんて、そんな都合のいい話がある訳ない。だが、信じていたんだ。父さんとまた会って、仲直りできれば……。涙が止まらなかった。

「まだ知らなかったか。無駄な抵抗を続けるから、私が直接頭を撃ち抜いてやったよ」

「あ……あ、お前が……父さんを……」

いくら嫌っていたって、父は父なのだ。そしてその死は、あまりにも重い。

「そう恨むな。私が王になるための尊い犠牲だ」

悲しみが、怒りに変わっていくのをひしひしと感じた。心の底から、普通の人間が感じることはないだろう不思議な感情と力が込み上げてくる。

「お前は……俺が殺す!」


第2章終了 執筆:藻世

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